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第13話 問い詰め








「で……どういうことですか?」


 姫木さんが物凄い険のある顔で問いただしてくる。

 いつもは優しそうな秋山さんと栗田さんもじっとりした目線を向けてきていた。

 だから僕はそんな彼女たちに向かって打ち明けた。


「ナンパしたら成功した」


「なるほど、それが最期の言葉でいいですね?」


 姫木さんが刀を抜いた。

 

「あの、どこから持ってきたのそれ……?」


「偶然これを持っているところで召喚されたので、まさかこんなに早く使うことになるとは思ってませんでしたけど」


「城内で抜刀はマズいんじゃない?」


 しかし、それはさすがに冗談だったみたいで姫木さんは刀を納めた。

 舌打ちしながらだったけど。

 そのまま尋問は続けられる。


「あなたは……今がどういう時か分かってるんですか?」


 うーん、こればっかりはどう言い訳しても僕が悪いよね。

 というか面倒ごとを呼ばないためにスキルを隠したのに、それが面倒ごとになってる。

 もう言っちゃった方がいいのかな。

 しかし、その時隣から援護が来た。


「待ってください! 悠斗様を責めないであげてください!」


 リリアだった。

 ありがたいことに味方をしてくれるらしい。

 まあ、立場的にしてくれないと困るんだけどさ。


「あなた……確かリリアさんと言いましたね。こんな男が相手で良かったんですか?」


「はい……私、優しくされたの生まれて初めてなんです……悠斗様のその在り方に私は心を打たれたんです!」


「だからって、何もわざわざこんな猿を選ばなくても……」


 猿はひどくない?

 小声でこっそり反論する。

 誰も聞いてなかった……うん、孤立感がもうね。


「自分でも安っぽい女だなって思いました」


 あはは……と、リリアが笑う。


「でもそれで良かったと思いました……生きる意味を初めて自分で見つけることが出来た気がしたんです……」 


 その顔はどこか幸せそうで……不覚にもドキッとした。

 姫木さんは何も言わない。

 秋山さんは相変わらずジト目で、栗田さんはむー、と頬っぺたを膨らませていた。


「佐山先輩……正直言いたいことは山ほどあります」


 そんな不満顔のまま栗田さんが言ってくる。

 栗田さんが真剣だったので僕も思わず背筋を正す。


「あ、うん」


「ですが、その子の顔を見る限りでは無理矢理というわけではないみたいですし……だから、その……二人とも……し、幸せにならないと許しませんからっ!」


 うん……まあ、うん。

 僕としては曖昧に頷くことしかできない。 

 先を越されて悔しいからか、栗田さんは今にも泣き出しそうな顔をしている。

 栗田さんまだ若いし……っていうかほぼ同い歳だし可愛いからすぐ彼氏くらい見つかる気がするけどね。

 僕は彼女のことを知らなかったけど、彼女は僕を知っていた。

 そんな可愛い後輩の将来を僕は応援したい。

 だけど泣き顔で祝福されても複雑なんだけど……

 秋山さんのほうは呆れたようにため息を吐いてから言った。


「……ラノベの主人公みたいな人ですね、佐山さんって」


「そうかな?」


「そ、そうですよ……スキル三つも持ってますし」


 まあ実際はもっとあるんだけどね。

 とか考えて密かに秋山さんの言葉を嬉しく思っているとリリアが顔を近づけてきた。

 いきなりだったのでちょっとドキリとする。

 だけどその言葉は僕の考えていたものよりは甘酸っぱいものではなかったらしい。


(悠斗様、魔族から通信が来ました)


(なんて?)


(魔族であることが露見した場合は自害、バレていない場合には計画を続行しろ、だそうです)


 ふむ……

 まず今の状況を説明しておこう。

 僕自身へのおさらいも含めてね。

 リリアはどうやら僕を好いてくれているらしい。

 その上で僕の無責任な生きろと言う言葉を受け入れるようだ。

 しかし、それにはいくつか問題が存在する。

 大まかには2つ。

 リリアが魔族だということを僕が知っていると魔王サイドに知られてはいけないこと。

 知られた時点で人族を道連れにあちこちで魔族が自害するだろうから。

 これに関してはかなり少数だと思っている。

 リリアのケースは稀だ。

 そんな何人もこんな重要な場所に近付けるとは思えないし生きていけるとも思えない。

 だけどどこに潜んでいるか分からない以上迂闊な行動はとることができない。


 もう一つはリリアの家族だ。

 彼女は家族に会いたいという。

 これに関しては頼まれたわけではないし、リリアは自分で何とかすると言っていたけど……無理でしょ。

 こんな純粋に自分を好いてくれる女の子を見殺しにして何が男だ。

 僕は主人公ではないけど、そこに関しては自信を持って生きていきたい。

 だからリリアの家族は助ける。

 魔王を倒してリリアを家族と会わせる。これは決定事項だ。

 リリアのためじゃなく自分が前を向いて生きていくための自己満足。

 他の誰でもない僕自身の基準で僕が決めたことだ。

 って、言ったらリリアはめっちゃ蕩けた顔で甘えてきた。

 そういえば淫魔でしたね、ってくらいエロエロな顔だったよ。


 そして、リリアには一方通行で「伝心」というスキルを使った指令が届くらしい。

 一方通行なのは魔族が王城の人間と接触できるためにバレないスキルがこれくらいしかないかららしい。

 要人の食事会に近づけるほどのメイドは外へ行くことは出来ず、怪しい行動もとれない。

 そのためやり取りができるの方法はかなり限られるらしい。 

 それでもいつかはバレるようなことだと思うけど、やはり魔族側としてリリアは成功したら儲けものくらいに思っているのだろう。

 

