ダンジョンによる被害(近くの村編)
【これはどういう事なんですかね?】
「いえ、分かりません。」
目の前には荒廃した町が広がっていた。
家ががれきになり、ところどころに火がついている。
何人か人がいるが、皆疲れ切っており、服も所々焦げていたり、泥にまみれていたりする。
「とりあえず何があったか聞いてみます?」
【ええ、では聞いて来てください。】
「わっ私がですか!?」
【ええ、私はこんな背丈ですから。】
子供に聞かれてもちゃんと取り合ってくれるかというと微妙なのだ。
アンニカさんがまじめな顔をして私に話しかける。
「今まで話してなかったんですけどね。」
【はい】
「私実は人と話すのが苦手なんです。」
いや、知ってますけど。
それに実はというような事ではありませんし、見たまんまですけど。
というかよく考えたらアンニカさんも魔女ルックで顔が見にくくなってますし、信用度が低いですね。
私とそんなに変わりませんし、二人で行きましょうかね。
【では一緒に行きましょうか。】
「はいっ。」
こんな事でそんな笑顔で答えられても。
そしてアンニカさんが私の後ろに回る。
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【普通アンニカさんが前じゃないですか?】
「いえ、ですから」
【ああ、人見知りでしたね。でもアンニカさんが話して下さいね。】
「わ、分かりました。」
「すっすみません。」
「・・・・あんたら、なんだね?」
「あっ、はい、これはどういう事なのでしょう?」
「だから、あんたはなんなのかと聞いているんだよ。」
「あっ、はい、私はアンニカと申しまして。」
「名前じゃなくて素性だよっ!」
「ひっひぃ、すみません、すみません。私、元巫女をしてまして。」
「あんたっ!回復魔法使えるかいっ?」
「ひぃ、あの、その、できます。」
「じゃあ、来てくれ。」
「えっ、あの、えーーーー」
なんという事でしょう。アンニカさんが連れ去られてしまいました。(棒)
まあ、なんとなくわかってましたがね。
これだけ傷ついている人がいるんだから回復魔法使えると分かったらまあ、こうなるよね。
巫女だとは思ってなかっただろうけど魔女だから何かしらの回復手段は持ってると思われてただろうし。
いやアンニカさんは魔女ではないのだけど、魔女ルックだからね。
さて、私は情報収集でもしておこうかな。
【お疲れ様です】
「ほんとに疲れました。けどちょっと人付き合いにも慣れたように思えます。
というより、いやがおうにも慣れるしかなかったといいますか」
【まあ、少しは復興の役にも立ったでしょうし。】
「そうですね、エヴァレスト神殿はなくなりましたし、
もともと半ば無理やり巫女にされてたという事情もありますが、一応元巫女ですからね。
人のために働くというのもいいものです。」
まあ、アンニカさんが仕事として動こうと思っても、
たぶん周りの人に流されてボランティア扱いにされて、報酬を勝ち取ることはできなかったと思うけど。
そこは言わないべきですね。
「あっ。」
アンニカさんが何かに気付いたような声を上げ手から周りに人がいないことを確認します。
ちなみに私たちは今森の中です。
復興中の治安の悪い街の中で夜を過ごすよりかは、外の森の中の方がいいという理由で外にしました。
シャドーパラディンを見られてもダンジョンマスターとか思わずテイマーだと思われるでしょうが、
余計なもめごとは起こすべきではありません。
モンスター相手なら殺すだけなので楽なのですが、人間関係はいろいろと面倒ですからね。
「あのですね。エヴァレスト神殿の名前は出さない方がいいみたいです。
その、いろいろと駄目みたいですので。」
【分かりました。では色々と口裏を合わせておきましょうか。】
アンニカさん隠すのへただなあ。
取りあえず私はアンニカさんが言いたくないなら聞かないけど。
あっ、けどこの場合は隠したいのはエヴァレスト神殿の名前を出さない方がいい内容だから、
隠すこと自体は成功しているのか。
アンニカさんの出自は地方の小さな村の巫女という事にしておいた。
地方の村なら土着信仰の巫女という事で、色々とこっちが適当に決めてれるし便利だから。
【口裏合わせも終わりましたし、こちらで仕入れた情報について話しておきますね】
アンニカさんが姿勢を正す。
【いや、アンニカさんの探し物についての情報じゃないですから適当に聞いてください】
今回仕入れてきた情報はこの町がなにに襲撃されたかだ。
今回の襲撃は魔物の群れ。いや、軍勢。
ダンジョンからあふれ出した魔物がこの町を攻めて来たらしい。
しかも、偵察に、囮、伏兵に、奇襲、さらに回復薬を優先的に攻撃する、
夜が明けたら撤収などずいぶん戦略的な行動をしていたらしい。
普通の魔物相手に戦う事はできても、軍、それも戦略的な行動をする魔物に対し、
この町の守備隊は町を守りきることができなかったらしい。
私の星マークを付けた魔物も防衛戦に参加したけど、この町につけていた魔物はレベルが低かった。
さすがに世界中のすべての町や村に高レベルの魔物をつけられるわけではないのだ。
それに時間が悪かった。
襲撃があったのは昨夜の真夜中。夜討ちというのが実にいやらしいが、そこは置いといて。
その時間私はアンニカさんと引っ付いて寝ていた。
せめて私が起きていたなら防衛につけていた魔物からの報告を受けて、
周辺にいたもっと高レベルの私の魔物を防衛戦に参加させられたのだけど。
ダンジョンからあふれ出た魔物はそれなりの数討ち取ったらしいが、
またいつ襲撃があるかと町の人たちは気が気じゃないらしい。
【・・・・・という訳です】
「そうでしたか。ダンジョンから魔物が。やはりダンジョンは危ないですね。
国もダンジョンを資源としてみるだけじゃなく、その危険性もちゃんと見ておいてほしいものです。」
【そうですね】
かろうじて返事を書くのを遅らせないことができた。
ダンジョンの認識はそんなものだよね。
なぜだか胸が痛む。そういう認識だと分かっているし、そう思われても大丈夫だと思っていたのだけど。
その日は早めに寝ました。
そしてその晩も町に襲撃があったらしいですが、私が前の襲撃を警戒して、私の護衛としてアンニカさんにも秘密に連れてきていた魔物部隊の高レベルの魔物を配置していましたし、
アンニカさんが完璧に町の守備隊を回復させていたのであまり被害は出なかったそうです。
ついでに私たちの方にもおまけ程度に襲撃があったらしいですが、私たちが起きる必要もなく、
シャドーパラディンに撃退されたので私たちは快眠でした。




