#3
「赤城のフルネーム、赤城丈士ってのは知ってるよね?」
女性陣の頷きも、今一度揃う。
「その、赤城の城と、丈士の丈が、じょう・じょう、とつながってるからジョジョ……」
「あー。本当だぁ!」青戸さん、嬉しそう。
いやこのネタ、オリジナルじゃなくパクリだから。
「こいつさ、昨日の夜中3時に電話してくるんだよ」
赤城はもじもじしている。青戸さんが喜んでいるのが嬉しいのか。
「でさ、なんだよ? って聞いたら『俺もジョジョだ!』とかわけわかんねぇし」
「だってよー。気付いちゃったんだよ」
「夜中の3時に叫ぶセリフじゃぁないぜ」
そこで、山瀬がおちょこを置いて、手を上げた。
「……あの……俺も……って、他にもジョジョって居るんですか?」
「うんとな。某少年漫画の主人公が、そういう強引な理由から『ジョジョ』なんだ」
「へぇ~」
山瀬は、本気で感心してやがる。
そういや漫画は『美味しんぼ』しか読んだことないって言ってたもんな。
「山瀬先輩ぃ! ジャンプは必読ですよ!」
こーゆー話題になると、アニメ声娘のテンションが上がる。
うーん。赤城は本当に青戸さんいいのか?
マンゴージュースで岩牡蠣やらなめろうやら行く娘だぞ?
かくいう俺は、かにみそと湯葉刺しの到着と共に、ビールから日本酒へ切り替える。
だが青戸さん、今度はパインジュース。
よりによってそのチョイス。ただもんじゃねぇ。蕎麦にもコーラが一番合うとか言いかねねぇ。
それでも赤城はその南国系ジュースの脇に、次々と小皿を置いてゆく。
「やっぱ、海のものには、南の国の雰囲気が合うよね!」
……南国系ジュースには絶対に合わなさげな肴の数々を、取り分けている。
イカの沖漬け。
鮭とイクラの親子焼き。
銀むつ西京焼き。
カワハギは、肝醤油。
魚メニューがどんどん続く。
もういい。
こいつらほっておこう。
ほら、マグロのカマも到着したし。
さすがにデカくて食いでがある。
山瀬と俺は、早速カマを箸で攻略し始める。
「琢磨先輩ぃと山瀬先輩ぃ。急に無口になりましたぁ」
せっかくキミと赤城と二人だけの世界にしてやっているのだ。おかまいなく。
「ん。ごめん。発掘するのに夢中になってた」
「ほじくってます!」
「こーゆー、ほじりながら延々食べる魚ってけっこう好きなんだ」
口を動かしつつも、箸は休めない山瀬。
負けてらんねぇ。
と思ったらそこへ横槍が入った。
「確かにこのあたりとかまだ食えますな。ズギューーーン。もぐもぐ」
あ、赤城が俺の隠し財産を!
「琢磨さん、ここにもありますね!」
山瀬まで俺の埋蔵金を!
「あたしなんかぁ、美味しいと思いつつもぉ、面倒って思っちゃいますぅ」
よし。青戸さん、この場合のそれは許可。えらいぞぉ。
「めんどくさい部分ほど、旨いんだよ」
さすが心の友、赤城だ。よっくわかってらっしゃる。
「で、めんどくさい女ほど可愛いかったり、な」
む。俺を見るな。俺を。
赤城は優美と会ったことがある。
んで、優美に振り回される俺を見て、あとでこっそり「面倒だな」って笑いやがったんだ。
でもな、赤城。
ある意味、優美より青戸さんの方がずっと面倒くさそうだぜ?
……とは、思っても言わない。
「あいよ。おまたせ!」
と、アホの坂田(似)店長の、嬉しいタイミング。
「えーと、何たのんだっけ?」と、赤城と山瀬。
やはり、こいつら食い意地はってやがる。
「琢磨君がさっきこっそり注文したマジカル☆スターや!」
店長がくねくねと踊る。何かファンタジックなものでも表現したいんだろうか?
そこへ食いつくのは青戸さん。
「なんですかぁ? それ!」
マジカルって単語に弱いらしい。サークルの自己紹介で「将来の夢は魔女になることです」って答えただけはある。
「ホシゆうのはマグロの心臓やねん。ホシだから、スターやねん」
めったに入らないメニューだけど、これはやはり旨いなぁ……
そしてその後、う巻き卵を食い、ようやく蕎麦で〆る。
くはー。やっぱり、旨ぇ。
「しっかしいっつもよう食うわ。気持ちええもんやでホンマ!」
「ここの蕎麦美味いんですよ! 腹いっぱいでもつるつる入りますよ!」
かなり満腹になって、店を出る。
なんか後半、みんな喋ってるより食ってるほうが多かったような……
地上に出たとたんに、ピアノの音。
(続く)




