Ⅰ
色々指摘を受けたので改稿しました!
具体的には前回までのⅠ話とⅡ話を合体させて、誤字脱字などの修正+一部付けたししました。
青い海、青い空、そして大小5つの島々、其処に住まう人々――――
ソレが、スイレン事アタシの世界――――
ずっと……ずっと……変わらないと思っていた――――
だけど、春の花見の席での一言がアタシの世界を変えてしまうなんて――――
「え~っと、突然だけどワタシ結婚しま~す。 そして、『白虎』を辞任させて貰います♪」
以上! という言葉を主様が発して、さっさと着席して料理に手を伸ばしたり酒を煽ったりしだした。
まったく、空気を読むという事をしないその行動に、オロオロするのは彼女の側近を勤めるカスミだけである。他の者は、皆一様にぽかーんとしている。うん、ソレが正しい反応だよ。
「ちょ、ちょっと主様! いきなりそのような事を仰らないで下さい!」
と、カスミが先ほどの問題発言をした人物に語りかける。
「えぇ!? 別にぃ~ワタシが『白虎』やめても困らないじゃない」
いや、すごく困ります。えぇ、何故なら次の一言がアタシの予想通りなら面倒なことになること、この上ないのですから!
「ワタシの代わりにぃ~、カスミちゃんかスイレンちゃんが『白虎』になればいいだけだしねぇ~」
ほら、やはりこっちにまでお鉢が回ってきた……アタシは、自由気ままにフラフラっとしていたいのに、無理やり統治者の側近にさせられ、あれやこれやと、こき使われてきたのである。
「あの、お言葉ですが、アタシは『白虎』になるつもりありませんから! カスミがなるというのであれば、喜んでコレまでと同じく、側近として支えます」
うん、我ながら完璧な逃げ道を見つけたものだ。これで統治者なんって面倒なモノやらずにすむ。
良かった、良かった。と、思ったのもつかの間……
「いいえ、私よりもスイレンの方が『白虎』に相応しいと思います! 彼女が『白虎』になるのであれば、側近として支えます」
ええぇぇ……アタシのナイスなアイディアをそっくりそのまま引用とか、相変わらず外見はおとなしそうなのに中身は腹黒いんだから!
カスミのヤツ、余計な事を……フリーズ状態から脱した面々が話し合いをはじめる。
「ふ~ん、チカゲちゃんが結婚を気に『白虎』を引退するのは分かっていたことだしねぇ……」
「そうね、でも引退はいいとしても次の『白虎』は決めなくてはならないわよ?」
「そうじゃの~、なんぞ妙案でもあれば解決するんじゃがのぉ~」
「妙案……無くは無いけど?」
え? 何か、嫌な流れになってきたなぁ……
このままバッくれようかなぁ。でもなぁ、バッくれたら自分が不利な状況になりそうだし……うーん。
「ホムラ~、その妙案って何なの?」
あぁ、水神様! どうか面倒なことになりませんように!
「うん、今年の夏にやる【水神祭】の舞手は今年、西島の『白虎』の管轄だから、舞手に選ばれた方が『白虎』になるって事で、いいんじゃない?」
……め、面倒くさ! 水神祭の舞手と云えば、大観衆の前で舞踊を披露しなくてはならない。
しかも独特な舞なので練習も必要不可欠なワケで……やりたくないなぁ。
「ふぅむ、なら全島挙げて投票にするかのぉ~」
完全に面白がってる……まぁ、各島の統治者は一癖も二癖もある兵ばかりなのである。
「そうねぇ……二人とも人格的には問題ないし、後は人気で決めるのも、一つの手かしらね」
そ、そんなので決めていいのかなぁ?
納得しない人達の気持ちを尊重すべきだと思う!
「じゃ……決まりでいい?」
えぇ~、そんなのでいいの!?
「チカゲちゃん、そういう事になったけど異論はある?」
主様! どうか、お願いします!
「異論? あるわけないよ~。 あぁ、結果が楽しみ♪」
あぁ、こういう人だった! すっかり忘れてたよ!!
