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本当に、大変ながらくお待たせしました!

おそらく、後半に誤字が大量発生してると思われます(汗)

後で、修正しますm(_ _)m

 ブルーアイランド諸島の各島々には、それぞれ役割分担があり、ここ、中央島は全島の統括管理や政務の業務を主にこなす部署が集中しているのである。

 他にも、北島(ほくとう)は、医療と技術開発を担当し、南島(なんとう)は、北島で開発された技術を使って、実際の製作、加工、製造、調理などを行い、西島(にしとう)は農作物の育成、物流、島外の情勢などの情報収集を行い、東島(ひがしとう)は、ブルーアイランド諸島の治安維持、防衛、不穏分子の懲罰を行うことでバランスを取っている。

 中央島全体の町の造りは、地面は表面の凹凸が少ない石が綺麗に並べられ整備が行き届き、建物も石やレンガ造りのモノが多く島の中央には、この島の象徴と呼ぶべき大理石で作られている大きな時計塔が存在する。時計塔を囲むように、政務業務の部署が集中して存在するため、各部署に用事がある人々でごった返している。

 目的の場所は、この時計塔の北にある麒麟殿(きりんでん)と呼ばれる屋敷なのだが、行きたくないなぁという気持ちがふつふつと、内心で湧き上がってきた。

 久しぶりに来たし、時計塔の最上階にでも登って気持ちの切り替えでもしよう! うん、そうしよう! と内心で現状からの逃避に理由付けをして、時計塔の内部に入る。

 中に入ると、塔の中心に四神の像が設置される以外はモノが存在しない空間になっている。

 壁をぐるりと一周するように階段が設置されており、天井を見上げれば、頭上のはるか向こうに、鐘が見える。現在の位置からでは、それほど大きいと感じないが、実際の大きさはとてつもないモノなのである。

 振り仰いでいた視線を正面に戻して、階段に足をかけようとした所で聞き覚えのある声に呼び止められる。

「あ~、スイレン様だぁ」

 甘ったるく語尾を延ばす独特な喋り方が特徴的な声に名前を呼ばれて、振り返ると予想通りの人物が立っていた。

水月(すいげつ)、ご無沙汰だね」

 中央島統治者にして、最高責任者でもある麒麟(きりん)ことカグラを守護する二体の式神のうちの一体である。外見は少女の姿をしているが、額に薄らと式神であることを示す模様が見て取れる。髪の色は空色で腰ぐらいまである長い髪と同色の瞳、狐のような耳が頭の上で元気よく動き、尻尾をパタパタさせる落ち着きのなさがなんとも可愛らしい。と思考していると……

「水月、何してるの?」

 抑揚の無い無感情な声が、水月の背後の方から聴こえてきた。

「ふぇ? あっ! 火月(かげつ)ぅ~。スイレン様みつけたぁ~」

 火月と呼ばれた、無表情&無感情の少女に見えるが……水月と対を成す、カグラを守護する二体の式神のうちのもう一体である。髪の色は赤色で、肩よりやや長いくらい。瞳の色は紅色で狸のような耳が頭上にあり、短い尻尾が大変可愛らしい。と、思っているとぺこりと一礼をした。

「ご無沙汰しております、スイレン様」

「うん、久しぶり!」

 アタシに挨拶を済ませると、水月に向き直り自身の相棒を嗜める。

「水月、主様のご命令をまさか……忘れたワケじゃないよね?」

 その台詞を聞いたとたん、先ほどまで元気が良かった耳と尻尾の動きが嘘のようにしゅんっと垂れ下がり、水月の心情を伝えてくる。

「うぅ~、わ、忘れてたワケじゃないもん」

 顔はすこしむくれ気味なのだが、耳と尻尾が水月の内心をあらわしているのは一目瞭然なのだが……水月は、なにせ阿呆な子なので気付いていない。本人以外は、水月の耳と尻尾の動きで大体、どういう心理状態なのかわかるのである。それくらい正直者とも言えるのだが、火月の方は感情が表立ってこないので、何を考えてるのか今一ピンとこないのだが、水月と彼女達の主である麒麟様は用意に察してしまえるのである。

 そのワザを身に付けたい! と思うのだが、コレが中々に難しいのである。

「ホント、水月は一つの事に囚われると周りが見えなくなるんだから」

 溜め息を吐いて、やれやれというように肩を竦めるのだが……無表情でその動作をやられると激しく違和感があるよ! と内心でごちる。

「う~、火月は意地悪だぁ~。スイレン様ぁ、助けてぇ~」

 などと言って、アタシの脚に纏わりついてきた。

「えぇい! 内輪揉めにアタシを巻き込むんじゃないよ!」

 水月の頭を押しのけながら毒づく。

「水月! スイレン様が困ってるじゃない! 離れなさい!」

 火月が水月に睨みを利かせ、注意をするも水月は一向に離れて行かないのである。

「水月!」

 もう一度強く名前を呼ばれても、水月はイヤイヤと首を振りアタシの脚から離れようとしないので火月が実力行使にでた。

「水月! いい加減にしなよ!」

 火月が水月を羽交い絞めにすると、無理やりアタシの脚から水月を引き離そうと力を籠めるが、水月も必死に抵抗する。

「嫌だ嫌だ! スイレン様と一緒がいいもん!」

 はい? 何口走ってるんだか……そんなに懐かれるような事が過去にあっただろうか? いや、無い! 断じて無い!

