漆話「ケモ耳とご主人」
長い間お待たせしました。申し訳ございません。
出口を出ると、そこには東京にそっくりの大都会が広がっていた。
「ここは東京・・・!?」
「いや利秋くん。あれを見てください。」
ユイが指を指した方向には・・・宙に浮く車!?それに隣には宙に浮いているバイク!?
「ここは私たちが知っている東京とは全く違うところですね。」
「あぁ。」
ゲーム好きのりゅうがここに居たら子供みたいに跳ね回るだろうな。そういえばりゅうは今頃何してるんだろう・・・
ーーーーー日本ーーーーーーー
「は~・・・ハクシュン。あれ?風邪ひいたかな?それより最近あき学校に来ないで何してるんだろうな・・・。まあいいや。」
そう龍一は呟きながら空を見上げ、授業をサボっていた。
ーーーーー裏世界ーーーーーー
僕らは町を見渡しながらフロントへ出る門に向かっていた。
「すごい大きいな!本当にゲームの中にいるみたいだな!」
「緒方。げーむ?とやらは分らんがこの程度で驚いていたら今後が大変だぞ。」
「なんで?」
「この世界の中心の町はす~ごく大きいんだよ~この町の5倍ぐらいはあるんだよ~」
「2人は中心に行った事あるの?」
「私と詩姫はまだ一緒に暮らしてた時に一度だけ行ったことある。緒方のお父さんが言っていた通り本当にこの世界の心臓みたいだったよ。」
「でももう5年以上前だからその時よりもっと大きくなってると思うよ・・・」
「あ。見えましたよ利秋くん。あれが出口の門です!」
詩姫ちゃんの表情が一瞬変わったのはきっと気のせいだろう。
「詩音さんと詩姫ちゃんは本当に来るの?この先何があるか分からないんだよ?」
「そうですよ。利秋くんの言う通りです。それに2人だけの方が・・・」
「ユイ最後なんて言った?良からぬ事を考えているんじゃあないよな?」
「いえ別に何も。」
「話はそれたけど2人は本当に大丈夫なの?ここが故郷なんでしょ?」
「・・・。私とヒメの故郷は本当はここじゃあないんだ。」
「故郷がここじゃあないってじゃあなんでお父さんとかがここにいるの?」
「小さい頃両親が離婚したのは言ったよな?両親は中が悪いが私のお父さんとヒメのお父さんは仲がいいのだ。だからヒメの家が引っ越しすることになったら私の家も一緒の街に引っ越ししてるんだ。」
「なんかややこしい話ですね。じゃあ本当の故郷はどこにあるんですか?」
「私たちの故郷は世界の中心の街の隣の街だ。だから祖父と祖母はその街にまだ住んでいる。」
「じゃあ分かった。2人があまり今の両親と仲が良くないことと、この町が故郷じゃないことが。だからとりあえず2人の故郷の街に向かおう。どうせ僕たち2人だけじゃあそこまでの道のりすら分からないしね。」
「いいのか?緒方?面倒事に巻き込むかもしれないのだぞ?」
「それでもいいんじゃないんですか?大変なのは結局同じだし、ここに2人を残してもまた家出するんでしょ?」
「そ、そのつもりだが。」
「その代りいつかは2人とも両親と仲直りしてね。」
「緒方に言われなくてももともとそのつもりだ。」
「じゃあ行きましょうか。」
「ハイ。」
「あれ?門番と誰かが揉めてますね。」
「あの見た目は獣人だな・・・」
「モフモフ~!」
「ちょっと話を聞きに行こうか。」
「そうしないと通れなさそうだな」
「なにかあったんですか?」
「実はこの人が・・・」
「フムフムなるほど。装備品が乏しいのに1人で旅に出ようとしてるので危ないので通せないと。」
「獣人の人。どこに旅をする予定だったのですか?」
「とりあえず世界の中心に行こうかなと。」
「なら僕たちと一緒に来ませんか?最終的な目的地はそこなので、一緒に来れば安全だと思いますよ。」
「いいんですか!?」
「まぁその代り他の街も寄ることになるけど・・・」
「それでも全然いいです!連れてってください!」
獣人の子は尻尾を振りながら僕に抱き着いてきた。
「うわっ!ちょっと。連れて行くからとりあえず離れて!」
「じゃあ御武運を。」
僕らは門番と父さん達がいたこの街に手を振った。
「ありがとうございます。私の名前はミケ=アルフャンって言います。今後ともよろしくお願いいたします。」
「ミケさん・・・?て呼ばしてもらってもいいですか?」
「はい。ご自由にお呼びください。ご主人。」
「ご主人!?なんでそうなっているの!?」
「それはですね。私はもともと旅をする理由は私の性格に問題があるのです」
「性格?ていうかそれと僕をご主人って呼ぶのには関係が?」
「はい・・・。私の家は15歳を過ぎると独立し、お金を稼ぎに出なければなりません。ですが私はそんな決められた道を進みたくないのです。自分の道は自分で決めたいのです。」
「んで旅をしようとしてたのですか・・・。ですが利秋くんをご主人と呼ぶのは何故なんです?」
「そうだよ。何故緒方をご主人呼ばわりするのか具体的に教えてもらってもいいか?君の説明では旅をする理由しか分かならい。」
「実は私の家にはもう一つ掟がありまして。15歳になると独立し、金稼ぎに出ると申しましたがその理由には誰か分からない人に飼われに行きお世話をする為でもあります。」
「自分で道を決めたいか・・・。」
ぽつりと僕は呟く。その声が聞こえたのかユイは口を僕の耳に近づけこう囁いた。
「大丈夫です。利秋くんがどんな道に行ったって私も一緒に行きます。」
と。
「ミケ・・・あまり深くは追及しないし、このままご主人と呼んでもいい。その代り条件がある。それでも構わないか?」
僕がそう言い放つとミケは尻尾を勢いよく左右に振っているとても嬉しそうだ。
「はい!なんでも条件を出してください。絶対に守りますので!」
「そうか。まあ条件って言うのは僕をご主人と呼んでもいいが、僕を目上の存在とは思わないで友達と思って欲しい。」
「なぜですか?」
「先ほどミケが言っていたが、飼われに行くとか飼うとかペットみたいな扱いをしたくないんだ。これは絶対約束してくれ。」
「はい!わかりました!ご主人はご主人だけどご主人じゃあないってことですね!」
こんなことをミケは言っているが本当に理解したのか?
また詩姫父の時のような厄介事に巻き込まれなきゃいいけど・・・
中途半端な所で切ってしまいましたこと、お詫び申し上げます。これからもどんどん続けますのでお願いします。また間が開くと思いますのでご了承ください。
次回に乞うご期待あれ!