9.アニとイモウト
〜兄キリアン視点〜
今日、お母様そっくりな「妹」という存在に衝撃を受けた。
自己紹介もそこそこに自分の部屋に逃げ込む。
ーー なんだ、あいつ……お母様が子供になっただけじゃないか! あんなに似ることとかあるのか?
僕は全身の血が沸騰した。
心臓の鼓動がどくどくとうるさい。
ピンク色の巻き毛、緑色の大きな瞳、小さな唇。
その夜、僕は心臓が跳ねて、あまり眠れなかった。
翌日の朝。
ーー めっちゃ睡眠不足。原因はあの子だろう。
でも、起きなきゃならない。11歳の僕は忙しいのだ。
寝ぼけながら、僕は朝食のためダイニングに足を運んだ。
「……キリアンお兄様、おはようございます」
「……おはようございます 父上、ナ、ナユタ……」
ーー やはり、僕に妹ができたのは夢じゃなかった!
妹の「ナユタ」が軽く髪を結い上げ、ワンピースを着用し、席にちょこんと座っていた。
僕は昨日と変わらず、心臓の音がうるさい。
(なんだろうか、この恐ろしくかわいい生き物は! )
「お兄様」という単語をたどたどしく口にした様子に、僕まで照れてしまう。
(僕の妹か……)
僕はお母様そっくりの妹に、すっかりペースを乱されていた。
「キリアン、おはよう」
ああ、お父様いたのか。
はっきり言って、僕はお父様の存在を忘れていた。
「今日は剣術の稽古場にナユタを連れていって見学させなさい。 彼女は剣術に関しては全く素人だが、なにせ瞬発力や跳躍力が並外れている 。 お互い良い刺激になるだろう」
僕は思わず牛乳を吹き出してしまった。
ーーナユタが女騎士に……? こんな細くて小さな女の子に騎士になれと言うのか? お父様もどうかしている……。 彼女は主君を守る騎士ではなく、僕が守る妹だろう?
「よろしくお願いします、 お兄様」
僕には、彼女から「お兄様」と呼ばれる度に、心臓が悲鳴を上げる毎日が待っていた。
〜妹ナユタ視点〜
私、「リリィ」はシュバルツ家の養女「ナユタ」となった。
8歳の人間の子供。
この国の鳥類は、神様のおかげでどの生物にも化けれる。
年齢とかは、自分で自由に設定はできないけど。
エスト⋯⋯なんとか神とかのおかげだって。
まあ、鳥の仲間は、この力は全く使わない。
だって、他の動物って、翼がないもの。
私だって、その気持ちはわかる。
空も飛べないなんて、不便すぎる!
でも。
私は皇子様を側で守る人間になるんだ。
あんな殺気だらけの環境にいると、いつか皇子様が死んでしまう。
あんなヘボ護衛達に任せてられないわ!
レオンとかいう人間の予定に合わせて、孤児院に潜入し、養女になるまで順調だ。
ただ、義理の兄キリアンという人間は、あまり目も合わせてくれない。
突然妹ができたことが面白くないのかな? 人間って複雑。こんなかわいいリリィ様が妹になったのに!
しかし、皆、自分の姿がレオン侯爵の亡くなった奥様に似ていると驚く。
私はただ「変わり身の力」をつかったら、幼いこの姿になっただけ。ただの偶然。まあ、そのおかげで、即シュバルツ家の養女になれたからなんでもいいか。
私はベッドで寝転びながら、自分の手をまじまじと見つめた。
これが人間の「手」か……まだ慣れないなぁ。
これでリエルオウジサマと手を繋ぐこともできる!⋯⋯違った!リエルオウジサマを守る騎士になれる!
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