悪役にだってなってやる
早乙女琴音、この学年のマドンナで高嶺の花という扱いを受けている、理由は言うまでもない、文武両道、スタイル抜群、まるで漫画の世界のキャラである、何故ここにいるのかはひとまず置いておこう、でも待てよ、これはチャンスじゃないか?、ここで早乙女との仲に亀裂を作っておけば、少なからず高校の新しいクラスメイトには嫌われるとまでは行かなくても距離を取られる筈だ、なら…
「誰だよ、お前、邪魔なんだけど、というか馴れ馴れしく話しかけてくんなよ」
正直、心にくるものがある、俺だって人間だ、それに、人に優しくすることを当たり前に過ごしていたため、ここまで突き放す必要もなかったのではないかと思っている、でも、効果はありそうだ、彼女は、顔を歪めて
「な、なんでそんなこと、初対面だからって、そこまで言わなくったっていいんじゃないかな?、友達になりたくて話しかけてみただけ…なんだけど」
「それが迷惑だって言ってんだよ、いいから、どっか行けよ」
そういうと、彼女は逃げるようにその場を後にした。
ああ、心が痛む、彼女は、ものすごいいい子である、困っている人を見つけたら、すぐに助けるような、素敵な子、あんないい子は、俺には勿体なすぎる、それに、うまくことが運べばあいつに本当の意味での恩返しができる、なら、やってやる、ハッピーエンドのために、最悪のクズになって、なんだってなってやる。
もしこのことが広まれば、あいつが黙っている筈がない、そこで、徹底的にクズを演じる、そこで、俺が晴をいじめでもすれば、湊は晴のこと守る筈だ、そこで、守られたことにより、ただの幼馴染からかっこいい異性に変わるはず...だと思う、まあ恐らく、晴は湊のことを異性として意識しているだろうが、確信はない、それに一つ問題がある、それは、彼女のメンタルをズタズタにしてはいけないことだ、もしかしたら、最悪の場合、男性恐怖症になるかもしれない、そうなったら、湊とも話せなくなる可能性がある、それだけは避けなくてはいけない、なんせ晴は少しメンタルが弱い、なるべくズタズタになる前に湊に助けを求めてくれるなら一番理想だが、そんなうまく動いてくれるだろうか?、流石に長く一緒にいたとしても人の心を理解することは難しい、となると一番簡単なのは湊がなるべく近くにいるところで晴をいじめること、そうしたら、恐らくすぐに気づくだろうし、すぐに助ける筈だ、よし、決めた、なら、明日、その状況を作ってやろう、最低最悪のクズに、なってやる
翌朝、完全に俺が噂になっていた、まあ、なった理由は想像がつく、早乙女を泣かしたことが原因だろう、でもこの状況は悪くない、これなら、俺が晴を放課後に呼んでも不自然だと思う可能性は減るだろう、にしても、
「周囲の目線が冷たいな…」
それに、陰口も聞こえてくる、まるで小学校の時みたいだな、でも、早乙女には悪いことをしたな、まあいい、せっかくの絶好の機会だ、放課後、晴を昇降口裏に呼ぼう。
昼休み、湊に昨日の場所に呼ばれた、理由はまあ、言うまでもないだろう。
「おい、一樹、なんでこんなことしてんだよ!」
「お前には関係ないだろ」
「あるに決まってんだろ!、お前が理由もなく人を傷つけるやつじゃないってことくらい、知ってる、何年も一緒にいたんだ、なあ、教えてくれよ、理由があるんだろ?、頼む」
「ねえよ、ほら、わかったらとっとと消えろ、いいな」
「くっ、これだけは言わせてくれ…俺たちは、親友だ」
そう言いながら、湊はその場を後にした。
「ッチ、クズだな、俺」
でも、いい、今はこれで
放課後、晴を人気のない空き教室に呼び出した
「そ、その、な、何か用?、柊、さん」
ああ、そうか、もうそんなに他人行儀なんだな、でも、もう今更か。
彼女の心の傷を最小限に抑えることを前提に、やるしかない
「お前ってさ、だせえよな、湊にくっついて、ひっつき虫かよ?、湊も言ってたぞ、『くっつかれすぎてキモい』ってな!」
「ち、ちが、湊がそんなこと言うわけ」
「マジでだせえよな、ひっつき虫みたいにくっついてるお前も、お前みたいなやつの隣にいる湊もよ!」
足音が聞こえる、来たか、なら
彼女に近づき、体に触れる、ここでも、胸などは絶対に触らないようにする
「まあ強いて言うなら、体くらいは褒めてやるよ」
「や、やめ…」
その瞬間、扉が勢いよく開いた。