「スイレン様が、自分の住まいである西島から中央島に来ている理由を考えなよ! きっと、用事があるんだから邪魔しちゃダメ!」

 火月の台詞に……あぁ、嫌な事思い出した! と思ったその時である。

 火月の動きがピタッ! と静止したかと思ったら、うっすら微笑みを浮かべた火月が水月に向けて語りかける。

「水月ぅ~、ワタシのスイレンちゃんに何してるのかなぁ?」

 それまで、平坦な口調だった火月の喋りが一変して抑揚と感情が篭った声色になった。

 おそらく、いつまでたっても帰ってこない式神達を心配して、自動から手動に切り替えたのであろうと予測するしかない。アタシは式神について詳しくないしね。

「ひ、ひぃぃ~! ぬ、主様ぁ! ご、ごめんなさいですぅ」

 素早い動作で、アタシの脚に纏わりつくのやめて姿勢を正してカチンコチンに固まりながら火月の方を向く。

 ガチガチになっている水月が、居たたまれないので……さきほどの台詞について突っ込みを入れておく。

「何が、「ワタシのスイレンちゃん」だ! アタシは、麒麟様のモノでも……ましてや、式神じゃないってば!」

 アタシの突っ込みに、自身の式神に向けていた圧力を一旦こちらに向けてきて、言い放つ。

「今、水月と話をしているの! スイレンちゃんは黙っててくれるかなぁ?」

 もの凄くいい笑顔なのだが、どうしようもなく黒い部分が見て取れる。コレは、相当お怒りのようだ。

「わかったよ! んじゃ、水月頑張ってね~」

 と、水月にひらひらと手を振ってその場からの離脱を試みると……

「ひ、酷い! スイレン様ぁ~、助けてくださいよぉ~」

 既に、うっすらと涙を滲ませている水月の台詞に顔だけをそちらに向け、笑顔と親指を立てるポーズをとって一言を言い残す。

「健闘を祈る!」

 サッ!と踵を返し、階段を駆け上がる。

「ふぇ!? そ、そんなぁ~! スイレン様の意地悪ぅ~」

 などと、水月の非難が聴こえてきたが……かまっていられない! あの場に留まっていたらこちらの身にも何かしらの火の粉が飛んできかねない。

「ふふふ、スイレンちゃんたら♪まぁ……今はいいでしょう。水月のお仕置きが先だしね!」

 火月の姿をした麒麟様の呟きに、水月が悲鳴を上げる。

「そ、そんなぁ~!!」

 ソコまでは聞き取れたが、その先何が行われてたのかは知らない。



 しっかし、勢いで階段登っちゃたけどコレって逃げ道がなくなったって事だよなぁ……と気付いたのは、頂上に行くまでにいくつかある広間の一つで息を整えている時である。

 まぁ、後先考えずに逃げてきたようなモノだし仕方ない……か。と、内心でごちり気を取り直す為にも外の空気が吸いたくなって、広間からバルコニーのようなスペースに出て深呼吸する。

