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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉


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6/9

6.巣立つ!

 空は澄んだ青空。今日は巣立ち日和。


 リエル第ニ皇子は、リリィが入っている木箱を大切そうに抱えていた。

 側には専属メイドのアリサと護衛一人がついている。


「ここでいいかな?」


 園庭の高い木々が茂っている場所。

 二人が木箱の箱を開けようとした時。


 リエルの瞳には、テオ皇帝陛下、アリシア皇后陛下、へヴァン第一皇子が散策している姿が映った。


 (僕以外の皇家の3人が一緒にいる⋯⋯楽しそう⋯⋯。)


 リエルは箱を開ける手を止めた。

 三人はリエルに気づき近づいてくる。

 リエルは思わず身構えた。


「リエル、朝食は食べたのか?」


 声をかけたのは、テオ皇帝⋯⋯リエルの実父だ。

 優しい穏やかな声。


「はい。食べました」


 リエルは久しぶりに父と会話をするので緊張する。


「その雛⋯⋯育ったのね。」


 木箱から頭を出しているリリィを見て、アリシア皇后は忌々しい表情を見せる。


「はい、もう飛べるので放してやろうと」

「雛一匹救ったからって、あなたの異名はなんの影響もないけどね」


 アリシアはリエルに意地悪く吐き捨てる。

 リエルの表情は曇り、うつむいた。


 ーーはあ? 何、このおばさん! 性格悪っっ!


 とたんにリリィはアリシアに向かって、ピィピィ怒りの鳴き声を上げる。


「な、何? かわいげのない鳥! さっさと放してしまいなさい!」

「まあまあ、鳥は鳴くものだから」


 テオはアリシアをなだめた。


 その時。 


 リリィの目は、アリシアの肩付近に黒い煙のようなものを捕らえた。


 ーー何? 今の?


 そして、同時に恐怖で体の動きが静止。


 ーーこ、怖い⋯⋯に、にげなきゃっっ!!


 リリィは、木箱の窪みに身を隠すようにもぐる。


「あれ、どうしたのかな? リリィ?」


 リエルは、さっきまで元気に羽を広げて鳴いていたリリィの異変に気づく。

 そして、今まで黙っていたへヴァン第一皇子が口を開いた。


「もう皇居に戻りましょう。中でゆっくり3人で話をしましょう」


 彼の言葉に両陛下は頷き、その場をあとにした。



 (僕だけいつも皇家の集まりに呼ばれない⋯⋯。)


 リエルは幼いながらも、この孤独な状況に耐えていた。

 いたたまれなくなったアリサがリエルに声をかける。


「リリィの巣立ちはもう少しあとにしませんか? リリィと一緒にお茶でもしてからお別れしましょう」


 彼は小さく頷き、アリサと一緒にリリィの木箱を抱えながら自室に戻った。


 ※ ※ ※


『リンゴだっけ? これおいしい! 最高!』


 リリィは鳴きながら、元気のないリエルに必死に話しかける。


『どうしたの? あんな失礼なおばさんなんて気にすることないわよ! ほら、リエルオウジサマも食べて!』


 リリィはリエルのケーキ皿の近くに寄り、ピィピィ鳴いて伝える。すると、リエルは少し笑ってリリィの頭を指でなでた。


「リリィ、また絶対遊びに来てね。僕、待ってるからね。」


 すると、リエルの目から伝う一筋の涙。


『何、これ? 水? 目から水が出るの? 人間って。とにかくあのおばさんは失礼だわ! 私のリエルオウジサマに! 』


 リリィは、必死にアリシア皇后を非難する鳴き声を上げる。


「わかった、わかった」


 リエルは微笑みながら、指で涙をぬぐい、リンゴを手のひらにのせてリリィに差し出す。

 リリィは、それをせっせとついばんだ。


 ※ ※ ※


 改めて、リエル第ニ皇子とアリサは園庭に出た。


「リリィ、もう君は自由だよ。飛んでごらん。」


 リエルはリリィを木箱から出して、地面に降ろした。

 リリィは、リエルの顔をじっと見つめた。


 ーーリエルオウジサマ、すぐ戻ってくるわ。私のおうち。私の恩人。私の⋯⋯。


 それから、リエルの肩に飛び乗り、まっすぐ空を見上げる。


 ーーあれが⋯⋯空!! 広い。青い。飛んでみたい。空も巣立つ私を待っているんだわ!


 リリィは羽を必死に動かす。

 すると、小さな体が浮いて大きな空へ向かっていく。

 大木の小枝に飛び乗り、地上にいるリエルを見下すリリィ。

 リエルは眩しそうに、見上げて手を振った。


「アリサ。僕は『不吉第ニ皇子』じゃないよね。雛を立派に育てたよ!」

「もちろんです! リエル殿下はこれから東帝国で立派な皇子殿下になられますよ」

「ありがとう⋯⋯アリサ」


 二人は、空に溶けるように小さくなる小鳥をいつまでも見守っていた。



 ※ ※ ※


『初めまして! リリィっていうの! 今日、巣立ったの。よろしくね。』

『あなた、まさか人間に助けられた噂の?』

『強運ねーー! 巣から落ちたら普通死ぬのに』


 皇居近くの森にあるモモイロノトリのコミュニティに早速加わるリリィ。

 大木の小枝に5羽仲良く並んでいる。


『私はハンナよ。あっちからカンナ、アンナ、ケンタ』

『もっと仲間はいるんだけど、今は4羽だけみたいね。』

『今までは人間に守られてたかもしれないけど。今日から猛禽類やヘビ、哺乳類にも気をつけてね!』


 ピィピィとモモイロノトリ達は、新入りのリリィに情報を与える。


『夜はどうするの? この縄張りで寝る?』

『ううん、私はリエルオウジサマと一緒に寝るから』


 

ここまでお読みいただきありがとうございます!


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