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愛しの地味眼鏡 1

 暖かな日差しの中、学園の中庭にあるガゼボでは、令嬢達が噂話や流行の話に花を咲かせております。


 私もその中の一人。


 私の名は「リリス・ラングレー」。

 歳は十七歳。実家は公爵家で、ミルクティー色の腰までかかる髪に榛色の瞳をもつ淑女です。

 先日成人し、今年学園を卒業予定です。


 それにしても、今日は本当に良い天気ですわね。

 家に帰ったら「彼」と出かけようかしら。


 ………とは言え、私から誘うのも。


「それにしても、リリス様は災難ですわね」


 ふと考え事をしていると、目の前に座るアリアナ嬢に話しかけられましたわ。

 アリアナ・メリナ伯爵令嬢。目立つピンクブロンドに青い瞳のとても可愛らしい令嬢です。


「何がですの?」


 可愛いとは無縁のキツイ雰囲気の私におくびもせず、彼女はその可愛さを前面に出しながら、私に残念そうな視線を向けてきました。


「え?それは決まってますわ。リリス様の婚約者様の事ですよ!私先日ターナ様とマリナ様に聞いてビックリしちゃいました」


 あぁ、今更ですか。


 たまたま私と知り合って、何故か懐いてきましたけど、実際は彼女、学年が一つ下で編入生ですものね。

 最近私の婚約者を知ったのも頷ける話しですわ。


 因みに、ターナ嬢とマリナ嬢は姉妹。モンタナ侯爵家の令嬢で、今目の前で二人とも優雅にお茶を飲んでいますわ。

 二人と私は幼い頃からの友人。

 私の婚約者様の事もよく知っています。


 あぁ、おまけですが、妹のマリナ嬢のクラスにアリアナ嬢が編入してきたのが、私達が知り合ったきっかけですわね。


「私が…何故、婚約者について災難なのかしら?」


 まぁ、聞かなくても言いたい事は察しますけど。

 貴女も「そう」なんですのね。


 本当、困り…ませんわね。


 寧ろ、「彼方グループ」の人間でいてくれないと困りますわ。

 彼の信者はこれ以上要りませんもの。


「だって、リリス様の婚約者、ミハエル・フォンティーヌ公爵令息なんですよね?「あの」有名な!」


 さて、彼女は私に何を期待しているのかしら?

 「噂の公爵令息」と婚約した可哀想な令嬢とでも思いたいのでしょうか?


 お父様の「お願い」もあって、この子と「仲良く」していますけど…こうもあからさまだと、嫌になるわ。


「確かに筆頭公爵家の長男で、次期公爵様ですけどぉ、あの見た目はホンットに無いですわ!ボサボサの黒髪に瓶底眼鏡、しかも何考えてるか分からない根暗だし!こう言っては何ですが気味が悪いです」


 はぁ…えぇ、間違いではないわ。


 確かに私の二歳年上の婚約者様は、普段ボサボサ頭に瓶底眼鏡。しかも根暗…に見える風貌。


 それにしても、ターナとマリナは後でお説教ですわね。

 アリアナ嬢の言葉に笑いを堪えていますわ。


「心配ありがとう。でも、彼との婚約は幼い頃に両家で決まったものだし、私に不服はありませんわよ?………一応」


 あ、いけない。

 思わず「一応」と付けてしまいましたわ。

 まぁ、彼女には「彼方グループ」にいて頂かないと困りますし、まあいいでしょう。


 最近ちゃんと「彼」と話せていなかったせいで、思わず一応と言ってしまいましたわね。反省ですわ。


「一応なんですね!ではやはり少しは「嫌」だと思っていると!そう言う事ですよね?」


 あー、元気ですわね。


 あら?ほらほら、ちょうど良いタイミングですわよ?


「あら、鐘が鳴りましたわ。お昼は終了。皆様教室に戻りませんとね?」



ーーーーー



「それでは、ごきげんよう皆様」


 今日の授業は全て終了。

 ちょっと疲れましたわ。


 私は皆様に挨拶をしつつ、我が家の馬車までゆっくり向かう事にしました。


「はぁ…頭痛がしそうな案件ですわ」


 まさか、学園で「釣書」を渡されてしまうとは思いませんでしたわ。

 さて、「コレ」どうしましょうか?

 お父様から話は聞いていましたが、まさかの今日、学園内で行動なさるとは思いませんでしたわ。


「捨てる訳にはいきませんから、とりあえずお父様に持ち帰らなくては…もう丸投げしたらいいですわね」


 私は、黒い笑みを見せるこの国の宰相…我がお父様を目に浮かべ空を仰ぎました。


 この国のパワーバランスの為…でしたかしら。

 余計なお世話ですわ!


 それに………っあ!


「何!」


 気を許したまま歩いていたのがいけませんでした。

 校舎の角に差し掛かった瞬間、グイっと、誰かに腕を掴まれそのまま建物の陰へと引っ張っていかれたのでした。


 あー、もう。


 今日は帰宅してから「彼」と出かけたいなぁ…とか思ってましたのに。

 大誤算でしたわ。


 私の腕を掴んだ人物は、建物の陰をすり抜け、そのまま私を学園裏にある、ある建物へと引っ張っていきました。

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