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第2次政権で転生させられ、支持率が戦闘力になりました  作者: りにー
第3章 雨宮内閣の支持率を証明するとき
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51 大衝突

 ブラックペガサスの敗北を聞いたヒーライ魔王は、さすがにまずいと思ったのか、ようやく体を起こした。

 体を伸ばすと、バキバキと聞いたこともないような骨の音が響く。


「ちょっと、やばいかも」


 ヒーライは少し焦ったように、手下を集め、緊急会議を行なった。


「徹底的にぶちのめせ。反抗するものは容赦なく殺れ」


 全員が魔王の怒りを感じ、居住まいを正した。それは、まるで新興宗教のような異様な雰囲気だった。



-----


「なんか大したことねぇなぁー」


 原が呟くと、勘解由小路や大財も笑って同意する。

 確かに、ヘビ髪といいブラックペガサスといい、見た目だけ強く、いざ戦ってみるとあまり手応えはなかったように思える。


「で、これからどうする?」


 片岡の問いかけに、一同は黙った。今までは、仕返しをするべく向かう場所はあったが、親玉のヒーライがいる場所はわからない。

 ましてや、これからどこに行って誰と戦えばいいのかもわからない。


 その突然の問いかけは、一同を困惑させた。


「確かに、これからどうすればいいんだろ」


 見渡す限り平原で、目立った建物もなく、ただ立ち尽くすしかなかった。


「取り敢えず、進むか」


 雨宮の言葉に、一同は安堵したように頷いた。おそらく皆、どう話を始めれば良いかわからなかったのだろう。


 かなり長い時間歩いたように思える。以前、ブヘヘ村に行く際もこんなに歩いたっけ、と雨宮は自問した。


 すると、突然大場が大きな声で言った。


「あ! 綾さん、誰か探検家を呼んだらどうだ?」


「え?」


「いやだからさ、例えば、マゼランとかコロンブスとか方向を司ってた人って言うのかなー」


「なるほど!」


 大場のナイスアイデアに、堂前は賛成した。一同も、大場の提案には賛成のようで、それはかなり絶賛された。


「では……」


 堂前は、過去の偉大な探検家を、脳内で検索した。そして、膨大な情報の中から弾き出されたのは……


「ジェームズ・クック!」



--ジェームズ・クック。


 一般的には、キャプテン・クックやクック船長と称されるイギリスの海洋探検家だ。


 さすがは、堂前だ。日本史と世界史の知識は半端なかった。大財や片岡は、クック船長ならわかるといった程度だったが、堂前はそれぞれの偉人のエピソードも把握していた。

 それは、内閣閣僚を圧倒できる知識量だった。


「さすが、教員免許持ってるだけあるなぁ」


 原幹事長も、すごいものを見た時の目で、堂前を賞賛した。


 クック船長は、水色の魔法陣から、船に乗って登場した。


「え、船⁉︎」


 クック船長は、豪快な笑い声をあげて、早く乗れと合図した。

 全員がゆっくりとハシゴを伝って船に乗る。陸にいるはずなのに、プカプカと浮かんでいるような感じがする。


「う、浮いてるのか?」


 勘解由小路は、柱に抱きつきながら恐る恐る下を見るが、そこはそのままの地面だった。

 しかし、明らかにこの船は浮かんでおり、船酔いする人間がいないのが幸いだった。


 船が波を切る音が響く中、クック船長の手腕に皆の注目が集まった。彼は錨を巧みにあげ、帆を広げると、風を読むかのようにその軌道を捉えた。船は一気に加速し、まるで海の矢のように滑るように進んだ。

 乗組員たちもその技術に驚きつつ、慣れた手つきで船長の動きを支えた。


「さすがだわ! 船長!」福本が感動して叫ぶと、その声は少女のように純粋で、周囲の者たちも彼女の感情に引き込まれた。


 クック船長が過去に成し遂げた壮大な航海の記録を知る者にとって、彼の航海技術を間近で見られるのは、まさに夢のような体験だった。南極圏を横断し、壊血病を一人も出さずに乗組員を守り抜いたその手腕は、伝説的なものとして語り継がれていた。


