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KのーとinS  作者: 炯斗
14/23

6/峻厳の国で

ヒュオォォオオォ────


「朱い」

「赤いねぇ」

夕刻。赤く染まった大地。

その地は、澱んだ大気に深い狂気を宿し。

「マスカルウィン。血に染まる死の大地」

重たい圧迫感と悪意を以って旅人を迎える。

「マジ行くんか? 俺気のらんわ」

それは死の国への招待。

「奴の狂気で草一本生えん土地だ。立ち入って気が狂った奴なんか数え切れんと聞く」

シールの説明を聞かずとも、既に立ち入ってしまっている三人はその身を以って理解している。上を見上げて思わず顔が引き攣る。

「すげー威圧感。渦巻いてんねぇ」

「…うん。行くん、だよねぇ…?」

aの顔色も芳しくない。

上空にはどんよりと()()が渦を巻いて見下ろしている。

「「「…」」」

三人の上に落ちる沈黙。

「行くよ、あいつ倒さなきゃ気がすまねぇ」

威圧感に負けじと気を引き締めて空を睨む。

黙り込んでるシール。まだ何か気にしてるのかも知れない。

「シール、大丈夫。信用ないね」

「そんな問題じゃない。俺は…」

「いいよ、こんな処で死んだりしないって。だから今は気にしないで。集中してくれないと、そっちが死ぬかも知れないよ。それは寝覚め悪いからさ」

「…そうだな、今は…忘れる努力をしよう」

「うん、まあ、無理すんな?」

「こっちの台詞だ。いいか、退く時は退けよ」

珍しく真剣に言うから、なんだか素直に頷いてしまう。

「でもそういうけどさ、別にKたち無理な戦いはしないけどなぁ」

「これに挑もうって時点でそれは嘘だな」

「…そう言われると」

よし、戦い前の一時は済んだ。行こうじゃないか、あの下へ。


先陣切って歩き出したのはシール。本当に、度胸があるというのとは違うんだろうけど…。凄い奴だね、aすら躊躇してんのに。


その時、赤い空に金が開いた。


「シール危ないっ!」

aが叫んだ時には駆け出していた。シールを掻っ攫って上空へ退避する。

地上には銀の羽根が無数突き刺さり蒸気を上げている。

「──助かった」

「うん、ギリギリだったけど良かった…」

まったく恐ろしい。

シールは何処か感心したように大地に穿たれたクレーターを見つめている。

aたちも─…無事なようだ。グールとともに青龍ちゃんの背に退避していた。

ぎろりと天空の『眼』が獲物を探す。

「やだ、ヤル気満々だわ☆」

ひょうっと『眼』の攻撃を躱す。

「aさん! 全力で行こうぜ!!」

「おう!」

互いに気合も入れ終わり、フェニックス君の背を叩く。

「いい? フェニックス君。Kたち邪魔になるから落として。全力で戦ってきて」

Kの発言に後ろのシールが驚いてるようだが、無視。

「はぁ!? おまえ死ぬじゃん。シールド張って…」

Kをじっと見て、フェニックス君はその先を飲み込んだ。

「大丈夫だな?」

頷く。

と同時に、

「な」

始まる落下。

「にを考えてるんだおまえは──ッ!!?」

ああこの落下感。最悪だ。

叫ぶシールは取り敢えず放置で、パラシュートを召喚する。

「てや」

ふんわふんわ。

おお、割と成功だな…

「あ」

シールは落下。低速で落下するKの横を青緑の曲線が降って行く。

「っ、キャッチ」

シールはaにうまく受け止められて事なきを得た。

「別に降りてから向かわせりゃ良かったろ! 自殺願望があるのかと思っちゃったよ」

ふわりふわりとaの傍まで落下する。

「いや、ほら。一匹くらい囮が居た方が避難も易いかな、とか」

「いいや」

そんな即座に簡潔に否定しなくても。解ったよ、悪かったよ。やってみたかったんだよパラシュート!

「ってか…」

aが腕の中のシールに目を落とす。

「…」

きゅう。シールは完全に気を失ってる。

「かっ…かよわいッ…」

aはその様に何某かのショックを受けてるようだ。


ぼむ。


「え」


シールに気をとられて、今が戦闘中だという事を失念していました。

「うきゃああぁああ───ッ!!」

さよならパラシュート、さよなら我が人生。

あの『眼』の攻撃が見事にヒットして、Kは再び落下を始める羽目になった。


教訓。

戦闘中の油断及び余所見はやめましょう。


「死ぬかと思った」

「何度目や」

aに助けられて地へ降り立つと、グールが横で呆れ返っていたりして。うう、本当申し訳ない。それもこれもあの『眼』の所為!

