表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/43

第25話 魔槍





 数多くの魔物をセラさんが切り倒しながら進んで行く。

 僕も倒してレベル上げたかったけど自重した。

 今は少しでも急ぐべきだ。

 セラさんと僕とリリアは最短ルートで城内を駆ける。

 玉座の間の扉をセラさんが勢いよく開くと、そこに広がっていたのは、無数のゴブリン、オーク、狼のような魔物たちの死体。

 これだけでこの場所で起こった戦闘の激しさが分かる。

 血で染め上げられ、荘厳さを失った玉座の間にいるのは僕たちを除いて5人。


「これはこれは……あなたは確か……セラ・グリフィス騎士団長ですね? それに最後の勇者の佐山悠斗さん」


 玉座の間にいたのは意識のない王様。

 そして、皆を庇う様に前に出ている姫木さん……その後ろには傷だらけで倒れている秋山さんと栗田さんが。

 全員の視線がこちらへ向けられる。

 仲間の視線、それに見たことのない男のねっとりした目。


「佐山さん……」


 僕の名前を呼ぶと同時に姫木さんが意識を失う。

 緊張の糸が切れたんだろう。

 だけど、呼吸に合わせて肩が動いてるからまだ生きてる。

 そのことに僕は安堵した。

 僕たちが入ってくると魔族の男が礼儀正しく一礼をした。


「私の名前はカルラ。魔王軍の幹部候補です」


 スーツによく似た服装をしている。

 この世界の文明基準を考えたら相当いい生地なんだと思う。

 背中に背負った巨大な槍がそのスーツには不釣り合いな威圧感を与えてきていた。

 一見すると人間に見える。

 だけど耳が人ではありえないほど尖っている。

 そして、何よりも……その醜悪な笑みが本能的嫌悪を呼び起こす。

 肩の上にはなぜか西洋人形がケタケタと笑みを浮かべていた。

 何あの人形……怖くない?

 僕は油断なくカルラと名乗った男を神眼で鑑定した。


 

――――――――




 カルラ(魔人族)


 215歳。

 

 Lv36


 生――0


 へhrrへえyq


 ―御―fgeあ


 geargaer


 hahdhhetjrqa


 ggr――


 スキル 伝心hrj――hs操―geare射――――




――――――――




 なんだ? なんで文字化けしてるんだ?

 こんなこと初めてだ。


「鑑定スキルですか」


 突如投げかけられた言葉。

 咄嗟に動揺を隠すので精いっぱいだった。

 なんで、という僕の疑問の感情を読み取った魔族がまたも笑みを浮かべる。


「スキルを感知する力を持っております、それとスキルを反射する力もね……しかし、感知は成功しましたが、ここまでのレベル差で反射が失敗するとは……上位の鑑定スキルですかね?」


「答える必要あります?」


「おやおや、手厳し―――ッ!?」


 一瞬でセラさんがカルラに肉薄していた。

 間に合わないタイミングに思える。

 だけど、魔族の周りで耳障りな金属音と共に火花が散った。

 

(……あれを防いだのか)


 見えなかったわけじゃない。

 だけどたぶん僕だったら間に合わなかった。

 つまり、この男は僕より格上ということだ。


「悪鬼の守護神……セラ・グリフィス。レベルは56、スキルは調理、予言、剣姫、速力、復讐者、ですよね?」


「………」


 ブラフだった……って、わけじゃないんだろう。

 無数のスキルの中から偶然当てれるわけがない。


「べらべら喋るやつだな」


「ああ、失敬しました、お喋り好きなのでね、私の言葉で絶望する人間が大好きなんですよ」


「なら、そのついでに教えてもらおうか……なぜ知っている?」


 魔族の男はにたりと笑う。

 しかし、何も言わない。

 焦れた様にセラさんが再び魔族へと攻撃を加えるがまた防がれてしまう。

 短剣が……浮いてる?

