はじまり
女性のような『兄』と従姉だった『姉』ができた。そして今、新しく増えた同い年の『妹』はオレのことを睨みつけている。二年前と何も変わらない、鋭く、潤んだ瞳に思わず目を逸らすと、それを見逃してくれなかったのか、『妹』は震える声で追撃してきた。
「なんで目を逸らすの? なんでそんな風におどおどしてるの? 別に浪人したのがあんたのせいだなんて思ってない、でもわたしをどん底に突き落としたあんたの右手を忘れたことも一度だってない!」
廊下で呆然と立つオレを、玄関の前で『妹』は詰る。
「もう二度と会うことはないと思った、どうせ今もどこかで誰かを傷つけていて、それを省みることなく幸せになっているか、度が過ぎて捕まってるんじゃないかと思ってたのに! なんで謝るのよ、なんでそんな虚しい目するのよ! 加害者でしょ、被害者ぶるなよ、更生してよ、断罪されろよ!」
「ちゃんと生きてよ! 無様に死ねよ!」
『妹』は一息で言い切ると、玄関で靴を履き、引き戸に手をかけて振り返った。
「私、帰ります。ここに住むのかは、考えさせてください」
ぴしゃりと引き戸を閉じる音がした後、それを『兄』が追いかける。『姉』は膝をついたオレの背中を叩いた。