「絶対倒すし」

「逆恨み違うん」

そんな事ないです。


「上空から見下ろされたら俺には戦う術はないなぁ。まぁそもそも戦いとぉないんやけどあんなんと」

「戦う術なんかKにだってないけどさ。これじゃ何もしてないみたいでヤダ」

上空の戦闘を観戦しながらヤキモキする。

「アタシらの精神力で戦ってるんだけどね。青龍ちゃんたち」

それは解ってるけどさー。見てるだけって言うのは…

「うん、性に合わない」

なんていうかこう、一緒に戦いたいんだよね。

あ。

『眼』の攻撃を喰らってフェニックス君がよろめいた。

見ていられないっていうか…。

ええい、フェニックス君そこでバーニング!!右ッ、あああっ、ファイアーブレスッ!!だぁ危ないッ!避けてッ、ファイアーウォールっ。ああ畜生。だからそこでバーニンッ。

ちきしょーイライラするっ。

下から色々言われてるフェニックス君も相当苛付いてるみたいだけど、見てるだけってのももどかしいんだから!

「「──っあぁッ」」

叫んだのはフェニックス君も同時。


「Kにやらせろッ」

「テメーがやってみろッ」


瞬間。


どくん。


フェニックス君が光に変わる。その眩しい閃光が、Kの体を包んだ。


「 えぇと」


一体何が起きたんでしょう。

じっと手を見るも、おかしな部分はそこにはない。

「K危ないっ」

「え」

またしても油断。襲い来る銀の羽根。それを避けようとして地を蹴って…


ズダンッ


「──っ」


足元に穿たれたクレーター。それを、眼下に収めていたりして。


一秒後、クレーターの上に着地した。

「…」

「…うわぁ」

ただいまの飛距離、数メートル。

何となく。物凄い何となくだけど、何が起きたか解った気がする。

たった今手に入れた凄い脚力を駆使してaの処まで一気に飛躍する。

「aさんaさん!! 青龍ちゃん乗せてっ」

「お。あ。うん」

青龍ちゃんに乗って、空からの攻撃に切り替えることにした。




少しだけ遡って。


「…玄獣て…『術』なん違った?」

今更やけど、と、グールが呟く。

「術、でしょ?」

Kはアタシとグールの遣り取りを後ろにフェニックス君の応援を続けている。

「や、何ちゅーか…本来は確かもっと違うカタチやったような…」

「よく知ってるな」

「タクリタン!?」

グールの後ろにふわりとタクリタンが現れる。

「本来は同化して使用する。玄獣を常に実体化させるより低コストで術が使えるようになるからな」

「え」

とすると、横でフェニックス君に叫び続けているKはまさに最悪効率例。

しかし同化といわれたって、何をどうしたらいいのか解らない。そうタクリタンにぶつけると、然も簡単そうに言ってのけた。

「要はシンクロだ」

「同調って言うと…つまり」

その時、後ろで叫び声があがった。

「どうやら、彼女は同調を習得できたらしいな」

Kが光と化したフェニックス君を纏い、取り込む。何が起こったのか自分でも解らないらしく、暫くじっと手を見つめていた。

その上空で『眼』が光る。

「K危ないっ」

その叫びが聞こえたのか、瞬間、Kがその場から消えた。

「え?」

グールとともに呆然とその様を見つめた。Kの姿は、その遥か上空にあったのだ。

ずだんと着地を決めて、数秒の沈黙。次の瞬間には己の身に起こった事を何となく悟ったらしく、一蹴りでこちらとの距離を詰め。青龍ちゃんの背に乗り、上空の『眼』と戦い始めた。



