それは偶然か、それとも…
朝、眠い目を擦りながら、寝ぼけ眼で階段を降りる
はあ
飯食って、着替えて…
リビングのドアを開けると、仕事に出かける準備をしていたらしい母と目が合う
でもその顔は俺を見るなり、神妙そうな表情に変わる
「ねえあんた
青砥さん家の弟さん亡くなったらしいじゃない」
え…
心臓が高鳴る
起き抜けの目が冴え渡る
「マジ…で…」
「うん
新聞に載ってたよ」
と言った母の目線の先には、テーブルの上に雑然と置かれた地方新聞
そっと持ち上げて見ると、直ぐに「訃報」の字が目に入った
色々な人の名前や年齢が載っている中、目に留まる文字
青砥…
先ほどから鼓動が早い胸
死んだ…
青砥…の弟が…
嘘だろ…
新聞をもう一度よく見るけど、その文字は間違いなく…
もしかして、あの呪いが本当に…
朝方の出来事が蘇る
でもあんな、いかにも嘘くさそうな呪いで…
偶然が重なっただけだよな
たまたまタイミングが…
でも、偶然にしてはタイミングが良すぎる…
もし
もしあの呪いが本当に…なんか由緒ある伝統的な、そう言う系のやつで…
本当に効いたんだったら…
俺は…
学校のホームルーム
青砥の席は空席だった
忌引きと先生は言っていた
「青砥くんの弟さんが昨日…」
「交通事故らしいよ」
「え…マジで…」
「でも詳しいことはまだわかってないみたい」
周りの人の囁き声が聞こえた
青砥の席を眺める
もし青砥だったら…
あの席はずっとあのまま、空席なんだろう
青砥がいなくなれば、目の前から消えれば…
清々すると、心の平穏が訪れると…そう、思っていたのに…
俺は…
もしかしたら、とんでもない事をしてしまったのかもしれない
人、一人の命を…奪っ…
いや
いや、いや…
席から視線を逸らして小さく頭を振って、机の一点を凝視する
違う…
偶然だ
あり得ない…
呪いとか
呪符とか
呪文とか
そんな非科学的な事で人が死ぬなんて、そんな事…
偶然だ、たまたまだ…
その日
気分が落ち込んだまま、いつもより長い様に感じた一日を過ごした
放課後
やっと帰路に着けると思っていた昇降口手前
ふと目に入った、掲示板の掲示物に思わず足を止めた
”来たれ!
霊的現象を科学の力で解明せし者”
「科学部…」
思わず廊下で独り言ちた
霊的現象を…科学で…解明…
そうか
そうだよな
呪いとか、怨霊とか、祟りとか、死者蘇生とか…
そんなのフィクションで、漫画で、アニメで、映画で…
現実にはそんなもん、ありはしないんだ
だから青砥の弟が死んだのだって
呪いのせいなんかじゃ…ない
違う
違うはず…
それを証明するには…
俺は踵を返して早歩きで歩き出す
科学部…
二階…
元来た道を戻り、突き当りの行き止まり、廊下の一番奥
「科学部…」
頭上に記された表札、化学室
それを睨み好据えるように見た後
恐る恐る扉を開けた




