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体重計

作者: 白樺セツ

ああ、ああ。


それはただ一言で始まった。


「太ってんなぁ」


ははは、と笑って私の腕の肉を掴む。

きっと悪気はないんだろう。

それでもデリカシーの欠片もない彼のその一言で、私は決めた。

たった今から決めた。


痩せる。

ただそのゴールだけを見つめて、痩せる。

痩せていく。ダイエットだ!

そうと決まれば、その日のうちに家でネットをした。

様々なダイエット法があった。無茶な物から簡単な物まで。

詐欺臭い物もある。


私は決めた。

全部やろう。

そうすれば短期間の内に痩せられるはずだ。

痩せたその後は、もしかしたらリバウンドなんかがあるかもしれないが、関係ない。

痩せることこそが何よりの目的だ。

その日からダイエット生活は始まった。

早寝早起きは勿論、朝だけなんちゃらダイエット。

フルーツだけダイエット。

ラップをひたすら腹に巻くダイエット。

下剤、花の栄養剤、怪しげな薬、寄生虫、痩せる薬やお茶。

とにかく全部やった。全部。

でも流石に断食はやらなかった。

痩せる前に倒れて、病院で栄養食で栄養を付けてしまいそうだからだ。

それじゃ駄目だ。

栄養はとっては駄目だ。

肉を食べては駄目だ。

滋養のあるものを食べては駄目だ。水を飲んでは駄目だ。

油は一切とってはいけない。

体にいるのは空気だけ!

そしてようやく。


――やったー!


体重計は以前よりもずっと低い数字を示した。

 と、それを確認すると同時に、肩にポン、と手を置かれた。


――え?


振り向くとそこには営業スマイルの男の人がいた。

暑苦しい黒く大きなコートを着て、背中に何か大きな棒のような物を背負っていた。

その先にある物は生憎見る暇は無く、男の人はただこう言った。


「じゃ、いきましょうか」


――え?


男の人に引きずられるがまま、自分の家を後にした。

だからデジタルの体重計が表示していた「0」の数字は、そのまんまだった。


風刺というか、何かそこらへんを考えながら書いたのですが、この話を口頭で友人に話すと「……それホラー」と言われました。なのでキーワードにつけました。(「ホラーじゃない……」と感じるかもしれません。すみません)

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