episode 結衣
私の名前は柊結衣、中学三年生で、兄がいる、でも、実際は血が繋がってる訳じゃない、色々と事情があるらしい、実は、お兄ちゃんとの初対面はあまりよくなかった、何せ、私は男の人が嫌いだ、だから、最初は嫌いだった、でも、それが変わったきっかけがある、中学一年生の時だった
「…お義兄さん、そんなにくっつかないでください、邪魔です」
「…そんなに近付いては無いんだけどな」
そんなことをいいながら、仕方なく一緒に帰ってきた時だった、突然、急ブレーキの音が鳴り響いた
「危ない!、結衣!」
そういいながら、お義兄さんは、私を突き飛ばした、その衝撃で、私は尻餅をついてしまい、怒ろうとして、振り向いた
「ちょ!、何するんですか、私の服が汚れます」
後ろを見ると、とてつもない光景が映っていた、車に引かれ、血だらけで倒れている自分の兄、心臓マッサージをしている運転手、救急車を呼ぼうと必死に行動している助手席の人、その瞬間、全てを理解した
「お義兄…さん…?」
お兄ちゃんは、私を庇って、車に引かれた、私が引かれれば、お兄ちゃんがこんな大怪我をすることはなかったのに…
「ごめん、なさい、ごめんなさい!…」
でも、不幸中の幸いで、入院や足の骨折などはあったが、お兄ちゃんに命の別状はなかった、対応が早かったからなのか、お兄ちゃんが異常なのかはわからないが、なんとか助かり、お兄ちゃんはしばらく病院暮らしになった、それから私は、お兄ちゃんを好きになった、入院してから、毎日見舞いに言ったり、お兄ちゃんのためにお母さんと一緒に料理を作ったり、色んなことをした、と思う、それから、私の兄の呼び方はいつの間にか
「お兄ちゃん、ご飯出来たよ」
お兄ちゃんに、変わっていた。
こんな関係が続いていくんだろうな、そう思っていた、なんせお兄ちゃんは、私の好意には多分こたえてくれない、お兄ちゃんなら『俺はお前を幸せに出来ない』とか『もっといい人探せ~』とかいいそうだ、だから、せめてこの関係が、続けばいいと思っていた、なのに…
学校から電話が来た、らしい、そのとき私は学校だったから、あまり詳しくはしらない、でも、家に帰ったとき、私は、耳を疑った
「お兄ちゃんが、女子生徒に、手を出した…?」
「証拠も、、揃ってる…?」
そういいながら、お母さんは何者かによって撮られた映像を見守っていた、お兄ちゃんが何を言っていたのかなんて、思い出したくもない、そして後日、お兄ちゃんが退学になった、この学校は、わりと進学校であり、一般的に見たら入るのが難しい部類の高校だ、お兄ちゃんは、必死に努力して入った、それなのに、あんな行動で、退学になってしまった、信じられなかった、お兄ちゃんが、そんなことしないって、信じてた、ずっと、ずっと、でも、お兄ちゃんと会って、希望は打ち砕かれた
「…母さん、父さん、結衣、恩を、仇で返して、ごめんなさい」
言葉がでなかった、お兄ちゃんは、続けて
「これ、荷物、車に積んでおいて、いらないなら、その辺に捨てるか、燃やして、俺の部屋も、もういらないから、物置にでもして、俺は、もう家にいる資格がないから、みんなとは、離れ離れになると思う、だから、俺のことは…」
何か言いかけたとき、私は、お兄ちゃんに向かってビンタをした
「いっ、何して…」
「ふざけないでよ!、お兄ちゃん!、私がどんな気持ちで今ここにいるかわかってるの?、お兄ちゃんがそんなことする人じゃないって、信じてた、ここにいる、お母さんも、お父さんも、信じてた、映像を見た後も、これは誰かに脅されたからこんなことをしているんだって、信じてた、なのに、なんで!」
ビンタをした後、お兄ちゃんは全てを理解しているような表情で
「もう、ここを去る、俺のことは、元々いなかった人、として生きてくれ」
やだ、やだ、やだやだやだやだ!!!
また、私の目の前から、姿を消すの?、理由もなく、こんなことをする筈無いって、私、分かってるんだよ?、また、私を一人にするの…?
お兄ちゃんは、足を止めず、その場を去ってしまった、それから、車の中で泣いた、すぐに家には帰れなかった、いや、帰れる筈がなかった、帰ったら、本当の意味でさよならをしてしまう気がして、車の中で何時間も泣いた、お母さんもお父さんも同じ気持ちだったのか、家には、帰れなかった
しばらくして、ようやく家に帰った、一番最初に向かったのは当然お兄ちゃんの部屋だ、お兄ちゃんの部屋に入ると、お兄ちゃんの残り香がした、それと、机の上に紙が置いてあった
「なんだろう、これ」
紙を手に取り、文字を読んだ
『この手紙を読んでる頃には、俺はもう、この家族の一員として、ここにはいないだろう、俺がやったことは、取り返しのつかないことで、やり直しが効かない、もう一回がないことを、俺はした、そのせいで、皆に迷惑をかけたと思う、俺のことは、許さなくていいし、許す必要なんてない、だから、長生きして、幸せになってくれ』
手紙は、ここで途切れた
「あぁ、あああぁ!」
また、お兄ちゃんが側にいなくなった、また、私を一人にした、また、お兄ちゃんは一人で苦しんだ、その痛みを共有させないで、自分だけが辛い状況にして…
「待ってて、さがしにいくからね、お兄ちゃん」
出会ったら、もう一人にはさせない
「ずっと、ずぅっと、一緒だよ、お兄ちゃん」




