こう、保護者みたいな……?
「お待たせ致しました、コーヒーで御座います」
ソーサーに置かれたカップをアルヴァーロの前にコトリと置いたガイは、トレイを抱えてユーの隣に立った。アルヴァーロがガイに目礼するとガイもアルヴァーロに頭を下げた。
「それでユーちゃん、唯一の友人って、じゃあ私はどうなるのかしら」
私も仲がいいと思ってたんだけど、と言われ、ユーは目に見えて慌てた。
「いやっ、あのですね、マスターはまた別といいますか、こう、保護者!
……みたいな?」
「うふふ、なら一応許してあげる」
独り身でまだ若いガイに失礼だったかと思ったが、彼が笑って許してくれたのにユーはてれてれと笑った。嬉しそうにはにかむユーに彼は笑みを深めた。ガイは横目でアルヴァーロを見てみたが、彼はガイの口調を気にするでもなく、ユーとアルヴァーロの間を眺めていた。その顔には何の表情も浮かんでいない。そんなアルヴァーロの様子に気づき何を思ったのか、ユーはガイを手で示した。
「あ、こちらガイさんと言いまして、このお店のマスターです。 マスターはマスターですのでマスターと呼ばないといけません」
「そうか。 よろしくお願いする、マスター」
「ご丁寧にどうもありがとうございます、ご贔屓にして頂けますと嬉しいですわ、えーと、アルヴァーロ様?」
ガイの意味有りげな視線に軽く頷くと、アルヴァーロはユーへと視線を戻した。アルヴァーロは自らの知名度を重々承知しているので、今この場にいる者が自分を知っているのも知っている。
国家特別官吏グラミジオ王国聖リュオーピア騎士団総督団長アルヴァーロ・ライアスタ。人呼んで鬼の団長ライアスタ、これが彼の肩書きである。
ユーの耳に今の今までその話が入っていないのが奇跡のようなものだ。だから、出来るならこの先もその奇跡が少しでも長く続いて貰いたい。もしかしたら、聞いてしまえばもう彼女は友人とは言ってくれなくなるかもしれないから。そんなアルヴァーロの思いを汲んでか、ガイはウェイトレスの彼女に耳打ちした。これでこの日、店でアルヴァーロの身分について口にする者はいなくなるだろう。
見つめてくるアルヴァーロに、ユーはにっと笑った。
「マスターの淹れる飲み物はどれも美味しいですよ! って言っても私ココアしか飲んだこと無いですけど」
「そうか」
文字通り微笑と共にそう返すと、熱いコーヒーを少し口に含み嚥下した。瞠目して、呟やく。
「……美味い」
「そうでしょうそうでしょう」
「私よりユーちゃんが喜んじゃ喜び切れないじゃない」
更ににこにこと頷くユーと苦笑するガイを見て、アルヴァーロは眩しそうに少し目を細めた。
世代を超えた友情や恋愛には胸が熱くなります。