真夏の朱 / 病原体
真夏の朱
ぶつかったフリをしてお辞儀をする。
厭悪に押し潰される僕は。
森へと。沈下した船。
芸者の積もりで、滴る泪と引き換えに千古の先駆は何処へ逝く。
地を這う様な感覚で君へと。頑是無い君と夕の若草汁。
僕は愚かだ。
疎癒ゆ君を亡くした。
口元が引き攣る様に咲えと嗤う。
嗄れた声で「愛してる。」
病原体
或る日。
路上の紫煙と共に何時か古の噂。
うら若い 女の噺。
彼女は病原体だった。
彼女の躯そのものがウイルスであった。
彼女は触れた者を不治の病にかけ、魘う。
感染こそしないが、周囲から非難され、咎められた。
__そう、病の様に。
出来るのは人を苦しめる事だけ。
やりたい訳じゃ無いのに。
何で。
噂は噂。直ぐに広まってしまう。
直ぐに相手にされなくなって、咎められる。
もう厭なんだ。さよならしよう。
最期に 有りったけの
私を。
それから世界は彼女に苦しめられた。
僕もその一人である。
或る日。路上の紫煙と共に一人の女。
うら若い女の姿。
その女は、顔も見せず、只此方を見て
「…貴方にも私の一部をあげる。…貴方には、全部、あげ…る……。」
と。
__これは、或る日の噂。
1、2年前に書いたもののリメイクです。
至らぬ所があり過ぎて恥ずかしいです……