「じゃ~、この件は決定ね! 詳しい事は後日張り紙や号外作って配らせましょう!」
パチンと両手を合わせて音を一つ鳴らした。
コレでこの件は終了という事らしい。
「ふふふ♪ スイレンちゃんも、カスミちゃんも可愛いから、どっちが『白虎』になっても楽しくなりそうね」
勘弁してほしいなぁ……カスミはどうか知らないけど、アタシはどうも麒麟様は、苦手なんだよねぇ。
「カグラってば、可愛がりもほどほどにしなさいよ」
青龍様は青龍様で、爆弾抱えてるからいつ爆発するか、ハラハラするし。
「あら? ミヤビってば拗ねてるの? 可愛いわね!」
何、トンチンカンな事口走ってますか! 麒麟様。
「ミヤビのアレは拗ねてるんじゃなくて、普通に注意だと思う」
朱雀様は、平坦な喋り方だから感情が今一わからないんだよなぁ……
「かかかっ! 若者達はいいのぉ~」
玄武様は、のらりくらりとしていて、意外と思慮深い所があるのである。
「スイレン! カスミ! まぁ、そういう事だから頑張りなさいな」
主様そりゃ~ないですよ。トホホ……
「よ~し! 今日はとことん飲み明かすわよ~!!」
と、麒麟様の号令に一同で合意の意思表示を示す。
えぇ、もうこうなりゃ自棄だ! 成るようにしか成らない。
――――翌 朝――――
自室で目が覚める。
何だか、えらく長い夢を見ていたような気もするけど……駄目だ思い出せない。
床に伏せたまま思考を巡らせていると、頭に鈍い痛みが走る。
どうやら、酒の飲みすぎで二日酔いになっているらしい……
寝床の近くに置いてある水差しから湯呑みに水を並々注ぎ入れ、一気に飲み干す。
「ふぅ~」
寝床から起き上がり、寝巻きから部屋着へと衣替えをすませ食事をとるべく食堂に向かう。
使い込まれた木の床の感触が心地良く、調度品も質素でありながらどこか気品を感じさせる品々でそろえられている。
朝ごはんの匂いが、鼻腔をくすぐりそちらの方へ、気持ち早足で向かう。
途中で、家の女中達とすれ違うのだが……正直に言って。あんまり好きじゃないんだよねぇ。人の顔をじろじろ見てくるのである。今日は、いつもにまして視線を感じるなぁ……と思いつつ食堂に向かっていると……
「おはよう。 スイレン」
向こう側からカスミが姿を現した。
こうして、何気なく話しかけてくれるのは、カスミを含めて数人程度しか居ない自分に比べ、カスミは合う人ほとんどから挨拶をされるのである。
「おはよう。カスミ」
眉間の辺りに手を当てて、挨拶を返すアタシの様子に気遣わしげな声でカスミが話しかけてくる。
「スイレン、大丈夫!? 二日酔い?」
気を遣わせて申し訳ないが、この痛さはどうも苦手なのだ。
「うん、まぁね」
どうにかソレだけを返したけど、自分の声ですら頭に響く。コレは、朝食済ませたらさっさと、寝るに限るかねぇ。
「そういう、カスミは平気そうだねぇ~」
羨ましい限りである。
「そうでもないよ? ちょっと頭ズキズキしてるもの」
額に手を当てて痛がる素振りを見せる。
「そうなの?」
「えぇ」
自分だけでは無いのか……まぁ確かに、アレだけ飲めば当然と云えば当然なのだけど……
「さっと、朝食済ませて一眠りしようか?」
何気なく言った言葉だったのだけど……
「そうね、スイレンが添い寝してくれるのならぐっすり眠れそう!」
などと言って、目をキラキラさせてくるもんだから、つい否定してしまう。
「いや、誰も一緒の布団で寝ようなって言ってないよ?」
その言葉を聞いて少し残念そうにしながら……
「もう、冗談よ! スイレン」
うーん、本気だったのかな? まぁ否定しなかったら実現してたんだろうけど、別に嫌ではないんだよねぇ。
そんな、他愛の無い会話をしながら歩いていると、食堂の入り口の手前に一枚の張り紙に目が留まった。
「【水神祭】の舞手は果たしてどちらの手に!? スイレンVSカスミ!! 投票締め切りまで後○×日」