「…」

「お。起きたんか」

Kが青龍ちゃんの背で戦い始めて数分、眠り姫が眼を覚ます。

「わ、グールちゃん避けてっ」

まだ状況把握が出来ないシールを抱えてグールが上空から降り注ぐ攻撃を避ける。

「今の…アイツの技やで」

味方に殺されかけるようでは勝ち目が見えない。

「こりゃ、分悪過ぎやな…」

今この空間に安全な所など欠片もないようだ。グールは呆れ顔で溜息を吐いて、主の守に専念する事にした。



青龍ちゃんを駆って『眼』と戦って数十分。

途中で何回か術の目標がずれて地上のグール達を殺しかけちゃったけど問題ない。

自分の意思で炎が扱えるって凄い。化学反応を計算しながら薬品使わなくていいからすっごく楽しい。思い通りに攻撃が出来る。

ただ、何とも大きな炎は出るんだけど、命中率が致命的。なんでかなぁ。射撃の命中率はそんなに悪くないんだけどなー。

それより、気になるのは何だかさっきから…調子が…

「──…はら…?」

─くらっと。

これは、なんだか…

「…やば…」

視界が回って、何だかよく解らない内に、青龍ちゃんの背から落ちた。ああ、最近よく落ちるなぁ…なんて、益体もない思考が過る。

「Kッ」

「マスタァッ」

なんか皆の声が聞こえる。

やばいなぁ。力入んないや。死なないって、言ったんだけど…もう正面から死の矢が見えるし。

ごめん、かも。

スクラグス…シール……タクちゃん…

目の前には死の矢。

そっと瞳を閉じる。


─────諦めんの?


「─え」

瞳を開く。

かちゃかちゃチャキチャキと音が響いてる。

何此処…

『諦めんなら左へどーぞ。まだやんなら右だ』

「や、断然右だけど」

後ろに窓が一つだけある、何処までも朱い部屋。中央には青年が一人座って、手元の何かをいじり続けてる。まったくこっちを見る素振りも見せずに、ただかちゃかちゃと音を立てる。

「でも何故だかさっぱり急に体に力入んなくなっちゃったんだよ。だから─」

『ああ、それは熱があるからな。そんな高熱で普通戦わねぇ』

熱…

『数日で一気に体動かし過ぎ。術ってのは唯でさえ消費激しいんだ。連日連続使用なんざ馬鹿げてる』

「そう言われても…」

無理だよ。それに手遅れだ。

「てか…」

お兄さんはまだずっとかちゃかちゃ言わせててこっちを見てくれない。

『ああ、だから一回休んで出直して来な。ここで死なれちゃ困んだよ』

「さっきから何やってんの? チャキチャキと」

『あ? 弓の手入れだよ。もう長い間使ってねぇし』

そうして漸く、彼はそれから手を離した。

『ちょっと手貸してみろ』

「?」

なんだかよく解らないままに手を差し出してみる。左手を軽く彼の差し出した左手に乗せただけなんだけど、それで何が解ったのか。

『───…。成程』

「??」

満足したらしくまた手元のそれを弄り続ける。

『俺の弓は扱いが難しいぜ。エネルギー消費は莫大だ。要領を押さえろ。何かしたいと強く願うんじゃない。心を空にして澄ませ。無心になるんだ』

「…無心…ね」

チャキ…。

軽く曲線を描く筒が触れられて音を立てる。

「さて…右だったよね」

その朱い部屋を横切って、右の通路へ向かう。

「──これでまた、一人増えちゃった」

最後に少し振り返る。

「ありがと先輩。やっぱK負けらんないわ」『──ああ。頼んだぜ、()()

その見えない筈の顔が、確かに笑ったのが解った。




メヲアケナキャイケナイ

「」

ダッテダレカガヨンデルカラ

「」

イキテカツトヤクソクシタタイセツナダレカガ──

「───」

──ナイテ──



「うわ。まだマスカルウィンか」

上空には『眼』が我が物顔で陣取っている。

「何言ってんの。Kが倒れてからまだ五分も経ってないよ」

え。何か随分と長い時間が経った気がする。そりゃもう、十年程経ったみたいな。

「夜になるね…。悪いけどさ、一旦退いていいかな?」

視界が潤む。熱の影響で涙が出てきたみたいだ。これは思った以上に高熱の予感。

退く、という言葉にaが一瞬驚くが、

「その方がいいな。おまえ、熱出てるだろ」

「──…うん、よく判ったね」

続くシールの一言で納得してくれたらしい。

「なら早退くで。二陣が来る」

「aさん、移動、お願い………」

「って、Kー!」

ここで完全にHeatUp。

それを言うのがやっとでした。

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