サウス・ゴールド大公 暗殺依頼
「サン・サークル皇国」にある「ホールド・サウマニー侯爵/地区管理領」「チェリー・ブロッサム」11番通りに住む――銀色の瞳を持った18歳の青年――ノストラ・ラグナロクの元に1通の手紙が届いた。
レンガで出来た住宅が建ち並ぶ街道に、二頭立ての馬車が1両、箱型のレンガ住宅の前で泊まり、中から――
バッファローチェックのアビコート・黒色のウエストコート・黒色のズボンを着た・・・・・・髭もじゃで、凛とした顔だちの男(男爵地位)が降りてきて・・・・・・アンティークデザインをした木製の内開きドアの前に立ち、ノックをして、歯切れの良い大きな声で通達した――――
「ノストラ・ラグナロク!! サン・サークル26世陛下から依頼の手紙をお預かりしたので、届けに参った!」
太ったトロールのような体型をした、その男――テル・テイラー[45]
――――2階の読書部屋で、ホットアップルティーを飲みながらのんびり読書をしていたラグナロクは、男爵の通達を聞いた後、ため息を吐き、本を閉じて1階の玄関に向かい・・・・・・扉を開けた。
「どうも、テル・テイラーさん・・・・・・」
気が乗らない様子でテイラー男爵に挨拶する、ラグナロク。
「おや? ・・・・・・読書中だったかね・・・・・・」
ラグナロクは、のんびり趣味にふけっているところを邪魔されると、何時も不快になる、ということを上流身分の人たちは皆知っているので、テイラー男爵は、ラグナロクの様子から彼が先程まで何をしていたのかを悟った。
「えぇ、・・・・・・まぁ」
「そうか、邪魔してすまなかったね」
テイラー男爵は上っ面な謝罪の後・・・・・・
「先程述べたとおり、陛下からの手紙だ」
腰に提げていた鞄の中から――金色のラッピングが施された、表に皇族の紋章(白猫)と魔方陣が描かれた封筒手紙を取り出し、ラグナロクに手渡した。
「・・・・・・確かに、陛下直々のご依頼ですね・・・・・・」
ラグナロクは、封筒手紙が皇帝からの物か確かめた後――封筒手紙を受け取った。
「では、何時も通り証明魔法を頼むよ」
「はい。 それじゃあ」
ラグナロクはそう言って、封筒手紙に描かれた魔方陣に、少し浮かした状態で手をかざし、本人がちゃんと受け取ったかどうか確かめるための証明魔法を使った――――
すると、若葉色をした直径10㎝程の円形の魔法陣が、同色の光を発行させ、中に浮き、かざしていたラグナロクの手のひらに付着した――――
ラグナロクは、手のひらに付着した魔方陣を見た後――
玄関空間の左側にある栗皮色のオイルステイン仕上げで出来た木製タンスの・・・・・・2つ並んだ1番上の引き出しの左側を開け・・・・・・中にある、25㎜×25㎜サイズの薄葉紙を取り出した。
「これでよし・・・・・・」
ラグナロクは、薄葉紙を取り出した後、手のひらに付着した魔方陣を2~3程握りしめ、薄葉紙に手のひらをかざし、証明魔方を使った。
――手のひらの魔方陣が薄葉紙に移った・・・・・・
「では、これを・・・・・・」
ラグナロクは、自身の紋章(月)を付着さした薄葉紙を、テイラー男爵に手渡した――
「・・・・・・うん。 確かに受け取ったよ」
テイラー男爵は紋章を確認して、その薄葉紙を鞄にしまい込んだ後――
「それでは、失礼する」
綻んだ表情で会釈した後、馬車へ歩いていき、こちらを向いて再び会釈をして、馬車に乗り・・・・・・自身の職場へと戻って行った――――
ラグナロクは住戸に入り、扉を閉め、先程の読書部屋に戻った後、手紙の内容を確認した――――
【ラグナロク殿へ。 我が親愛なるラグナロク殿。 貴殿に重要な仕事をご依頼したく、この手紙をお届けした次第であります。
北の将軍、サウス・ゴールド大公3世に関する事ですが、彼の統治する国に行き、彼の暗殺をお願いしたく存じます。
かなりの難易度を誇るお仕事ですが、この仕事は貴殿にしか出来ないと我自身思っているゆえ、何卒宜しくお願い、致します】
「サウス・ゴールドの暗殺って・・・・・・」
ラグナロクは手紙の内容を見て、しばらく考え事をし――
何かを決心したような顔で、読書部屋を飛び出し、1階にある自室に向かった――――
――自室――
「サウス・ゴールド大公国か・・・・・・久しぶりだな」
ラグナロクは以前、サウス・ゴールド大公国に、皇帝からの以来で行ったことがある。
その時は――サウス・ゴールド大公国が密かにサン・サークル皇国を占領するため、闇魔法開発者たちを世界各国から秘密裏に集め禁断の魔術を開発している――という情報が、政界の耳に入ったので、サン・サークル26世はラグナロクに、サウスゴールド大公国に侵入し、情報を集めてくるよう依頼した。
ラグナロクは調査士という職業を、自営で営んでいて、今回の依頼は今までの依頼の中で1番の難易度を誇っている。
調査士というのは、簡単な説明になるが――依頼主が欲する情報を集めてきて、その情報をその依頼主に伝える。 という職業だ。
「よし・・・・・・これで良いだろう」
ふわふわした綿のような、白毛の生地で出来たセーターと同色のズボンを着ていたラグナロクは、別の服に着替え、部屋の内側に貼り付けてある姿見ミラーで自身の格好を確認した。
――パーマがかかった爽やかなベリーショートヘアーで、目鼻立ちが整った、男らしさを感じさせる瓜実顔の顔だちをしたラグナロク――
――シェパードチェックのテーラードジャケットに白色一色のカッターシャツ、ズボンはジーンズのような黒い生地のズボンの格好をした自分の姿を、上から下までじっくり観察した。
プライベートを過ごす格好だが、敵の国に侵入した後、いろいろ情報収集するのには、適した格好だ。
「行くか・・・・・・」
ラグナロクは何の手荷物も持たず、住戸を出て、玄関ドアの鍵を閉め――サウス・ゴールド大公国に向かった。




