4.私はリリィ
〜〜雛side〜〜
ーー暖かい、ママ、パパ、ご飯は? お腹すいたぁ!
私は体を少し動かす。
ーー生きてる! 私、死んでないんだ! 何か音がする。ママ、兄弟たちの鳴き声じゃない? 何か違う生き物? 敵?
その時。
「口、開けれる?」
優しい声。
何か分からないけど、私のくちばしに触れる。
私は反射的に口を開けて、ピィピィと鳴く。
「鳴いたよ!! アリサ聞いた?」
「はい、まだ安心はできませんが、よく動くようになりましたね!」
「エサ食べるかな?」
また私のくちばしに何か触れる。そのままそれを口に流し込まれた。
ーー何これ!! おいしい!! 最高!!
それから、私はお腹いっぱいになって、そのまま窪みで丸くなった。
「かわいい。僕は君が巣立つまで一緒にいるからね。」
ーーなんだろう⋯⋯安心する。ママの声かな?
私はそのまま寝てしまった。くぼみは、とても気持ちよかった。
※ ※ ※
「あ、ウンチする」
「え? こんなにすぐ?」
「そうなんだよ、僕も初めて知った」
何? ママと違う声だわ! 別の生き物がいるの?
レディのお通じを見るなんて変態に違いない!
ママ以外見ないでよ、失礼しちゃうわ!
私は別の生き物にピィピィ鳴いて抗議した。
そして、スッキリした私は寝る体勢に入る。
「僕も命を救えたんだ」
ママの優しい甘い声。私はずっとここにいたい。
もう少ししたら目が開くはず。ママの顔も見れるわ。
楽しみ! きっと美しいモモイロノトリよ!
3日後。
うっすらと目が開いた。
眩しい。
やっと外の世界が見れた。こんにちは世界。
「あ、見て! アリサ! 雛が少し目を開けたよ!」
元気なママの声。
これがママ! ママの顔が見れる!
「かわいい。名前つけなきゃね、アリサ」
え⋯⋯この生き物の顔知ってる。ニンゲンってやつ。 ママはニンゲンなの? でも、きれいな顔だこと。
「落ちてた雛が本当に元気になりましたね、リエル皇子殿下がお世話したからですよ。」
落ちてた? 私が?
そして、私は思い出す。
そうだ。
あの時、私はママにおうちから出されたんだ!
痛くて、寒くて⋯⋯それから、このリエルオウジサマというニンゲンに助けられたの? めっちゃいいヤツじゃん!
私はピィピィ鳴いて、ありがとうをいっぱい伝える。
すると、リエルオウジサマは私の頭をなでてくれた。
幸せ。リエルオウジサマ大好き。
※ ※ ※
今日もリエルオウジサマは、おいしいご飯をくれる。
そして、キリアンという別の人間がまた遊びにきた。
私とリエルオウジサマとの甘い時間を邪魔しないでほしい。
「キリアン、名前ね、『リリィ』に決めたよ」
「リリィ? めっちゃ直球な名前だね」
「そう、古語で『かわいい』っていう意味。ねえ? リリィ?」
名前? 私の? リリィってつけてくれたの?
私は嬉しくって、ピィピィ鳴いた。
すると、リエルオウジサマはお腹空いていると誤解して、またエサをくれる。
お腹いっぱいなんだけど。
「だいぶん羽が生えたね。種別はわかったの?」
キリアンとかいう人間が、リエルオウジサマに質問した。
「たぶん『モモイロノトリ』だって」
「へー、全身ピンク色の国鳥じゃん。東帝国にしかいない鳥。そんなキレイな小鳥になるの? これが?」
このキリアンってやつは相変わらず失礼なやつだ。
私の抗議の鳴き声をお見舞いしてやる。
「何? 急に僕に向かって鳴きだしたんだけど」
「リリィはかわいいよ。キリアンが失礼なこと言ったね。リリィは僕の大切なかわいい雛だよ」
そして、またリエルオウジサマは、指で私の頭をなでた。
ああ、幸せ。
「ねえ、リエル殿下、リリィって面白くない? 羽で顔を隠して照れてるような仕草するんだけど」
「リリィはきっと照れてるんだよ。僕のこと好きなんだ! 僕もリリィ大好き!」
リエルオウジサマが私を好き? 私を?
「リエル殿下、リリィの体全体赤くなったよ、本当に言葉理解してるかも。なんかバタバタしだしたし」
※ ※ ※
リエルオウジサマとキリアンという人間がいなくなった。
下僕(メイド)達が、テーブルの上を片付けている。
「リエル殿下とキリアン様は本当仲が良いのね。微笑ましい」
「キリアン様の母親のナーシャ様が、リエル殿下を実の子供のように可愛がっていらしたから」
「殿下はお母様のマリアン妃殿下も早く亡くされたし、ナーシャ様まで⋯⋯本当にお可哀想だわ」
なんだか人間の下僕達がおしゃべりしてるわ。
鳥もおしゃべり好きだけど、人間もよくしゃべるわね。寝れやしない。
「ほら、リエル殿下は『不吉第ニ皇子』とか言われてるじゃない。今回も皇居内で身元不明の男が殺されちゃって。それに殿下を護衛するナーバル卿もいなくなったんだって!」
「ええ? またぁ?」
「もう7人皇居内で殺人事件が起こって、直後にリエル殿下の使用人が一人ずつ消えてるのよ! おかしくない?」
「マリアン妃にナーシャ夫人に⋯⋯周りの使用人まで。リエル殿下はお優しい愛らしい方なのに」
「怖いわ、殿下になるべく関わらないようにしないと」
ーーはあ? なんで誰かが死んだらオウジサマのせいなの? バカじゃない?
私はリエルオウジサマを悪く言う下僕達をピィピィ鳴いて非難した。当たり前だが、言葉が通じない。
「どうしたのかしら? 急に鳴きだして。お腹すいたの?」
「リリィはね、リエルオウジサマの給餌しか受け付けないのよ。変わってるでしょ?」
※ ※ ※
なんか羽がむずむずする。飛ぶ練習しなきゃ。
羽をバタバタしていると、アリサという人間の声が聞こえた。
「もう少ししたら、巣立つかもしれませんね、リエル殿下」
「寂しいけど、僕も親代わりだから⋯⋯たまに会いに来てくれたらいいけど」
もう、毎日来る。決定。
リエルオウジサマってあれでしょ。人間の「イケメン」っていうカテゴリーでしょ。
だって、顔を見るだけでドキドキする。
どれだけ高く遠くに飛べても、必ずここに帰ってくるわ。
ここは私のおうち。
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