みんな、死ねばいいのに
学校辞めたい
この場から逃げ出したい
毎日、そんな事ばかりが頭をかすめる
教室の隅は、俺の定位置
誰とも話さず、誰にも話しかけられない
それが日常で、別に不満はない
不満はないけど
ただ、時々聞こえる笑い声が俺の存在を否定してくる
昼休み
教室の空気はざわついている
俺はいつものように隅の席で弁当を開けて、スマホを眺めていた
見たい動画も、聞きたい音楽も、気になる情報もない
ただ、何かをしているふりをしているだけ
「おい、阿部
これ、やっといて」
青砥が家庭科のプリントの束を俺の机に叩きつける
「後、掃除当番、代わりな
俺、今日部活のミーティングあるから」
俺は顔を上げない
青砥は、俺が無視したことに気づいていないのか、気づいていてわざと続けているのか、分からない
「お前、暇だろ?
どうせ誰とも話さねえし」
周囲の笑い声が、俺の背中に刺さる
青砥は、いつもこうだ
自分が正しいと思っている
自分ができると思っている
実際は、誰も何も言わないだけなのに
俺はプリントを手に取る
破ることも、返すこともできない
ただ、机の中に押し込む
学校辞めてくれないかな
視界に入って来て欲しくない
目の前から存在が消えて欲しい
それだけでいいんだ
それだけで、心の安寧が保てるのに
放課後、昇降口の前で青砥たちが騒いでいた
俺の顔を見るなり、青砥が言った
「おーい、阿部
明日のプリント、ちゃんと出しとけよ
忘れんなよ」
笑いながら、缶コーヒーを片手に
俺は何も言わず、ロッカーを開けて靴を履き替えた
家に帰ると、俺はスマホを握ったままベッドに沈んだ
疲れた
毎日疲れる
何もかも
もうこのまま…
ドアがノックもなく開く
「いつまで寝てるの
ご飯できてるよ」
母の声と、夕飯の匂いが部屋まで届いていた
気付けば寝ていたようだった
「…あとで食べる」
「は?何言ってんの
洗い物めんどくさいんだから、さっさと食べて」
母はため息をついて、リビングに戻るのかと思いきや、机の上の参考書を指差す
「あんた寝てばっかりで、勉強はしてるの?」
俺は何も言えなかった
「将来どうすんの?
たいした高校にも入れなかったのに、今の高校でトップでも、世間じゃ底辺なの
あんたの頭じゃ普通に受験しても無理なんだから、推薦くらいは取れるように、ちゃんとやってよ」
母の言葉がグサリと胸に刺さる
「あんたにできる仕事なんてたいしてないんだから、進学して、ちゃんとした会社に入らなきゃ、ロクな人生歩まないよ
わかってる?」
わかってるよ
わかってるけど
でも、学校に行くのが、もう限界だ
「それに、今の時代、学歴ないと人間扱いされないんだから
あんた暗いし馬鹿なんだから、せめて学歴くらいないとねえ」
母はそう言って笑っていたけど
俺は笑えなかった
家でも学校でも
居場所がない
逃げ場がない
あいつが、みんな…
みんなが、目の前から消えてくれたらいいのに