 あの短時間で、意外と高い所まで登ってきたみたいで、見える範囲の建物よりも視点が高い。上を見上げれば、まだ塔の中ほどをすこし過ぎた辺りであることがわかった。

まだ、残り半分くらいもあるとは……でかすぎでしょ!と思い視線を戻し、ただただ眺める。

 暫くして、背後から声を掛けられた。

「あ~、スイレン様ぁ~、見つけたぁ!」

「こちらでしたか。スイレン様」

 甘ったるく語尾を延ばす声色と平坦な声色が、それぞれの言葉で探し人であるアタシに声を掛けてきた。

 お仕置きは思いのほか早く済んだようだ。と内心で思いつつ、ソレが顔に出ないように注意を払いつつ二人に向き直り先ほどの台詞に返事をする。

「意外と早かったね。水月、火月」

 アタシの言葉を受けて、水月が頬をまるでフクの様に膨らませながら、噛み付いてきた。

「う~! スイレン様ぁ~、酷いですよぉ~! 水月はぁ、『助けてくださいぃ』って言ったのにぃ」

 うん? 『助けてくださぃ』はて? 言っていただろうか? その部分は、申し訳ないが聞き取れていなかった。

「あぁ、ごめん。ソコは聞き取れていなかったわ」

 対して悪いとも思っていないけどね。と内心で思いつつ水月に返答を返す。再び水月が喋る前に間髪いれずに、水月より話しが通りやすい火月に話しかける。

「で、火月『こちらでしたか』ってことは、麒麟様から伝言があるんでしょ? なんだって?」

 特に根拠があるワケではないのだが、あの状況でわざわざ現われたということは何かしらの理由があると考察できる。麒麟様というお人は、そういう人でもあるしね。さてはて、答えは如何に……

「お察しの通り、主様から伝言を預かっています。聞かれますか?」

 確認するまでも無いと思うのだが、こういう事務的な所が如何にも火月らしいと言えばらしいのだけど……欲を言えば表情もしくは、声に抑揚があるともっと親しみやすいと少しズレた思考を始め出したので、一旦考えるのを止めて聞かれている質問に返答を返す。

「うん! お願い」

 と言うアタシの台詞に被せるように、水月が吠えてきた。

「無視するなですぅ! 水月をミソッカス扱いは良くないのですぅ~」

 はい? 無視してないと思うのだが? ただ、話しを切り上げただけだと思うのだが……そう思っていたのはアタシだけなのか、火月の顔色を窺って見ようとして意味が無いと思いなおす。どうせ、無表情なのだから何かを読めるわけではないしね。

 それよりも……

「いや、別に無視してないよ? ただ、出来るだけ早めに麒麟様からの伝言を聞いてしまいたい。と思っただけの話しだよ」

 と水月に答えてから、火月に視線を戻す。

 律儀に水月に返答を返すのを待つ辺りが、火月の良い所でもあり悪い所でもあるのだが……本人はきっと自覚してないだろうなぁ。と思いつつも、表情には出さない。

「よろしいですか?」

 火月が念を押すように、確認を取ってきたので肯定の意思を伝える。

「うん、お願い」

 そんなに念を押すような事を言い使って着たのだろうか? などと思案していると、火月が内容を伝えてきた。

「では、『可愛い、可愛いワタシのスイレンちゃんへ 先ほどぶり~! さっそく本題だけど、時計塔に登る暇があるんだったらさっさと屋敷に来なさい! 以上。 追伸:今焚いている(こう)が切れるまでに来なかったら……わかるわよね?』以上となります。」

 いやいや、以上になります。じゃないよ! 麒麟様の所を口頭で述べている時だけ抑揚があったように聴こえたけども……抑揚をつけようと思えばつけられるのか? あるいは、その部分は麒麟様本人だったりするのかもしれない。寧ろ、そうであってほしいくらいだ。火月が抑揚を付けて喋れるんであれば、勤めて平坦に喋る必要などないのだから! そんな推察を思考している時間すら今はおしい。と思い至って、即行動に移る。

「水月! 火月! アタシは急ぐから、またね!」

 と二人に別れを告げ、麒麟殿に急ごうと階段に向かうアタシの動きに合わせるように二人が着いてきた。

「? 二人共、アタシに着いて来なくてもいいから、自分の用事に戻りなよ」

 先ほどと立ち位置が逆になったので背後を振り返る形になったが、水月と火月が何かしらの用事を頼まれているはずなのだから。今は、アタシに伝言を伝えたのだから自分達の仕事に戻ればいいだけの筈である。なのに、何故? と思っての問いだったのだが、思いがけない回答が返ってきた。

「私達の仕事はもう、済んでいます。」

「そうなのですよぉ~」

 その言葉は思いがけないモノだったので、その場で暫し固まってしまっていた。

「そういう事ですので、ご一緒しますよ。スイレン様」

「一緒に行くのですぅ~」

 言うやいなや、二人にそれぞれの手を引かれて再び室内に入った所で我に返った。

「そういうことなら、いいけど。悪いけど、着いて来れなかったら容赦なく置いていくからね!」

 何せ、お香が焚き終わるまでに麒麟殿にある麒麟様の部屋に着かなくては行けないのだから。なりふりなんか構っていられない! 間に合わなかった場合の事を思うと余裕などない。気合で間に合わせる! 絶対に。

「望むところです」

「望むところなのですょ~」

 二人の合意が得られたので遠慮なく、全力疾走した。

 まぁ、疾走という言葉より現在の位置から飛び降りたという言い方の方が正しいだろうけど。そんな、なりふり構わないアタシの行動が予想外だったのか、二人からは奇しくも同様の言葉を受ける事になった。

「「スイレン様ぁ~、それは、いくらなんでもあんまりですよぉ~」」


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