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第2次政権で転生させられ、支持率が戦闘力になりました  作者: りにー
第3章 雨宮内閣の支持率を証明するとき
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49 穏便に済ませるか、盛大にやるか

 風が吹き、荒れ果てた草原に、雨宮たちは突然舞い戻ってきた。彼らの足元には乾いた土がひび割れており、一面の地平線が荒涼として無情に広がっていた。かつてはここから東の方角に見えていたはずの街が、今はただの廃墟と化しているのが遠目にも明確だった。


「ま、まさか……」と福本は言葉を失いながら、目に涙を浮かべた。その涙は彼女の無念さと、かつての平和な街の記憶を引き裂くものだった。


 その時、冷たい風とともに、不気味な笑い声が草原を横切る。「おやおや、また来たのかい」とヘビ髪の四天王の一人が現れた。彼女の頭からは無数の蛇がうごめき、その異形の姿はやはり一行に寒気を与えた。

 特に、堂前にはかなりのダメージだった。


「おい! 何したんだ!」と雨宮が怒りを込めて叫んだ。


「何って何よ。ただの爆撃よ?」とヘビ髪は、面白そうに破壊された街を眺めながら軽蔑的に答えた。彼女の目には、通常の人間の持つ感情のかけらもなく、ただの混乱と破壊に対する興味が宿っていた。


「ひどいわ!」と堂前が声を上げたが、ヘビ髪はそれにケラケラと笑いを返すだけだった。


「ひどい? ヒーライ様の関税を無視するからでしょ?」彼女はそれを嘲笑うかのように言い放った。


「それはあまりにも国際法に違反しているぞ」と大財が怒りを込めて反論するも、ヘビ髪は首を横に振りながら、「この世界には国際法というものは存在しないのよー」と一蹴した。


 その言葉に、一行は言葉を失った。彼らが信じる秩序や法の概念が、この異世界ではまるで意味を成さないことに直面し、その絶望感は彼らの心に深く刻まれた。


 空はますます暗く沈み、草原の風は冷たく彼らの体を切り裂くように吹き抜けていった。


 この状況は、雨宮たちにとってただの物理的な破壊以上のものを意味していた。それは、彼らの信じてきた価値観や正義が、この無法地帯では全くの無力であるという痛烈な現実の前に、彼ら自身がどう立ち向かうか、その試練の始まりを告げるものだった。


「フフ、そうかい」


 雨宮は、その言葉を聞いてしばらく唖然としていたが、いきなり笑い出した。


「おい、どした? 総理」


 片岡が心配そうに雨宮に訊いた。


「国際法がないのかよ!」


「そうよ? それがどうしたの?」


「なら……。こっちが非人道的な攻撃をしても罰せられないってわけだな?」


「はあ?」


 雨宮は、ニヤリと笑い、原に向き直った。


「原さん。やっちゃいましょうか」


「やるって、どうするんだ?」


 原は、首を傾げたが、雨宮から告げられたのを聞いてニヤリと笑った。


「ハハハ! そりゃいいや!」


「お、おい。なんなんだよ!」


 国破や勘解由小路、大場も気になって訊いてきた。


「ヘビ女!」


 原は、大きな声で四天王に呼びかけた。


「な、何よ! 誰がヘビ女よ!」


「アンタだよ!」


「っな! おのれっ!」


 ヘビ髪の面持ちは、彼女がどれほど怒りに満ちているかを如実に示していた。


 どうやら、ヘビ女と言われたことが逆鱗に触れたようだ。

 通常は漆黒の肌に赤く輝く瞳の彼女が、今は更にその激情で顔を紫がかった黒に変色させていた。その異変には、誰もが思わず息を呑んだ。その姿は、まるで古典的な怪物映画に出てくるような、いかにもな悪役のそれだった。


 ヘビ髪は怒りに任せ、両手を広げた。その動作はまるで指揮者がオーケストラを操るようで、次の瞬間、彼女の周りの空気がぴりぴりと静電気で弾けた。


 それから、彼女の体から突如として巨大なヘビが飛び出してきた。そのヘビは、自動車並みの速さで地面を滑るように動き、その動きはとても素早く、目にも留まらぬ速さだった。


「キャァァア! へ、ヘビ!」堂前は本能的に顔を両手で覆い、恐怖に声を震わせた。彼の爬虫類への恐怖は有名で、この状況が彼女にとってどれほど辛いかは、同行者たちにも容易に理解できた。


 そのヘビは長く、太く、その表面は湿った光沢を放っている。目もまた、ヘビ髪と同じく赤く、その視線は何かを狙う獰猛なものだった。蛇は瞬く間に原の方向へと進み、その巨大な牙を剥き出しにして、彼に食いつこうと姿勢を低くした。


 原は冷静さを保とうと努めながらも、その直面した危機に迅速に対応しようと体勢を整えた。彼の手には魔法の杖が握られ、その杖からは弱々しくも青白い光が滲み出していた。ヘビが飛びかかるその瞬間、原は杖を振り下ろし、一瞬の光が辺りを照らした。


