episode 朝比奈
私の名前は朝比奈晴、15歳の高校一年生である、突然だが、私には好きな人がいた、好きな人の名前は、柊一樹、私の幼馴染である海堂湊の親友であり、表面上の性格は冷静沈着、という感じの性格だが、優しさが隠しきれておらず、どこかで優しさが漏れている、この前の部活中もそうだった、私はバスケ部に所属していて、一樹と湊はサッカー部だった、私の部活は県内でもかなりハードな部類で、退部した人が全部活動の中で一位というなんとも嬉しくない一位を叩き出していた、正直かなりきつくて、体罰こそされなかったが、言葉の暴力がかなり多かった印象がある、でもまあ、そういうものだろうと正直なところ、諦めていた、しかし、一樹はそれを許さなかった。一樹は生徒たちに暴言を吐いている顧問の証拠映像をかき集め、教育委員会に報告をした、その期間は約一週間ほどで、とても短い期間であったのにも関わらず、証拠も掴み取ることに成功した、彼だって部活がある筈なのに、わざわざバスケ部のために自分の時間を割いてまで他人を助けようとする、そんな性格が好きだった。
そして、最終的にその顧問は退職、という形になった、まあ、今の時代にそぐわないような部活動の方針だったから、退職は免れないだろうと思ってたけど、まさか本当に行動する人がいるとは思わなかった、結局は皆、口だけで、実際に行動する人は、あまりいない、しかし、一樹は違った、『やると決めたらやる』という考えを持っていて、途中で何かを投げ出すようなことはしなかった、そんな彼が好きだった。
それは部活中のサッカーのプレーにも表れていて、一樹は周りを使い、得点を演出できる、いわゆるチャンスメイカーのようなプレースタイルで、湊は自分から仕掛けに行く、ファンタジスタのような存在であり、二人は性格やプレースタイルこそ違うが、最高のコンビネーションであった、彼は試合中も観客を魅了するようなパス、シュートを持っていて、やる前は退屈そうにしていても実際の試合になると、どんな相手でも手を抜かず、キャプテンのような心でチームを引っ張っていく、そんな彼が…好きだった
でもその想いは、彼の裏切りで終わってしまった。
彼は、その日の前日から、人が変わったようだった、まるで何者かに操られているかのような、彼の口からは絶対に出てこないであろう言葉が出てきていたと噂になっていた、実際に被害に遭ったのは、学年一番の美人で高嶺の花、という言葉がよく似合う早乙女琴音である、しかし、出会うまでは本当かわからない、なんせ彼は、何かと事実を隠すような性格だからだ、さも自分が悪いように嘘を言う、全て一人で抱え込む、そんな性格をしていたのを、私も、私の幼馴染も知っていた、だから、だから、会うまではわからないと、心の底から思っていた、それなのに、彼の口から出てきた言葉は、恐怖そのものだった、その日の放課後、私は人気のない空き教室に呼ばれた
「そ、その、な、何か用?、柊、さん」
自然と私の口から出た言葉は、初対面の人と話すような喋り方になってしまった、その時の彼の表情は、いまいち覚えていない、そして、彼は、私に言葉の暴力を浴びせた、まるで、かつての顧問のように。
「お前ってさ、だせえよな、湊にくっついて、ひっつき虫かよ?、湊も言ってたぞ、『くっつかれすぎてキモい』ってな!」
「ち、ちが、湊がそんなこと言うわけ」
「マジでだせえよな、ひっつき虫みたいにくっついてるお前も、お前みたいなやつの隣にいる湊もよ!」
恐怖で言葉が出なかった、こんなことを言う性格じゃなかった、こんな言葉を浴びせるような人じゃなかった、そんなことを思っていると、彼が近づいてきた、その足取りは、まるで覚悟を決めた兵士のように、まるで何も失うモノがないような人の足取りで、私に近づいてきた
「まあ強いて言うなら、体くらいは褒めてやるよ」
「や、やめ…」
私の肩に、彼の手が触れた、その瞬間に、扉が開いた、まるで、計算してたかのように、彼は笑みを浮かべていて、湊に殴り飛ばされた、彼は、表情を隠していた、理由はわからない、でも、涙を流していた、一滴じゃない、数滴だ、それを、私は見ていた、でも、涙を流していたのに、言葉は、私が想像していたものじゃなかった
「何って、決まってんだろ?、遊んでやってたんだよ、ただちょっと過激な遊びを、な?」
「ふざけるな!、晴がどれだけをお前を信用してここに来たと思って!」
「そっちの事情は知らねえ、そんなことより、こんなことして、お前もタダじゃなすまないぞ」
言葉が出ない、私、裏切られたの?、何年も一緒にいて、沢山遊びに行って、沢山笑い合った、初恋の人に…
すると、早乙女さんが入ってきた、早乙女さんは、私の前に立って、復讐心に満ちたような目つきで
「そうはならないよ、残念だけどね、君の行動一部始終を動画に撮らせてもらったよ、これで湊くんがしたことはチャラだ」
「なっ!?」
掠れた声だったかもしれない、でも、言わないといけないような気がした
「ひいらg、一樹、な、なんで、こんなことを」
「なんでって、理由まで言わねえとわかんねえのか?」
彼が、何かを言おうとした後、湊が遮るように入った
「もうやめろ、一樹、これ以上、晴を悲しませるな」
すると、開いた扉から話を聞きつけた教員が空き教室に入ってくる、そして、彼を複数人で取り押さえた
「最低、一樹…信用、してたのに」
これは、私の本心だった、だって、仕方ないじゃないか、あんなに信用している人に、いや、信用していた人に、最悪な形で裏切られたのだから
そうして、彼は職員たちに連れて行かれた、私は、早乙女さんに話を聞かれて、何をされたか、とか、どんな話を、とか、その前に何かあったのか、とか、色々聞かれたけど、でも、私が彼に恨みを買うようなことをしたのだろうか、そんな覚えは、正直到底ない。
となると、やはり彼に何かがあったのだと、そう考えることしかできない、だって、ありえないじゃないか、一日そこらで、性格が変わるなんて、となると、私がやるべきことは、彼を見つけて、話を聞くことだ、正直、裏切られた直前で、会うのは怖いけど、話さないと、何もわからないまま、彼は姿を消す、だから、見つける、世界のどこにいても、探す、そして、ダメだったなら、その時考えよう、私は、彼のことが好きだから、だから、信じたい、わがままだってことはわかってる、でも、それでも、私は…
「一樹と、もう一度話したい…」




