科学部へようこそ! 3
翌日の放課後
化学室の扉を開けると、すでに科学部の面々が集まっていた
白衣の霞が関先輩は、黒板に何やら図を描きながら振り返る
「お、阿部くん
待ってたよ」
黒板には大きく書かれた文字
『呪い再現実験プロトコル ver1.0』
…なんだよこれ
「まずは昨日聞いた“呪いの儀式”を、科学的に分解するところから始める」
霞が関先輩はチョークを指で回しながら、黒板を指した
「呪いの構成要素は大きく分けて三つ
① 対象の特定
② 儀式の行為
③ 実行者の心理状態」
「心理状態…?」
「そう
呪いは“念”だの“怨”だの言われるけど、要は心理的な作用が大きい
だから、まずは“心理的影響が物質に作用するか”を検証する」
「物質に…?」
「そうだ」
水天宮さんが、スマホをいじりながらぼそっと言う
「昨日言ってたオカルト農業のやつっすね」
「うるさいぞ水天宮
これは立派な科学だ」
褐色女子が机に並べられた紙コップを指差す
「これ、全部種?めっちゃあるけど」
「発芽率の統計を取るにはサンプル数が必要だからね」
霞が関先輩は胸を張る
「阿部くんには、昨日と同じように“呪いの儀式”を再現してもらう
ただし、対象は人じゃなくて、この種」
机の上には、紙に書かれた名前のようなものが置かれていた
『サンプルA』
『サンプルB』
『サンプルC』
「…名前、これでいいんですか?」
「いいんだよ
対象を特定するという行為が重要なんだから」
男前男子が腕を組んだまま言う
「まあ、倫理的には問題ないしな
やるだけやってみよう」
俺は喉が渇くのを感じた
あの日の“呪い”は、冗談半分だった
でも、結果として青砥の弟が死んだ
偶然だと信じたい
でも、もし本当に“何か”があったのだとしたら…
「阿部くん」
霞が関先輩が真剣な目でこちらを見る
「怖いなら、無理にとは言わない
でも、君が知りたいなら、俺たちは協力する」
その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなった
「…やります」
「よし!」
霞が関先輩は颯爽と白衣を翻し、机の上の紙と種を整え、黒板前の壇上に上がる
「では、呪い再現実験・プロトコル ver1.0・第一段階!
“対象の特定と儀式の再現”を開始する!」
手のひらを高々と上げ、またあのフレミングの法則の手をさせながら言っていた
俺は深呼吸をして、紙とペンを手に取る
あの日と同じように
あの朝方と同じように
ただし、今度は“科学”の目が見ている