 サイコキネシスのような力を持っているんだろう。

 魔族の男の周囲に短剣が重力を無視する動きを見せながら浮かんでいた。


「この槍に貫かれて頂けるならお答えしますが?」


「………グングニルか」


「その通り、一つの命につき日に一度……生命を削ることを代償とするスキルを有した意思を持つ魔槍です。ああ、奪ってもあなた達には使えないので悪しからず」


 グングニル……神話に出てくる狙ったものを必ず貫くと言われているあれか。

 名前からしてロクでもない能力なんだろう。

 というか武器がスキルを持ってるって……ありなのか。


「いくら悪鬼の守護神といえども防げません。放てば百発百中。狙ったものを必ず貫く必殺の槍です」


 それは……ちょっと反則なんじゃないの?

 チート武器だよもうそれ。

 だけど、セラさんは気負った様子もなくいつものようにそこに佇んでいた。

 鎧で顔は見えないけど……その姿はあの男の言う様に守護神の名に恥じない姿だった。

 しかし―――


「佐山悠斗」


 そこで突然名前を呼ばれる。

 いきなりだったのでびっくりした。

 僕がセラさんを見ると彼女が言ってくる。


「あれは私には防げない」


「え゛!?」


 体が強張る。

 え、無理なの?


「お前に予言した死の未来……確定ではないと言ったがそれでも外れたことは少ない、よほどありえない行動をとらない限り8割方は当たる」


「いや、分かりました! 分かりましたから前! 前見て下さい!」


 こんな時に何の話をしてるんだ。

 それともこれはどうしようもない事態だって暗に言っているのだろうか。

 魔族カルラは笑みを深めた。

 文字通り悪魔のようなその表情。


「さて、あなたとのお喋りはここまでにしておきましょう……メインディッシュも残っていますからね」


 その言葉の意味に疑問を感じる間もなくカルラはグングニルを構えた。

 え、というか、え!?

 どうするのこれ!?


「いきますよ」


 まるで僕の恐怖心を味わうかのようにゆっくりと、緩慢な動きで槍を持つ腕を振り上げた。




 ッッッ!!!!!!!!!!

 



 暗闇で蝋燭を灯したような、そんな一瞬の淡い光が視界に広がった。

 すると気付けばセラさんがその場から消えていた。

 いや―――

 

「セラさんッ!!」

 

 彼女は部屋の隅まで吹き飛ばされていた。

 槍がからん……っ、と音を立てて転がる。


「なるほど、さすが守護神……といったところですかね」


 セラさんの鎧は大きく欠損していた。

 

「確かに、百発百中なのは間違いありません、だからあなたは―――当たってから軌道を変えたんですね」


 僕はセラさんが生きている安堵よりも身の危険を感じていた。

 本能的な危機を察知するアラームが体内でけたたましく鳴り響いている。

 

「くくく、そんなことができるのはあなたくらいのものでしょう……しかし、無傷では済まなかったようですね」


 さぁて、と男がこちらを見る。

 僕はリリアを庇う様に背に隠す。

 それを見て悪魔が僕に微笑みを浮かべた。


「さてさて、あなたはどんな表情を見せてくれるのでしょうか? 楽しみですよ」


「………」


「悠斗様……」


 リリアが不安そうに僕を呼ぶ。

 僕は精一杯の虚勢と共に笑いかけた。


「大丈夫だよ」


 だけど、どうすればいいかは分からない。

 正直リリアの時以上にピンチだと思う。

 それを見てカルラの笑みがさらに深くなる。

 口元が裂けるのではないかと思うほど皺が集まり本当に悪魔のような顔になっていた。


「その淫魔……随分あなたに懐いているようですね」


「……そうですね。それが?」


「いくつか質問宜しいでしょうか?」


 僕はその言葉の意味が分からなかった。

 だけど、少しでも時間稼ぎになるならと頷く。

 手がなくても時間の経過はこちらに有利に働くはずだから。


「まずは……佐山悠斗さん、淫魔が人族に恋をするなんておぞましいと思いませんか?」


「……思いませんよ。リリアのことを知った風に言わないでほしいんですけど?」


 ふむふむ……と、深く頷く。


「軽い女ですね」

 

 リリアが後ろで動揺した気配が伝わってくる。

 僕はついカッとなって声を荒げた。


「あなたにリリアの何が分かるんですか?」


「分かりますよ」


「?」


 その問いの答え。

 魔族の男の続く言葉は僕の理解を完全に超えたものだった。


「だって、その女の感情は私が操ったものなんですからね」


「……………は?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