…………し、仕事早いなぁ。昨日の今日でもう印刷まで上がってるって! 二人で顔を見合わせていると、方々(ほうぼう)から声が上がる。
「きゃー、スイレン様とカスミ様よ!」
「あら? 本当!」
「どちらが舞手になられるのかしら?」
「いっそうのこと、舞手を二人にして、お二人の舞が見たいわ」
「ソレ、いいわね」
「でも、舞手は毎年お一人ですものねぇ……あぁ、どちらに投票したらいいのか迷います」
「えぇ、私も」
「あら? 私はスイレン様、一択よ!」
「私はカスミ様、一択です!」
う~ん、とんでもないことになりそうだなぁ……面倒なのは嫌いなのに。
張り紙の内容に盛り上がってる一団を無視して、自分の朝食を済ませてさっさと食堂から逃げよう! そうと決まれば……さっさと選んでしまおうと、歩きだそうとしたらカスミがすっと寄って来た。
「ところで、スイレン。 その寝癖はいただけないわよ」
と、言ってアタシの髪を櫛で梳かし始めるので、動くに動けなくなった。
「まったく、スイレンは可愛いんだから、もう少し身だしなみに気をつけて貰わなきゃ! 大体、その格好もね……もう少し女の子ぽいの着ればいいのに」
その台詞に、うんざりとした態度を隠さずに答える。
「アタシは可愛くない! 可愛いっていうのはアタシじゃなくてカスミみたいな子に使うのが正しいんだよ。それに……女の子ぽい服ってどうも動きにくくて好きじゃないんだよ」
と、言って自身の服装を見やる。
男物のズボンに上半身はサラシを巻いて外装を一枚羽織るといういつものスタイルである。海に流されてきた書物によればトッコウフクと言うらしい。
動きやすいし、気に入っているのでこのスタイルがもはや定番なので、違う服を着ると物凄く違和感を覚えるのだが、麒麟様やカスミの手によっていつぞや女の子、女の子している服を着せられた時は……もう可愛がりが半端じゃなかった……あぁ、嫌な事を思い出したよ。
髪を梳かしている手が止まったので、カスミの方を見やると何やら頬を赤めている。
「も、もう、スイレンってば! か、可愛いだなんて……」
その後にも何やら言っているが、聞き取れないほど小さい声でぶつぶつ言っては一人、キャーキャーと言っている。
何か変なコト言ったかなぁと、思案していると現実に戻ってきたカスミにせかされる。
「さぁ、とっとと朝ごはんをすませちゃいましょう。 ほら、スイレン」
ぐずぐずしていたのはアタシではなく、カスミなんだけど……何か理不尽だなぁ。
まぁ、確かに寝癖のまま歩いていたのはアタシなんだけど……にしてもマイペースというか、何というかすっかりカスミのペースなのである……
まぁ、いつものコトなんだけどね。
「はいはい、今行きますよ~っと」
と、適当に返事を返すと鋭い一声が飛んできた。
「『はい』は一回よ!」
「はい」
やれやれ、面倒くさい。
飲みすぎたので、ミソ味のスープと野菜中心のメニューを選び空いている席に腰を下ろす。
「いただきます」
と、声に出してから野菜サラダから手をつける。一口、口に入れ租借しているとカスミが自分の分を持って隣に座り擦り寄ってきた。
「もう、スイレン! 自分が決まったからって先に行かないでよ」
ぷくぅ~、と魚のフクの様に頬を膨らませながら、食べ物を飲み込んでから答える。
「あぁ、悪いね。 アタシ、これ食べたらまた寝るから」
二口目を口に運ぼうとして野菜を持ち上げたら、横からさらわれた。
もぐもぐ♪ と楽しげに租借している……だが、この野菜サラダはアタシのだ!
「ねぇ、カスミ」
ゴックンと飲み込んでから、いい笑顔でカスミがこちらを向く。
「なぁに? スイレン」
甘い響きの声に、額の辺りの血管がピクピク動くのを紛らわせる為、手をあてカスミを睨み付ける。
「この野菜サラダは、アタシが持ってきたんだけど?」
その言葉を聞いたカスミが、のほほんとした顔をして答える。
「えぇ、そうでしょうね。 だから?」
あぁ、イライラする! 絶対わざとだ!!
