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第39話 クド







 僕にとっては神眼があるから死なないだろうということは分かっていた。

 緩和スキルは有名で比較的効果の強いスキルだ。

 それなら多少の距離から湖に落ちた程度では怪我はしないだろうというのが僕の考えだ。 

 強化魔法もあるからまず間違いなく無事なはずだ。

 だけどそれを知らないエルフの人たちからすれば僕が相手へのダメージにまったく構わずに投げ飛ばしたと思うはず。

 だからこそ十分な牽制になった。

 そして、緩和スキルを持っていることを知っているだろう人たちからしたらあのエルフが無事だということも分かっているはずだ。

 だからこそもう相手は攻撃を加えることができない。

 本当に被害が出てしまう―――そう考えるのは思考の流れとして自然だからだ。


「伏兵はいますか?」


 あとの懸念は遠くから狙ってくる魔法使い、弓兵の類だ。

 さすがに見えない距離からの攻撃は躱せない。


「答えると思ってい」


「4人いる!」


 高齢なエルフさんの言葉を遮って一人が答える。

 周囲は「え?」って、顔をする。


「ば、馬鹿者!? なぜ答えた!」


「どこにいますか?」


「あそこに3人! お前たちの後ろに1人だ!」


 まあ魅了の力があるから嘘ではないだろう。

 念のため神眼スキルで確認したけど間違いなかった。


「姫木さん後ろの警戒任せていい?」


「……任されました」


 ここまで分かればもう負ける要素はほとんどない。

 あとはこの一番偉そうなエルフの人を魅了で……


「そこまでよ!」


 びくり!? と、エルフの人たちが竦み上がる。

 僕たちもそちらへ目を向けた。

 そこにいたのは若い一人のエルフ。

 銀色の髪がさらさらと風に揺れる。

 気の強そうな瞳でこちらを射抜きながら「ふん!」と、鼻を鳴らした。


「く、クド様……!? なぜこんなところに、アルテナ様には」


「ああもう! うるさいうるさい! いいからここは私に任せなさい!」


 一応鑑定。

 かなり若い見た目だけど実年齢はいくつなんだろう?

 まあ、それもあるけど何よりステータスだ。

 厄介なスキルでも持っていたら面倒だ。

 僕は神眼でクドと呼ばれたエルフの少女を鑑定した。



 ――――――



 ―――――――~~~~~


 726~~~――――


 Lv―――――~~~~


 生――――

 

 ~~~~~―――――


 ――――………


 魔―――――0


 ~~~~~~~~~


 ―――――――――――


 スキル ―――――――~~~~――――――~~~―――――


 加護 世界樹の加護



―――――――




「………」


 なんか……デジャヴなんだけど。

 え、それよりちょっと待って待って。

 年齢のところ726ってない?

 いや、半分くらい見えないからそれ以上ってことも考えられるよね?

 最低でも726歳。もしくはそれ以上?

 凄い高齢だね……

 あとは世界樹の加護……これに関しては……なんだろう?

 聞いたことないけど。


「あなた達!」


 そんなことを考えていると向こうでの話はある程度まとまったらしい。

 クド……さんがにんまり笑顔でこちらに声をかけてくる。

 

「たぶんだけどあなた達冒険者よね?」


「あ――――っぷ!?」


 秋山さんが何か言おうとしたので咄嗟に魅了で止めた。

 なんとなく一緒にいる時間が多かったせいで否定する様な気がしたのだ。

 秋山さんは何か言おうとしてるけど深層心理への命令で言葉は出ない。


「?」


 クドさんたちが不思議そうにこちらを見てくる。

 僕はその間、必死に考える。

 ここは身分を偽った方が都合がいいだろう。

 他種族に排他的な種族である彼女たちが勇者に友好的である保証はない。

 そして、彼女は自ら僕たちに「冒険者か?」と聞いてきた。

 つまりそれは冒険者がクドさんたちにとって不利益にならない人種だということを表しているから。

 敵対行動を取るべき人たちに対して無警戒にそんな聞き方はしないだろう。

 少なくとも悪感情はないはずだ。

 神眼で見ても分かる。

 今のところその言葉に揺らぎが見えないことからブラフの類ではないと思っていいはずだ。


「そうですね、森の奥でずっと修行してて冒険者になったのはつい最近のひよっこですが」


 今のうちに冒険者としておかしい行動を取った時の言い訳をしておく。

 一応常識くらいは知ってるけどあくまで簡単なものだからだ。

 あのエルフを投げ飛ばしせたことに関しては……秋山さんの強化魔法もあるからそこまで違和感は……いや、どうだろう。

 ちょっと強い人ってことで納得してもらえると助かるんだけど。


「冒険者なんだ……お兄さんたちが冒険者で丁度良かったよ。でもその前に色々聞きたいことがあるんだけど……いいかな? あ、武器は勿論下ろさせるよ」


「その後も敵対行動をとらないことを約束してもらえるなら」


「んー……そこに関しては答えられないかな。だってあなた達がここに来た目的が分からないし」


 それは……確かにその通りだろう。

 

「ガリウスさんという人に教えてもらいました」


 ガリウスさんはエルフだ。

 少なくとも人族に教えてもらったと言うよりかは印象は良いはずだ。

 何より事実だし。

 と、思っていたのだが……


「ガリウス……!?」


 エルフの人たちは急に騒めき始めた。

 僕が内心で不安になっているとクドさんは先ほどとは一転して敵意丸出しのような顔で聞いてくる。


「それで、何が目的なの?」


 あの……武器下ろしてませんけど。

 周りの人たちも……クドさんも。

 どうやら何か間違えたらしい。






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