 その光がヘビの動きを一瞬だけ遅らせる。その隙に原は横へと飛び退き、ヘビの攻撃をかわした。


 しかし、ヘビは再び原を目掛けて転回し、次の攻撃を仕掛けようとした。原の周囲の空気は緊張で凍り付くようで、見守る仲間たちも声を出すことができずにいた。


「危ない!」


 福本が叫ぶ。

 大蛇は空気を切り、接近する。


「ガハハハハ! 自由の女神!!!」


 原が力強く叫んだ。


 すると、大蛇の腹のあたりに、自由の女神の右手が突き刺さった。

 恐ろしい金切り声があたりに響き渡る。

 全員が耳を抑え、鳴き声が止むのを待つ。


 ヘビ髪は依然として大蛇を操っており、すぐに大蛇は体勢を整えた。しかし、自由の女神の右手が突き刺さった腹からは、黒い液体が垂れている。おそらく、こいつらの血液であろう。


「うわっ、きったねぇ」


 護が顔を顰めながら言った。確かに、赤い液体なら痛々しいが、黒色の液体はドロドロしていて汚く見えた。


 しかし、大蛇はまだまだやれるぞと咆哮し、再び内閣目掛けて突き進んできた。


 すると、原は自由の女神の冠にまたがった。


「原さん! どうするんだ⁈」


 片岡は、大きく手を振りながら訊いた。


「まあ、見てな!」


 原は、なにやら自由の女神の頭を叩いている。


「何やってんだ?」


 大財も呆れたように、原を眺めている。

 自由の女神の立つ場所から、彼女の堂々とした姿が危機に際しても揺るぎない勇気と力強さを象徴していた。


 巨大な大蛇が躍動的に彼女に突進してくる光景は、まるで古代神話から抜け出たような壮絶な戦いを思わせた。その大蛇の動きは敏捷で、巨体に似合わぬ速さで繰り返し自由の女神に挑みかかるが、彼女はまるで動じることなく、堂々とした態度を崩さなかった。


「うぅーわ。すげぇな、おい……」


 片岡は、息を呑んだ。


 自由の女神の静かなる威厳に対し、大蛇の猛攻は波のように押し寄せる。


 しかし、彼女はそのたびに右手を振り上げ、その手から炎が生じる。煉獄の炎とも呼ぶべきその青白い火花は、実に強烈で、ガスバーナーのように集中して噴出され、周囲の空気を熱く震わせる。火炎放射器のように勢いよく大蛇に向けて放たれた。


 熱風が吹き荒れ、火花が散る中、大蛇の鱗は焼け焦げ、その苦痛の声が周囲に響き渡る。

 先ほどよりも強烈に耳障りで、大音量の断末魔は、一同の耳を劈いた。あの、ヘビ髪四天王でさえも。


 自由の女神の炎はただの火ではなく、正義の炎であり、侵略者を退ける力があるかのように見えた。大蛇が何度も挑んでくるたびに、彼女は冷静に対応し、その強靭な意志で反撃を続ける。


 その場に立ち会う大財は、この一連の攻防に呆れるどころか、内心で自由の女神の不屈の姿勢に感嘆していた。彼女の力強い姿は、彼ら一行にとって希望の光であり、たとえ厳しい戦いが続くとしても、彼らが戦い続ける理由を再確認させてくれた。大蛇が焦土と化す中、自由の女神の前に立ちはだかる闇は次第に薄れ、彼女の強さと正義が光を放つのだった。


「ガハハハハ、どうよ!」


 原は、ゆっくりと自由の女神から降りてきた。それは、まさしく神のような姿に見えた。たまの幹事長であるが。


 一同が拍手をする。それは盛大な拍手で、しばらくの間鳴り止まなかった。


 ヘビ髪は、呆然と佇んでいたが、ふと我に返り、この場から立ち去ろうとした。


 しかし……


「おい!」


 ビクッと体を伸ばし、ゆっくりと振り返った。


「逃げられると思うなよ」


 大財が叫ぶと、ヘビ髪はゆっくりと笑った。その顔は、半ば諦めも含まれていた。


「福さん、トドメだ!」


 雨宮が福本に叫んだ。福本は、大きく頷き、ヘビ髪に向けて杖を振った。

 それと同時に、堂前が「ユージーン・シューメーカー!」と叫んだ。


 その時、空は派手な茜色に輝いた。それは、美しい夕焼けかと思うほどだった。

 しかし、その正体は恐ろしく、21個の連続した彗星が飛んできた。


「ま、まさか……」


 今度は、大場が呟いた。


 それは瞬く間に起こった。

 音速を超える速度で、ヘビ髪女に連続して落下した。それは、まるで一生分の運を一気に使い果たすようなものだった。

 全ての彗星が一糸乱れぬ直線で、衝突した。


「シ、シューメーカー・レヴィ……第9彗星……」


 大場がその名前を言った途端、ほとんどの閣僚が「おぉ」と感嘆した。


--シューメーカー・レヴィ第9彗星。


 それは、一九九三年に、木星に衝突した唯一の彗星として、当時の世間を賑わせた。

 閣僚にとって、それは懐かしいものだった。当時は、みんな宇宙に興味をそそられたのだ。

 大場もその一人だった。この彗星のおかげで、天体観測が趣味になり、八月のペルセウス座流星群を観るために、北海道まで行くほどになった。


「綾さん、さすがっす……」


 シューメーカー・レヴィ第9彗星を発見した、ユージーン・シューメーカーを咄嗟に叫んだ堂前の瞬発力は、凄まじかった。

 全員が堂前を崇めるように拍手を送った。


 一方、ヘビ髪四天王は木っ端微塵に粉砕され、最後の断末魔さえ誰にも聞こえなかった。

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