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「……な、何かお困りですか?」
彼女は彼に聞く。
「あ、いや……帰る方法がわからなくて……。」
言われた瞬間に『あれか……。』と、彼女はすぐにピンと来た。
――自分のFAへ帰る方法。
彼女も以前、同じ体験をしたことがあったのだ。
「う、腕にある腕時計みたいなところが《SD時計》って言って、ミニタッチパネルになってますんで……。」
そう言い終えると、彼女はペコリとお辞儀をしてその場から消えた。
「はぁ。疲れたー。」
家に戻った彼女は、フワフワのベッドに飛び込み、呟いた。
これはさっきの会話のこと。
誰かと会話をするのすら久しぶりな彼女は、火照った頬を布団に埋め、足をバタつかせた。
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それから約1時間後、とあるFAでそーっと身を縮め、初期の状態では必ず生えているある1本の木に隠れて、先程の彼の様子を観察している彼女の姿があった。