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水巫女はハレムで溺れる  作者: 愛月なみ
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夢の中の泉の出会い(4)

「精霊……?」


 あ~。なるほど。夢だからそういうのもありだよね。うん。

一人納得して心の中でわかったような顔で頷いている私の心中はおいて、彼の話は続いた。


「そう、精霊。

ここの泉はすごく澄んでてきれいだから。水の精霊の力が強いんだと思う。

そういう精霊はたまに自分の気に入った人を呼び寄せることがあるから」


 だから……と説明しながら、目力の強い瞳でじっと見つめてくる。


「君は水の精霊によばれたのかもね」


 そう言って、頬に手をあててくる。

意外にも大きな手は私の頬を包んでまだあまっている。


「水気に満ちてるから、水の精霊に愛されているんだと思うよ」


 そして、頬の手触りを確認するように親指ですりっと頬を優しくこすられる。


「そ…、そうなんだ。 それより、なんだかちょっと近い」


 肩を抱かれたままなので少し上半身を反らせて離れたつもりでも、実際は全然離れてなんかいなかった。


 彼は本当に体温が高い。


 熱があるんじゃないだろうか、というぐらい近くにいると熱がこちらにもうつってくる。


「あの……、あなたはどうしてここに?」


 私の夢に突然でてきたこの見知らぬ人。

彼のことをもう少し知るのもいいだろう。


「さっきも言ったように、今、ここには軍隊が滞在している。

俺はその軍隊所属で、明日の朝まで自由時間だから散歩にここにきた」


 なんと、こんなに若いのに軍隊所属!

戦争にいくのか!


「一緒に来たやつらは娼館にいってる」


「しょうかん……」


 そこは先ほど言った女性がたくさんいるあの場所ですね……


「そう。戦争前の最後の思い出づくり……ってとこかな」


 にやりと口角をあげる彼は、それまでの落ち着いた感じではなく、なんだかとても年相応の男の子にみえた。


「えーっと……。あなたは思い出づくりはいいの?」


 なんていってよいのか、困った私は正解な言葉が何かわからない。

これじゃない感があるけれど、戦争なんて遠い世界のことで、実感がわかない。


「そうだなぁ。興味がないわけじゃないし。

一応、みんなと一緒に建物の前までは行ったんだけど……

順番待ちしてるの見て、なんだか違うって思ってでてきた」


 なるほど……

 確かに、みんなそれ目的とわかっていても順番待ちは気まずいな……


 男性はそういうのに意外とデリケートってきくし。


 なるほど……


 目の前の顔をじっと見てみる。


 すっととおった鼻筋にすこし薄めの唇。

 一番目立つのはきりっとした黒い眉とその下の少し眦があがった真っ青な瞳。


 うん。顔は今まで私が見た中で一番のイケメン。


 少し視線をずらすと長袖の服の上からでもわかる、広い肩幅。

きっと、細すぎず、いい感じに筋肉がついているんだろう。


 これは……。


 どうせ夢なんだし、ここは大胆にいってみてもいいかな。


 どうかな。


 夢だし、いいよね。


 彼の気持ちを無視した勝手な私の心の中の戦いは友達の

「社会人で初めてってやばくない?」の台詞を思い出したとたんに勝敗が決まった。


 よし!

 夢の中の恥はかき捨て!!女は度胸!!


「あの……。

 私で思い出づくり、しませんか?」


 顔が真っ赤になっていて、全然決まってないと思うけど、言ったー!!


 勇気だしていったよ!!

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