ここで怒ったら相手の思うツボなんだけど……
「何故に、横から掻っ攫って行くのさ?」
両目をパチパチさせた後、ニィと口元に笑みを浮かべた。
「だって、おいしそうだっただもん!」
本当、いい笑顔だなぁ……っておい! それは理不尽でしょうが!!
怒るのも面倒になったので、すっとカスミの方に野菜サラダの器を差し出す。
「なら、好きにすればいいじゃん!」
すると溜め息を吐いて、かぶりを振りやれやれといった態度で返答がなされる。
「もう! わかってないわねぇ……スイレンが食べさせてくれるから美味しいんじゃない!!」
あはは……食べさせてないし! 奪われただけだし!どの口がいいますか!
まったく、カスミといい麒麟様もいい性格してるよ! 本当。
黙っていたら二人とも美人なのに、どうして喋るとこう残念になるのか……はぁ~。
「ねぇ、ちょっとスイレン! 聞いてるの?」
ゆさゆさと人の腕をゆすりながら尋ねて来きたその動作に我に返る。
「あぁ、聞いてるよ。 食べさせたんじゃなくて、奪って行ったんでしょうが!!」
アタシのツッコミを意に介さない態度……
楽しげにクスクス笑いながら自分の食事を進めて行く。
「もう、硬い事言わないの! ほら、スイレン早く食べないと寝る時間なくなっちゃうわよ?」
その言葉を受けて自分の食事に戻る。
はぁ、アタシ的にはもう少し心静かに食事をしたいのだが、カスミが居ると中々難しい。
それから、無事に食事を終えて自室に戻り再び眠りについた。
再び眠りから目が覚めるともう夕方になっていた。
あぁ、結局今日は何もしないで終わったなぁ……まぁ、たまにはこんな日もあるさね。
うーんっと、一つ伸びをして寝床から起き上がる。さて、相棒の様子でも視に行ってみるかね~。
住まいの裏手には、それほどの大きさではないが山がある。
西島は、他の四島に比べて自然が多く残っている。四季折々の季節の表情がとても愛おしい……
勝手知ったる山を自分のペースで登る。さて、今日はどの辺りに隠れているのかなぁ……
相棒は、アタシ以外の者が近づこうとすると姿を晦ませるので、見つけたら良い事があると、全島の子供達の間で噂されているそうだ。
鬱蒼とした森を抜けると小さい川に出る。普段なら、子供達の遊び場なのだが夕方という時間帯というのもあり今は、誰もいない。
「あっれ~? 多分水でも飲んでるだろうっと思ったのに……」
頭を掻きながら一人ごちる。辺りを見回してみるが姿が見えない。うーん、ここに居ないとなると頂上かな?
川を後にしてさらに上を目指して山を登る。いつしか、地面が土からゴツゴツとした石に変わり頂上が近い事を知らせる。一気に駆け上がると、ソコに相棒が居た。
「あぁ、居た。 探したよ~ハクア!」
声を掛けるとハクアはこちらを向き、すぐにふぃっと元々見ていた方に視線を戻す。
そんな動作が可愛らしい、と思ってしまう。
相棒のハクアは、この世界の絶滅危惧種で『ホワイトファング』と呼ばれる大型野獣である。
ホワイトファングは本来、寒い地域の標高の高い山にしか生息しておらず、別名『古代の王者』『白き悪魔』などの名前で呼ばれる。けして、人には懐かない孤高の獣の王なのだが……どういうワケか、スイレンにだけは懐いたのである。
今、こうしてアタシが生きていられるのは、ハクアのおかげでもあるんだよねぇ……
ハクアの毛並みをなでながら、遠い昔の思い出に思いをはせる。
アレからもう数十年も過ぎてるんだねぇ ……
そう、アタシが生まれた里を追われたあの日から…………
お読み頂き、ありがとうございます。
おおよそ、一週間ペースで更新していくので、見捨てないで下さいm(_ _)m
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