深海からの招待状-零(仮)
今 から行けば間に合うはずだと、その少
年 は瞳を輝かせ自転車をこぎつづけた。
も うすぐ深海から探査船が戻ってくる。
よ っぽどのことがないかぎり、15時ご
ろ には姿を現すはずだったが、いまだ水
し ぶきのひとつも見えなかった。ようや
く 作業員が慌ただしく動き始めると、愛
お しいその船体が夕日に光った。人々の
願 いを乗せ、地球最後のフロンティアと
い われた深海の未知なる領域に挑み、そ
し て無事に戻ってきた。少年は自転車に
ま たがったまま、自分達が近い未来に残
す ことになる冒険譚に夢を馳せていた。
2021年1月1日