とある世界に移動した悪役令嬢は前を向きたい‼︎
悪役令嬢シリーズ第4弾です!今日の0:00に投稿したくて頑張ったのですが、正直今回のはクオリティが高いとは言えないと思います…。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです!
「アイラ、お前とは婚約破棄させてもらう!」
「っ⁉︎何ですって⁉︎」
私は自分の婚約者であるリオの隣に立つミリーを睨みつける。
「ミリー、あなたね!…こんなことになるなんて、思ってもなかったですわ!お父様に言われた通りにしておけばよかったのよ!全部‼︎」
するとミリーは意志のこもった眼差しで私を睨みつける。いつもならニコニコと微笑んでいるミリーのその表情に私は思わず肩を縮こませた。
「お父様に言われた通りにですって⁉︎アイラ様、今までノートを隠したり落ち葉を私の靴箱に入れたのはあなたでしょう!」
ミリーの迫力に押され一歩下がるとリオまでジリジリと寄ってくる。
「最初に言った通り、アイラ、お前との婚約は破棄する。そして、新たにミリーを俺の婚約者とする‼︎ミリーこそが俺が初めて見つけた真実の愛なのだから!」
思わず息を呑み、私はとにかくこの場から逃げようとドアに向かって走り出した。
「待てっ‼︎」
後ろから声をかけてくるリオを無視してドアを開けると目の前にはお父様が立っていた。
「なんで、ここに…。そんなことより、お父様!お父様の言う通りにしたら婚約破棄されたんです‼︎私、私どうすれば…」
バッと顔を上げ、お父様を見ると、お父様の顔には娘をみる慈愛の表情も、任せておけという頼もしい表情も浮かんでおらず、ただただ見下すような、虫を見るような目をしている。
「お、お父…様?」
「リオ様、娘が申し訳ございませんでした」
それだけ言うとお父様は私をグイッと引っ張り出すと、部屋からでる。
「…使えない駒だな。そろそろ捨てどきか」
人の心を持っているとは思えないほど冷たい声で呟き私に向き合う。
「ひっ…お父様‼︎やめてください‼︎」
何をする気かはわからないけれど少なくとも、これからいい方向へ進むとは思えない。
「じゃあな、アイラ。,/@?):@/@(!1&:&,’ 」
よくわからない呪文を告げた瞬間私の体はフワリと浮き、意識が暗転した。
「…ぶ…か!大丈夫ですか!」
「っ‼︎」
目を開けると真っ青に澄み渡る空と、人の良さそうな顔をした男子がいた。
「私…」
クラクラとする頭を押さえながら立ち上がるとホッとしたように彼は息をつく。
「よかったです。ここで死んだように倒れていたので、心配になってしまって」
見慣れない服装をした男子は今まであってきた人は絶対に浮かべなかった一点の曇りもない微笑みを私に向ける。
「その格好、ドレスですよね。演劇部か何かなんですか?」
エンゲキブ?
意味がわからない単語にこてりと首を傾げると男子はクスクスと笑う。
「確か演劇部って今、真実の愛っていう劇を練習してますよね」
真実の愛…。
その言葉を聞いた瞬間、今までのことが頭を駆け巡りポロポロと涙が溢れ始める。
「え?え?」
「私の何がいけなかったの‼︎グスッ…真実の愛って何よ‼︎…ズズッ、私はお父様の言われた通りにしただけなのに‼︎」
化粧がぐちゃぐちゃになるのも構わずに私は泣き続ける。
「私、わたしぃ…」
「お、落ち着いてください!えーっと…俺でよければ話を聞きますよ?」
その優しい言葉にもう一度、大泣きすると彼は優しく見守ってくれた。
「お見苦しいところをお見せしましたわ…」
申し訳ありません…と顔を伏せると心配そうに彼は私の顔を覗き込む。
うわぁ、今泣いたばっかりだからお化粧が崩れて顔がパンダみたいになってるはずよ…。
「もし良ければゆっくり話を聞かせてもらえますか?」
ここまで付き合ってくれた彼に事情を説明しないわけにはいかない。
「実は私、婚約者に婚約破棄されたんです。ある時、平民のミリーって子が彼に近づいて不安になって、お父様に相談したら…」
思わず言うことが躊躇われ、視線を彷徨わせる。
「お父さんに相談したらどうなったんですか?」
「ミリーを…殺せと言われたの…。」
ヒュッと彼は息を呑む。
「もちろんそんなことはできないわ!だから出来るだけ婚約者のリオに近づかないようにちょっとした意地悪をしてしまったの。お父様からは靴箱にゴミを入れたりノートを捨てろと言われたけどそれはやりすぎだと思ったから落ち葉にしたり、少し隠す程度にしたわ」
そこから後は婚約破棄された時の話だ。時間で計算してみれば1時間ほど前のことかもしれないが体感では一年くらい前のことのような気がする。
でも今、考えてみれば酷いことだ。いくらリオに近づいたからと言ってミリーにあんなことをしてしまうなんて。
自分で話すことで頭の中が少し整理されて今更ながら自分のやってしまったことを思い知った。
「ごめんなさい、こんなことばかり話してしまって…。こうして考えてみたら全部、自分のせいでしたね」
「あなたは、確かに悪いことをしたんだと思います。お父さんに言われたからだと言って自分で考えもせず嫌がらせをしたりしているんですから」
男子の直球な言葉は私の胸にズシリと刺さる。自分で理解した時も相当ズシリときたが、人に言われると更に重くのしかかる。
「でも、あなただけの責任でもありません」
思いがけない援護に私が顔を上げるとふわりと微笑みながら男子は告げる。
「だから、あなただけが全てを背負う必要はないんです」
「えっ?」
「正直、婚約者とかこの時代にいる人がいるのか、とか思ってしまったりあまりにも俺の知っている常識にかけ離れていた話だったのでなんとも言えないんですけど、でもやっぱりあなただけの責任ではないと思います」
お父さんは娘になんてことをするんだって感じだし、ミリーさんはもともと婚約者のいる男性に近づくなって感じだし、リオくんはまずちゃんとあなたに向き合って話をした方がいいと思うし…と彼は話を続ける。頑張って私をフォローする姿に思わず微笑みが溢れた。
あぁ、そういえばこの前笑ったのはいつだっただろう?
思い出せないくらい遠い昔だ。
「あの、ありがとうございました。話を聞いてくださり本当に嬉しかったです」
どうやってもといた場所に戻るのかも、これからどうすればいいのかもわからないけど、どうにかなるという確証のない自信が今は心を満たしている。
「そう、ですか。よかったです!それじゃあ」
そう言って彼は私から離れていく。その瞬間何故かギュッと胸が苦しくなる。
「待って!」
思わず呼び止めたものの、自分でも何を話せばいいのか分からず困惑する。あ、そういえば。
「そういえば名前聞いてませんでしたね。私はアイラです。あなたの名前を教えてもらってもいいですか?」
「俺は葛西来斗です。また、会えるといいですね」
その言葉にどきりと胸が高鳴ったのを見て見ぬふりをしながら答える。
「そうですね」
正直、まだ状況を飲み込めてないし、全くわかんないけど、ここに来れてよかった。それだけは、はっきりと言えた。お父様やリオ、ミリーのいる場所には多分もう私の居場所なんてどこにもないんだろう。だからこそ私はこの場所で自分の第二の人生を始めよう。
その後、奇跡的な再会を遂げ、真実の愛を見つけた2人の話はまだ誰も知らない
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