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冷夏  作者: だんぞう
3/34

#3

 

「赤城のフルネーム、赤城丈士アカギ・タケシってのは知ってるよね?」

 女性陣の頷きも、今一度揃う。

「その、赤城の城と、丈士の丈が、じょう・じょう、とつながってるからジョジョ……」

「あー。本当だぁ!」青戸さん、嬉しそう。

 いやこのネタ、オリジナルじゃなくパクリだから。

 

「こいつさ、昨日の夜中3時に電話してくるんだよ」

 赤城はもじもじしている。青戸さんが喜んでいるのが嬉しいのか。

「でさ、なんだよ? って聞いたら『俺もジョジョだ!』とかわけわかんねぇし」

「だってよー。気付いちゃったんだよ」

「夜中の3時に叫ぶセリフじゃぁないぜ」

 そこで、山瀬がおちょこを置いて、手を上げた。

「……あの……俺も……って、他にもジョジョって居るんですか?」

「うんとな。某少年漫画の主人公が、そういう強引な理由から『ジョジョ』なんだ」

「へぇ~」

 山瀬は、本気で感心してやがる。

 そういや漫画は『美味しんぼ』しか読んだことないって言ってたもんな。

「山瀬先輩ぃ! ジャンプは必読ですよ!」

 こーゆー話題になると、アニメ声娘のテンションが上がる。

 うーん。赤城は本当に青戸さんいいのか?

 マンゴージュースで岩牡蠣やらなめろうやら行く娘だぞ?

 かくいう俺は、かにみそと湯葉刺しの到着と共に、ビールから日本酒へ切り替える。

 だが青戸さん、今度はパインジュース。

 よりによってそのチョイス。ただもんじゃねぇ。蕎麦にもコーラが一番合うとか言いかねねぇ。

 

 それでも赤城はその南国系ジュースの脇に、次々と小皿を置いてゆく。

「やっぱ、海のものには、南の国の雰囲気が合うよね!」

 ……南国系ジュースには絶対に合わなさげな肴の数々を、取り分けている。

 イカの沖漬け。

 鮭とイクラの親子焼き。

 銀むつ西京焼き。

 カワハギは、肝醤油。

 魚メニューがどんどん続く。

 

 もういい。

 こいつらほっておこう。

 ほら、マグロのカマも到着したし。

 さすがにデカくて食いでがある。

 山瀬と俺は、早速カマを箸で攻略し始める。

「琢磨先輩ぃと山瀬先輩ぃ。急に無口になりましたぁ」

 せっかくキミと赤城と二人だけの世界にしてやっているのだ。おかまいなく。

「ん。ごめん。発掘するのに夢中になってた」

「ほじくってます!」

「こーゆー、ほじりながら延々食べる魚ってけっこう好きなんだ」

 口を動かしつつも、箸は休めない山瀬。

 負けてらんねぇ。

 と思ったらそこへ横槍が入った。

「確かにこのあたりとかまだ食えますな。ズギューーーン。もぐもぐ」

 あ、赤城が俺の隠し財産を!

「琢磨さん、ここにもありますね!」

 山瀬まで俺の埋蔵金を!

 

「あたしなんかぁ、美味しいと思いつつもぉ、面倒って思っちゃいますぅ」

 よし。青戸さん、この場合のそれは許可。えらいぞぉ。

「めんどくさい部分ほど、旨いんだよ」

 さすが心の友、赤城だ。よっくわかってらっしゃる。

「で、めんどくさい女ほど可愛いかったり、な」

 む。俺を見るな。俺を。

 

 赤城は優美と会ったことがある。

 んで、優美に振り回される俺を見て、あとでこっそり「面倒だな」って笑いやがったんだ。

 でもな、赤城。

 ある意味、優美より青戸さんの方がずっと面倒くさそうだぜ?

 

 ……とは、思っても言わない。

 

「あいよ。おまたせ!」

 と、アホの坂田(似)店長の、嬉しいタイミング。

「えーと、何たのんだっけ?」と、赤城と山瀬。

 やはり、こいつら食い意地はってやがる。

「琢磨君がさっきこっそり注文したマジカル☆スターや!」

 店長がくねくねと踊る。何かファンタジックなものでも表現したいんだろうか?

 そこへ食いつくのは青戸さん。

「なんですかぁ? それ!」

 マジカルって単語に弱いらしい。サークルの自己紹介で「将来の夢は魔女になることです」って答えただけはある。

 

「ホシゆうのはマグロの心臓やねん。ホシだから、スターやねん」

 めったに入らないメニューだけど、これはやはり旨いなぁ……

 そしてその後、う巻き卵を食い、ようやく蕎麦で〆る。

 

 くはー。やっぱり、旨ぇ。

 

「しっかしいっつもよう食うわ。気持ちええもんやでホンマ!」

「ここの蕎麦美味いんですよ! 腹いっぱいでもつるつる入りますよ!」

 かなり満腹になって、店を出る。

 なんか後半、みんな喋ってるより食ってるほうが多かったような……

 

 地上に出たとたんに、ピアノの音。

 

 

 

(続く)

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