 次にリリアが僕の油断を誘うために恋する少女を演じている可能性。

 これに関しては僕は大丈夫だと思っている。

 隷属による絶対命令権で危害を加えること、こちらが不利になる行動はとるなと言ってあるのだ。

 こういうときくらい女の子を信用すればいいじゃないかと思うけど、さっきも言通り僕は主人公じゃない。

 いつ死ぬかも分からない異世界で軽率な行動はできない。

 僕の油断はほかの3人への危険でもあるのだから。

 リリアに対して申し訳なく思う。

 だけどこれは譲れない。

 僕がそう謝るとリリアは気にしないでくれと言って笑った。

 

 命令を伝えてくる魔族に関してはこちらの様子を見てはいないのだろう。

 それは成功例であるリリアの失敗に繋がるから。

 いくつかの状況に分けた命令もそれを表している。


 以上のことから僕はリリアを偶然気に入ったエロ勇者として振舞うことにした。

 リリアのことを魔族だと知らない設定。

 リリアは僕を油断させるために恋人のように振舞い情報を引き出しているということにしている。

 それに関して特別な方法で報告書を作成して経過を送らなくてはいけないらしい。

 なんでも目では見えない魔道具を使うと言っていた。

 凄く気にはなったけど自重した。

 それを使って嘘の情報を送ると言っていたけど大丈夫かな?

 信用してないとかじゃなく矛盾のない嘘を送り続けれるだろうか?

 するとリリアは任せてください! と自信満々に答えた。

 まあこれに関しては今まで自分を偽って生きてきた彼女の力を信用するとしよう。

 下手に素人が口を出すよりもいいはずだ。


 そして、最後。

 リリアのことをほかの皆にも伝えて情報を共有するべきかどうか。

 これに関してはお互いに言わない方がいいだろうという結論で一致した。

 リリアの意見としてまず僕以外の人間を信用することが怖いらしい。

 僕にはよく分からない感覚だが今まで悪意に晒されてきた彼女にすぐに他人を信用するのも酷だと思った。

 そして、僕の意見だけど……この情報は不用意に拡散するべきじゃないと思ったからだ。

 それはリリアの持っていた『魅了』スキルの存在。

 どうやら精神操作系のスキルはわりとポピュラーな力らしい。

 それはつまり彼女たちの誰かが操られる可能性があるということだ。

 誰か一人が敵の手に落ちればあとはもう芋づる式だ。

 一人が捕まったら人質として、またはスパイとして、または操って相打ち。

 方法はいくらでも思い浮かぶ。

 今のところ一番強いのは僕だ。

 だからこそ上からな言い方になってしまうけどまだ勇者として未熟な彼女たちに秘密を打ち明けるのは危険だというのが僕の意見だ。


「まあいいです……ですが明日からの訓練は足を引っ張らないで下さいね、せめて軽率な行動で邪魔だけはしないように」


「……訓練? なにそれ?」


 すると姫木さんは凄い顔で睨んできた。

 怖い怖い、怖いよ。

 君みたいに可愛い子がそんな眉間にしわ寄せちゃ駄目だって。


「食事の前に言ってたじゃないですか」


「いや、僕トイレ行ってたし」


「ナンパの間違いでしょう?」


 うん、そうでした。


「明日からこの世界のことを教える座学とどれだけ戦えるかのテスト、それに魔物に慣れるための実践を交えた訓練をするらしいですよ」


 ふぅん?

 自慢じゃないけど全く聞いてなかった。

 あの時は焦ってたし、何よりリリアのことがあったし。


「悠斗様、頑張ってくださいねっ」


 そう言って僕に微笑むリリア。

 なるほど、リア充が何であんなにリア充してるのか分かった気がする。

 恋人の笑顔のためならきっと何でもできるのだろう。

 僕は今それを理解した。

 いや、リリアとは設定だけでそういう関係じゃないけどさ。


「うぅ……佐山先輩の馬鹿……」


 と、やはり落ち込んで様子で今にも泣き出しそうな栗田さん。


「や、やっぱり佐山さんって、ラノベのキャラみたいですよね」


 そんなオタクらしい感想を言う秋山さん。


「死ねばいいと思います」


 うん、君に関してはもう……うん。

 段々遠慮がなくなってきたね。 

 リリアと関係を持ってから(持ってないけど)さらに刺々しくなった気がする。


 そんな三者三様な反応と共に今日はお開きになった。

 明日からはようやく本格的な異世界生活が始まる。

 そのことにどこか非日常を期待している僕がいるのだった。






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