プロローグ 1
ストーリーの展開が早かったり、遅かったりするのはご了承ください。
俺は、暗木因果。俺のことを自分自身で評価するなら、ネクロと言ったところか。
しかしながら、このいわゆる地味と言われる立派なライフスタイルも因果の場合、少々事情が異なる。
事情というのも、因果はモテルのだ。それもかなり。
下駄箱にラブレターが入っているのは日常茶飯事で、バレンタインチョコの消費を数少ない友達に頼むのも毎年恒例だ。
そして、因果が地味な性格を装わなければならない一番の理由は、おそらくここにある。
女嫌い。特に美女に弱い。
現在義務教育課程を終え、地元の高校に通うべく退屈な春休みを送っている因果だが、一人っ子の上小学校時代を軍の特殊部隊育成学校初等科(男子と男勝りの山女のみ)という、俗に言う軍事学校のような学校に通っていたため、女子に対する免疫が皆無に等しい。
そんな対女子防御力初期装備の因果が、迫り来る女子の熱気に耐えられるはずもなく、中学3年間を地味という膜で覆いながら過ごしてしまった。
女子曰く、この地味な装いもクールな男子と割り切られているようだが。
容姿は実年齢より上に見られることが多い。
父が日本人。今は亡き母はイギリス人と日本人のハーフということで、因果にも若干イギリスの血が流れている。
しかしながら、受け継がれている遺伝はあまりなく、目と髪の毛は見事に黒色に染まっている。
背は175センチほどで、後5センチは伸びる予定だ。
これも女子曰く、周りの同級生に比べて顔の彫りが深く大人っぽいとか何とか。
確かに腹筋は割れてるし学力もそこそこ高いが、これは小学校時代に散々しごかれて来た時についてきた負の産物であり、因果が求めるのは男友達とわいわいふざけたりする“普通の男子”である。
それが好きでもない、むしろ苦手な女子に寄ってこられたんじゃぁ地味な性格になるのも無理はない。
そしてついに明日、地元にある男子高校に入学できる。世間様から見れば共学でないということは哀れむべき惨事なのだろうが、因果から言わしてみれば、やっと“普通の男子”が演じられる絶好のチャンスである。
明日が楽しみだ。現在父が軍の特殊任務に当たっているため、広い一軒家は因果が一人占めしている。
まずは友達をつっくてから家に招待して、朝までゲームして......。そんな妄想にますます胸が膨らむ。
今日は早めに寝てしまおう。明日という新しい日常の船出のために。
そして、のちに思い知らされることになる、嵐の船旅への舵をきるために。