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1,彼女は私?
「...もうちょっとで死ぬところだった」
ベッドへ倒れ込んだ彼の呟きに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「嘘だ、そんな顔をするな。
吸血鬼はそう簡単に死にはしない。」
眉を下げ項垂れていればひんやりとした彼の手が髪を撫でる。
体を起こした彼は既に血色が良かった。
ほら、と彼の声と共に渡されたのは細かく装飾の施された手鏡。
なんの説明もなくて渡されたそれを首を傾げながら受け取る。
手鏡をくるくると回して眺めていれば、ちらりと写った自分の姿にふと違和感を覚え、慌てて鏡の中の自分と向き合う。
正確に言えば自分であろう誰かと。
「...誰...??」
その鏡に移るのは彼と同じく透き通るような銀髪に宝石のようなエメラルドグリーンの瞳の美女。
自分の声合わせて動く彼女の唇は桜色だ。
吸血鬼が存在するのだ、魔法の鏡かなにかなのだろうと再度鏡をくまなく眺める。
「それが、今日からのお前だ。」