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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第ニ章 騎士として

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14.7年後、小鳥が騎士になりました


 7年後。

 ナユタ15歳。

 キリアンと共に、父レオンの従騎士になっていた。


「ほら、立ちなさい! もう降参なの?」


 ナユタが皇室騎士団の鍛錬場で、同期の騎士たちを圧倒している。今も、尻もちをついている少年騎士の鼻先に剣先をつきつけていた。

 倒れている同期の少年従騎士達は、参りました、と敗北を認める。


「無理だよ、どうやっても動きを読まれる⋯⋯」

「もう跳躍力とかのレベルじゃない」

「どうなってんだよ!」


 ガタイの良い男の若い従騎士達は、ナユタに翻弄され肩で息をしていた。

 とにかく、彼女は反射神経が超人的。

 同世代の騎士は全く歯が立たない。

 腕力では勝てるかもしれないが、全てかわされるので話にならなかった。

 その様子を父レオンと兄キリアンが見守る。


「私の目に狂いはなかったな。ナユタは東帝国一の騎士になるぞ」


 父のレオンは満足そうに微笑んだ。


「しかし、腕力はどうしても男に劣りますよ」

「それをカバーできる瞬発力と跳躍力があるからな」


 今や剣術だけではない。

 勉学も優秀だし、芸術面にも長けている。

 彼女に婚約嘆願書が山のように送られてくる毎日。


「本当に血を分けた実の娘だったら⋯⋯」


 思わず、レオンは愚痴をこぼす。

 ナユタが実の娘だったら、自分に再婚を促す人間なんていなくなる。

 ナーシャを失って7年経ち、レオンも39歳になった。

 しかし、まだ自分にも婚約嘆願書が届く。

 それだけ、シュバルツ侯爵家は、全国民から直系の女児を熱望されているのだ。

 不意に、レオンはナユタを見つめる息子のキリアンに目をうつす。


 ーーキリアンも18歳。早く良い縁があれば⋯⋯。


 一方的に、レオンは実の一人息子キリアンの婚姻に期待を寄せる。

 しかし、自分が楽になりたいからといって、子供達が犠牲になるのは話が違う。

 自分とナーシャのように、生涯思い合える人と幸せになることを願っていた。


 その時。


「レオン閣下、キリアン、今日はここで練習しているの?」


 リエル第ニ皇子の声。

 二人が振り向くと、鍛錬用の服を来たリエルが微笑んでいた。


「リエル殿下にご挨拶いたします」


 二人はリエルに頭を下げた。彼に気づいた鍛錬中の従騎士達は、一斉に頭を下げる。

 その中に、一際耳まで赤くした背の低い少女がいた。


 ナユタだ。


「見てみろ、とたんにナユタが腑抜(ふぬ)けになった」


 レオンは、その可愛らしい変化を茶化しながら、キリアンの方を向いた。

 すると、切なそうな彼の横顔が目に映る。


 ーーまさか、キリアンが? ナユタを?


 まさかな、とレオンは疑惑をすぐに否定した。二人は実の兄妹のように憎まれ口しか叩かない。

 しかも、ナユタはリエル皇子に幼い頃から想いを寄せているのは明白だ。それをキリアンだって知っているはず。

 本人はバレてないと自負してるようだが、ナユタのリエルへの想いは騎士団で知らない者はいなかった。


「リ、リエル殿下にご挨拶いたします」


 ナユタはダミーの剣を選んでいるリエルに背後から話かける。


「ああ、ナユタか。相変わらず、若い騎士達をいじめてないか? お前はもう正規の皇室騎士団の練習に加わったほうがいいぞ」


 リエルは、ナユタに忠告する。


「だって、私はリエル皇子の専属騎士希望ですよ。従騎士として、専属騎士選定大会にまず出ないと」


 その言葉を聞いて、リエルは一気に顔が高揚する。


「へヴァン兄様の専属騎士の方が地位は上だろう?」

「はあ? 私はリエル皇子が良いのです!」


 ナユタの声は、鍛錬場中に響きわたり、一瞬静寂になる。


「⋯⋯もう、お前は休め。僕はキリアンと稽古をする」

「な、なぜ? ナユタがお相手をします!」

「お前はいつも僕相手だと一瞬で負けるじゃないか」


 リエルとナユタは、二人で顔を赤くしながら怒涛の会話を繰り広げている。


「見てみろ。また、ナユタがリエル殿下を目の前にして、フニャフニャになってる」

「今なら勝てるな⋯⋯」

「まあ、リエル殿下に惚れない女はいないだろ。優しいしスマートだし」


 二人を遠目で見ながら、若い騎士達は口々に噂をする。

 そして、皆、口には出さないが、リエル皇子の異名は知っていた。


「不吉第ニ皇子」⋯⋯この異名だけは、何年経とうと貴族の間では消え去ることはなかった。

 そのためか、あまり彼らはリエルとは必要最低限の会話しない。

 レオンはその様子を見て思う。

 この状況は悲しいが、若い騎士達⋯⋯子息達にとって、噂に反する行為はとてつもなく勇気がいることだろう、と。


「キリアン、リエル殿下の相手をしてきなさい」

「はい、お父様」


 キリアンもリエルの立場に心を痛めていた。


 (不吉第ニ皇子、か。殿下には、いつまでこの心ないあだ名がついて回るんだろう。)


 せめてシュバルツ家の三人はリエルの味方でいよう、とキリアンは幼い頃から決めていた。


 リエルとナユタの元に、キリアンも合流する。


「お兄様は毎回ずるい。いつもリエル殿下と一緒に稽古して!」

「お前が殿下相手だと何もできなくなるからだろ!」

「だって⋯⋯殿下に襲いかかるとか⋯⋯」


 ナユタは、何故か顔を赤くして目線をそらし照れている。


「なんか使う単語がおかしいが⋯⋯お前はお父様と一緒にいろ。行きましょう、殿下」

「あ、ああ。頼む、キリアン!」


 二人はナユタから逃げるように離れた。


「はあーー、つまんない!!」

 ナユタは、父のレオンの元へ退屈そうに駆け寄る。


「お前は本気でリエル殿下の専属騎士になりたいのか?」

 レオンはナユタに真顔で問いかける。


「そりゃそうですよ! そのために、人間になったのですから!」

「ん? 人間に?」

「あ、ああ、いえっ! 騎士になったのです!」


 ナユタは思わずリリィとしての発言をしてしまっていた。

 そして、レオンはそんな娘を少し哀れんだ。


 ーーリエル皇子は早くも婚約者の選定に入っていると聞く。アリシア皇后が希望されてるとか? ナユタはその候補からは外れるだろう。出自が「孤児」というのは、どうしてもついて回ってしまう。


 レオンは、ナユタの横顔を見つめる。

 すると、彼女はリエル皇子を食い入るように、ギラギラと凝視していた。


 (怖いな⋯⋯恋する少女は鬼気迫るものがある。)


 レオンはナユタの刺すような視線に若干引いていた。

 一方、ナユタは父が見ていることなど全く気づかず、リエルに視線を向け続けている。


(はあ⋯⋯リエル皇子様カッコいい⋯⋯光る汗も尊い )


「⋯⋯っっ!!」


 一瞬。

 声にならない恐怖に襲われる。


(な、なにっっ! 今の⋯⋯! )


 彼女は背後⋯⋯そして、さらに上から殺気を感じたのだ。


 そこには、城のテラスから鍛錬場をアリシア皇后とへヴァン第一皇子が見下ろしていた。



 


最後までお読みいただきありがとうございます!


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