プロローグ
ここソフィア大陸では女性の地位が圧倒的に高く、大小の国問わず女性が権力を握っている。そのため、男性が国王に在位した事はほとんどなく、過去唯一在位した男性の王、ヴィクトリア・レグナスの死後は、再び女性主体の世の中に戻っている。そもそも女性の地位がここまで高いのには、この大陸に伝わる歴史が大きく影響している。歴史の示す伝承には、女神ソフィアが海を渡り進軍してきた異形の大群を前に、女神の力エレメンタリオを行使し、これを撃退したと記されている。この伝承は大陸の民に広く伝えられており、聖ソフィアとして各国で奉られている。現在もソフィア聖教として多くの教会が建立されており、ほとんどの女性が信仰しているのである。
また、女性の権威が強くなった要因としてレグナスの存在も一役買っていた。統一王となったレグナスだが、聖ソフィアの悪戯か、男子には恵まれず6人の娘達が大陸を分割統治した。本来であればレグナス死後、男性が王位についてもおかしくなかったが、王が大陸統一を成し得るための原動力となった力が、あろうことか女性のみにしか受け継がれなかったためである。分割統治の形を取ったのはレグナスの遺言からであるが、これは異形の者、魔族に対抗する力を継続的に維持していくためである。その後、魔族は現在に至るまで2回しか現れていないが2回ともレグナスの子孫である6人の女王達に退けられている。これを経験した大陸の民は、彼女達の力を蔑ろにする事は出来なかった。また、レグナスの死後から千年近く経過した現在も、王女達の子孫である男子にエレメンタリオが宿る事は無い。また男子が生まれた場合、どの国も王位継承権が非常に低く、王家であってもぞんざいな扱いを受けていた。
このような歴史的背景によりソフィア大陸では男性の権威は低く、取り分け奴隷国家では王家に生まれた男子でも生まれてすぐに奴隷として登録された。そんな奴隷国家という地で生を受けた男の物語が今始まる。