三 平治の乱
平治元年(1159年)の末、都で大きな乱があった。
そのことが信長=政子の耳に入ったのは、すべてが終わってからだったが、事の経緯は政子も識っている。
平治の乱。
源氏と平家の血みどろの争い。その始まり。
「政変の主導者、藤原信頼に味方した源義朝は、関東に逃れる途中、尾張国で裏切りにあい、殺害。ことを治めた平清盛は三位に登り、公卿になられたようです」
武門の家である平家が、国家の政道を一手ににぎる、その階。
やがて平家は勢力を伸張し、名だたる名家を脇に押しやり、栄耀栄華を極めることになる。
武家の世が始まる、その黎明。
そこに、戦の匂いをたしかに感じて、幼い娘は笑う。
「まちゃに、乱世よ」
それは政子――いや、戦国の魔王信長にとって、故郷のごとき心地よさを感じさせるものだった。
◆
さて。数年が経ち、政子も満五歳になった。
五歳にもなれば、それなりに動けるし走れる。
兄の宗時にため息をつかれながらも、政子は活発に野山を駆けまわった。
郷の子供たちを引き連れて、だ。
成長とともに、魔王オーラはいや増すばかりで、そこらの大人や野盗など、悪心を起こす前に逃げ散ってしまう。
格好も酷い。
直垂に括り袴と、まるで男のような装いの上に、見事な小袖を着流しており、腰からは袋をいくつも吊り下げて、干し柿や火打石、砂金の類を入れている。
まるでかつての少年期を取り戻したような珍妙きわまる格好で、徒党を引き連れてのし歩く政子は、いつしか「北条の修羅姫」と恐れられるようになった。
「やいやいやい、修羅姫さんよォ! おいらん土地ででっかい顔しやがるじゃねえか!」
それゆえ、狭い北条郷を越えるとこんな連中にも出くわす。
政子たちの前に立ちふさがったのは、子供ばかり三十人あまり。
敵、というわけではない。近隣の土豪の子供連中が、自分たちの土地に近づく政子たちに突っかかって来たのだ。
「政子、どうする」
「知れたこと」
兄宗時の不安げな視線に、政子は口の端をつり上げて答えた。
「――遊びよ。石合戦と参ろうぞ」
魔王オーラ全開だ。
宗時は引いている。
信長にとって石合戦の指揮など慣れたものだ。
本当の戦であれば、もっと慣れているのだが、これは遊びだ。
数は、北条側の子供たち15に対して相手側は30。
劣勢とはいえ、そして遊びとはいえ、さきの第六天魔王、北条政子が指揮する子供たちだ。負けることなどあってはならない。
「者ども、かかれ、励め、そして――滅せよ!」
無茶を言う。
石合戦には勝った。
◆
その後も、政子は子供たちに、遊びを通して戦の仕方や諜報のやりかた、そして上下関係を魔王式スパルタで叩き込んでいく。
いずれ起こるであろう、源氏と平家による、天下を巡る争いを睨んでのことだ。
「くっくっく、精鋭を作り勢力を広げ、牙を研ぐのだ。このわしが、戦国の戦を、政を、教えてやろうぞ!」
そんな風に野心を燃えたぎらせる魔王だが。
「……すまん政子。言ってることがさっぱり理解できん」
「しっかりせぬか兄者!? 一族の子供で一番頭のいい兄者がそんなことでどうする! わしの心を折る気か!? もうわし泣くぞ!!」
その道のりは、はるか遠すぎる。
◆例えばこんな英雄転生
戦国時代において(ある意味)有名な武将、小田氏治が平家の貴公子、平維盛に転生!
持ち前のカリスマと脅威の復活力で、何度でも何度でも何度でも源氏の軍団に挑み続ける!
不死鳥少将、参るっ!