 一同の賞賛の声が船上に響き渡る中、クック船長はさらに興奮を隠せずに速度を上げた。彼の目は前方の首都と推定される方角に向けられ、船は55ノット(時速100キロメートル)の速さで海を切り裂いて進んだ。その速度に船はほとんど揺れることなく、まるで空を飛ぶかのようなスピード感があった。


 周囲の景色は次第に変わり、岩山や広大な草原が目に飛び込んできた。草原から始まり、未知の大地を目指すその旅は、まるで冒険小説の一ページをめくるようで、船上にいる全員が新たな発見に胸を躍らせていた。


 不思議な感覚に包まれながらも、彼らの心は一つの目的に向かっていた—新しい地平を目指して、果敢に進むことだった。


 その航海はかなり長く、すでに日は落ちていた。


 その時、大きな警報音が鳴った。それは、けたたましく鳴り響き、すでに眠りについていた内閣を驚かせた。


「なんだなんだ!」


 慌ただしく勘解由小路と雨宮が操縦室に入ってきた。

 数名も遅れて入ってくる。


「いや、前方に訳のわからないのがいきなり現れたんだ」

「なんだそれ」


 双眼鏡で目を凝らす雨宮に、勘解由小路は気になって訊く。


「何か見える?」

「いや、何も見えない」

「船長、本当になんかあるのか?」


 クック船長は、レーダーには映っていると、画面を指差した。

 今思えば、科学が進んだ現代の船に過去のクック船長が乗り、魔法の世界で運転しているのだから不思議で仕方がなかった。


 しかし、今はそんなことを考えている暇はない。


「本当だ。確かに何かある。人……? みたいだよな……」

「ええ……」


 それは突如大きくなって操縦席のガラス越しでも視認できるようになった。

 しかし、日は暮れているので影のシルエットしかわからない。


「なんだろう」

「でっけぇ人みたいだな」


 勘解由小路の推測は当たっていた。


「あ! 船長! ストップ!」

「え? あ!!」


 

 船首は前方に浮かぶ巨大な物体に向かって、避けられない運命に突き進んでいた。クック船長の目は拡大し、無駄な動きを繰り返しながら必死になってブレーキのレバーを操作していたが、その重要なレバーがガチャリという音を立てて取れてしまったのだ。


「いやー!!」福本が絶叫すると、その声は恐怖に満ちていた。


「ぶ、ぶつかるー!!!」勘解由小路が身を乗り出して叫び、全員の緊張がピークに達した。


「せ! 船長!!」と原が声を張り上げたが、クック船長の手元では取れたレバーが無力に地面を転がっていた。


「あ、ブレーキが!」と国破が絶望的に呟く。


 その一言で、船内はさらにパニックに陥った。クック船長が船のコントロールを取り戻そうと格闘している間に、一同はそれぞれが叫ぶ。


「あ!」と堂前が信じられないといった顔で声を上げ、「嘘だろ!」と国破が驚愕し、「やべぇよ!」と雨宮が恐怖で叫び、「し、死んじゃう!」と勘解由小路が最悪の事態を予感しながら叫んだ。


 カオスな状況の中、クック船長は最後の手段として、船の空笛を鳴らした。その警告の音は、深夜の静寂を切り裂き、周囲の海域に響き渡った。


 しかし、そんな警告音も、迫り来る物体の前ではまるで意味をなさないかのように、船は不可避の衝突へと進んでいった。


 ついに、船は巨大な物体に接触。

 その瞬間、周囲の空気が振動し、船は激しい衝撃に見舞われた。全員がその場で転倒し、悲鳴と混乱の中、船は揺れ動いた。物体との衝突により、船体はぐちゃぐちゃに歪み、土や泥、埃や砂が船内に流れ込み始めた。


 皆はあまりの衝撃に吹き飛ばされた。


「うわー!!」


「キャー!」


「嘘だろぉ!」


 数名が衝撃に負けて、どこか遠くに吹っ飛んでしまった。

 残ったのは、雨宮、原、福本、勘解由小路の四人だけだった。


 クック船長は、がっくりしたような面持ちで魔法陣に吸い込まれていった。

 雨宮たちには、あまりにも無責任な帰還に思えた。


「イッテぇなぁぁあ!!」


 その叫び声は、明らかに人間のものだった。

 そして、それが振り返ると、雨宮たちはまさかの事実に驚愕するのだった。

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