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人生ナナメよみ  作者: N(えぬ)
2/10

これから食べたら間に合うだろうか?

節分が来たようだ。食品を扱う店では方々で豆まきに使う豆やら鬼の面をセットにしたものを特設コーナーを設けて売っていたりする。ただ、それもわたしが小さい時分のと比べるとずいぶん狭まった。


現代は、節分というと豆まきより「恵方巻」の方を先に頭に思い描く人も多いのでは無いだろうか。わたしもその口だ。だが、だからといって恵方巻を食べるのを楽しみにしているわけでは無い。実のところ、恵方巻を一度も食べたことが無い。


恵方巻は元はかなり昔に関西の一地方で、海苔の使用を喚起するために考え出された業界の販促キャンペーンが定着した、比較的新しい風習と聞いた覚えがある。その販促キャンペーンをさらに利用して関東にも紹介し、さらには日本中に振りまいたのが今の姿らしい。実際、生まれてこの方、神奈川県に住んでいるわたしは恵方巻ということばを初めて見知ったのが20数年前だったと思う。


「恵方巻」と書いてなんと読むかも知らなかったから、初見の頃は「えかた・まき」とまじめに読んでいた人もいた。正しくは「えほう・まき」だが。それを知った上で今度は「恵方ってなんだ?」と言うことになる。縁起の良い方角というと関東人のわたしには「吉方」(きっぽう)という言葉の方が馴染みがあるからだ。


ところが国語辞典で調べてみると、元は「吉方・恵方」の両方をエホウと読んでいたらしい。近年に入り、恵方巻が生活に定着した影響で「エホウ」といったら「恵方」と書くのが一般化したと言う話である。


何も知らないわたしは、へぇ~。もの知らずでごめんなさい、と謝りたい気分である。

でもしかし、なにしろわたしが若い頃は「恵方」という言葉は関東では使われていなかったと思う。許してもらいたいところだ。それにしても、食べ物の力と大手企業の販促キャンペーンはバカに出来ない影響力があるものだ。


その恵方巻きも、全国デビューして時がたつにつれて店ごとに売り方にしのぎを削る様になり、恵方巻きの正しい食べ方とされる「その年の恵方を向いて、恵方巻きを一本黙って食べる」というような方法では到底無理がありそうな、大物の恵方巻が増えていった。これはもう、豪華な太巻きとしか言い様がない。口をどう押し広げても最初の一口が入らない太さの海苔巻きである。これはもしかすると、「これ一本を黙って食えるだけの健康とバイタリティを毎年維持しなさい」という戒め的な意味があるのかもしれない。


さらには、巻物の寿司という範疇を超えて「円柱形の食べ物」なら何でもいいと言う風に変化してきている。


しかし世の中がこの20年あまりの間、この時期にせっせと「恵方巻きを食べて、一年の縁起を~」などとはやし立て盛り上げても、わたしは「そんな手に乗るものか」とあえてそっぽを向いて生きてきて、今さら思うに、

「あぁ、恵方巻きをずっと食べ続けてこの20年を過ごしていたら、もっと幸福な人生であったろうか?」

なんて、思わされるのだが、それでもやはり今年も食べないつもりという強情さは変わらないのである。

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