47 反撃への準備
突如、空気の弾が割れる音とともに、そのフワフワとした空間から現実へと無情に引き戻された一行は、一瞬のうちに地面にドスンと放り出された。
その衝撃は予期せぬもので、数名がまずは尻餅をついて地面に叩きつけられ、その衝撃でバランスを崩し他の数名がさらにその上にドスンと無様に堆積する形になった。
「いって!」
勘解由小路の上には原がどっかりと乗っかり、更には雨宮の上には国破がドスンと重く落ち込んだ。特に国破の重みは、彼が内閣で一番体格が良く、体重も最大というだけあり、その圧力は雨宮にとっては想像を絶するものだった。彼の内臓はまるで悲鳴を上げるかのように苦痛を訴えた。
「あ、すまんすまん。総理、大丈夫ですか?」
国破は、その場の重さを和らげようと微笑みながら言った。
しかし、その軽妙な振る舞いとは裏腹に、雨宮の表情はまさに泣き面に蜂を見るようなもので、痛みと驚きが混ざった複雑な表情を浮かべていた。
「総理、取り敢えず落ち着いたか?」
しばらくして、原がそう優しく問いかけると、雨宮はほんの少し安堵の息をつき、周りの顔を見渡した。その瞬間、彼らの顔には同じく痛みや驚きが見て取れたが、同時に互いに無事であることへの安堵も感じられた。
それは、困難な状況の中でも互いに支え合い、ともにこの場を乗り越えようとする彼らの強い絆を象徴していた。
このひと悶着は、彼らにとって一つの試練であり、同時に団結力を強める一幕ともなった。
雨宮が苦悶の表情をしているので、原が中心となって立ち上がり、彼の手が勢いよく叩かれる音が、静かな森の中に小さく響いた。
その動作一つ一つからは、これから何か決断が求められる重要な瞬間の到来を感じさせる。
彼の周囲にいた全員が、その動きに注意深く目を凝らし、続く言葉に耳を傾けた。
「どうやってあいつらに落とし前をつけさせるかだな」と原が言うと、その言葉に全員がうなずき、同じ思いを共有していることが明らかになった。彼らの表情からは、敵への報復を望む強い決意が読み取れた。
国破がその緊張を切るように提案を投げかける。「あいつらに直接畳み掛けるか?」という彼の脳筋な思考は、物事を直接的に解決する方法を好む彼らしい提案だった。
しかし、この直球な戦術はすぐに護国家公安委員長によって却下された。「あんなに凶悪な連中に、直接切り込むストロングスタイルは向いてないだろう」と冷静な判断が下される。
国破は若干へそを曲げながらも、「おお、久々に喋ったなあ」と国家公安委員長に向けて言葉を投げかけたが、その会話はすぐに遮られた。「そんなことはどうだっていい。これからどうするかだ」と原が話を戻し、議論は再び本題へと戻された。
その後、数十分にわたり彼らの議論は続いたが、敵への対抗策については、意見が一致することはなかった。それぞれが持ち前の視点と意見を展開し、多角的にこの問題をどう解決するかについて熱く語り合った。
しかし、有効な策は浮かばず、それぞれが深く思索に耽る場面も見られた。
この集まりは、ただ結論を出すだけでなく、彼らが互いに理解を深め、絆を再確認する場ともなった。
しかし、答えが出ないまま時間だけが過ぎていき、彼らはこの複雑な問題に対する答えを見つけ出すために、さらに多くの時間と努力が必要だと痛感していた。
「そういや、森川さんたち……操られてましたよね……」
福本官房長官が口を開いた。その事実を全員があらためて痛感し、これが最重要課題となっている。
「ああ。おそらく、それはあの黒いペガサスに乗ってたやつを倒せばなんとかなるだろう」
雨宮は、予想を言っただけだったが、思いの外みんなから同意された。
「よし、まず最初の標的はあのペガサスになったクソ四天王だ!」
国破が立ち上がり、天に向けて拳を突き出した。やはり、脳筋な思考である。
「本当に大丈夫かよ」
片岡衆議院議長が不安を漏らした。
「何がだ?」
「いやさぁ、もしまた誰かがあいつらに操られたらどうする? ますますこっちが不利になるぞ」
確かに、それもそうだった。仮に全員が支配されたら、この世界はヒーライたちのものになってしまうだろう。
「そうは、問屋が卸さねぇよ」
「「「え?」」」」
原の発言に皆が注目する。
「わし、いいことを思いついたんだ。ただ、これはやってみたいとわからんがな」
原の説明はこうだった。
まず、全員で突然する。その後、原が何かしらの世界遺産を繰り出すというわけだ。
今までの戦闘では、原の活躍が最も輝かしい。それは、今までともに行動してきた原や福本には痛いほどわかっている。
「どんな世界遺産を出すんだ?」
大場厚生労働大臣が、あくびを噛み殺して訊いた。
「それはなぁ……何かあいつらの弱点とかわかればなぁ」
「あー、弱点か。わかんねぇな」
「取り敢えず、戦ってみてそこで分かればそれに合ったやつ出せばいいんじゃねぇか?」
なにやら、適当に話が進んでいるような気もするが、雨宮は強い眠気に襲われていた。
先ほどの大場のあくびが雨宮にも移り、原や国破にも伝播していった。
「今日はこの辺にするか」
「ああ。そんなに急がなくてもいいだろうな。森川たちは死んではないんだからな」
「ああ。俺たちもしっかり寝て反撃に備えよう」
全員が同意し、その日はおひらきになった。
長い夜がやってきた。一人ずつ、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。




