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序
初めの記憶は、残酷なほどに青い空だった。
からりと晴れた秋空だった。けーん、と名も知らない鳥が横切っていった。それを目で追っていくと、よく茂った木の葉が見えた。
投げ出した指先を、蟻が這う。人差し指の先端から手のひらへ、皺を辿って手首から地面へ。
乾いた地面には、どろりと濁った汁が流れていた。それは自分の肉体から流れ出しており、じんわりと地面に染み込んでいった。
耳障りな羽音がする。自分にたかる蠅だ。
「死ぬのかい?」
青空を、黒い影が遮る。それが不快で、少しだけ目を細めた。
「そのまま全と無に還るのもいいけれど。ここで出会ったのも何かの縁。君の名前をくれないかい。そうしたら、二つ目の命をあげるから」
はい、と言ったのか、いいえ、と言ったのか。そもそもその影の言葉を理解していたのかも覚えていない。
ただ、真っ黒なものが降ってきて、青空が塗りつぶされてしまったことは、今もよく覚えている。




