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第2次政権で転生させられ、支持率が戦闘力になりました  作者: りにー
第2章 第2次雨宮内閣は異世界で
23/60

21 国王との謁見は、怒りから始まった

「遅ーーい!」


 国王は、腹の底から大声を出して叫んだ。

 まるで衆議院解散時のように、「ギチョーー」と叫ぶ議事進行係のように。


 横一列に並ばされた雨宮内閣は、国王一人の声量とは思えない音圧に圧倒された。

 東京大学理科一類を首席で卒業した異色の経歴を持つ杉林環境大臣は、その声量は100dBはあるなと肌感覚で思った。

 雨宮は、こんな年寄りがあの声量で、遅ーいというのに驚き、目を見張った。


(どんなけ元気なんだよ……)


「国王陛下、申し訳ございません。こやつらの会議が長引いてしまって……」


 妖精がそう言うと、森川や川畑、車田から舌打ちとため息が漏れた。


「そんなことはどうだっていい! 本当にそやつらが我が王国を守れるのだろうな!」


 話すにつれて、だんだんとオクターブが上がっていく国王の話し方は、内閣の笑いのツボを押したようだ。堂前文部科学大臣が、クスクスと我慢して笑っている。


「はい! こいつらはバランスも良く、大丈夫かと!」


 妖精も必死に訴える。国王からの指令を守らねば、相当酷い仕打ちでもあるのだろうか。

 すると国王は、手元の大きな紙を持ち上げた。どうやら、そこには妖精が書いたと思われる雨宮内閣一同の情報や性格などが書かれていた。

 それは、いずれも妖精観点から書かれており、内閣の癪に触る書き方だった。


「ふーむ。なるほど。雨宮隆一。四十一歳。こんなのがトップゥ?」


 雨宮は、こんなのと言われたことに腹は立たなかったが、指を指されたことには腹を立てた。


「史上最年少で、ナイカクソウリダイシンに任命されたし」


 国王は、カタコトで読み上げる。まるで、小学生が読んでいるかのような感じがするが、これ恐らく妖精の字が汚すぎることが原因だろう。


「時々、遅刻し、妄想もする。同期の森川のことを少しデキモノのように扱っていると……。ふーん」


 デキモノと書いてることに雨宮は、驚きと怒りを覚えた。何で、妖精はそんなことを知っているんだ。それにそんなことをわざわざ書かなくていいのに。

 怒っているであろう森川の方を見ると、なぜか誇らしげにニヤニヤしていた。

 どうやら、森川は「デキモノ」を悪い意味ではなく、「出来た者」のように、いい意味で捉えていたのかもしれない。

 森川の勘の悪さと鈍感さに雨宮は、ホッとした。


「福本方代。ナイカクカンボウチョウカン。真面目すぎる一方で、それが仇となり交友関係の構築は苦手そう。目つきが鋭く、時折自分が話したことに不安を抱く」


 国王から棒読みで読まれた福本は、そのようなことを書かれていると知り、怒りを露わにした。しかし、国王の面前である手前、妖精に対して声を上げることはなかった。


「カ、デ、ノコウジ文彦総務大臣。最高齢。老いが進み、内閣の中ではアウェー感を抱いている。しかし、趣味はアイドル巡りと……。アイドルって何だ?」


 大財は、秘密にしていたアイドルの追っかけを、バラされたことに顔を赤くしていた。その事実を知った川畑や林らは、驚きのあまり、「へぇー」とか「あの、大財さんがぁ……」とか細い声を漏らした。

 一方で、アウェー感を抱いていると妖精の主観的考察には腹を立てたようだ。そんなことは思っていないし、ましてやうまく馴染めている方だと思っていた。


「川畑耕太法務大臣。とにかく足が臭い」


「いや、それだけかい!」と、さすがに川畑はツッコんでしまった。ジロッと国王と近衛兵に睨まれたが、何も言われることはなかった。


「高尾陽子外務大臣。人の懐に入り込むのが上手い。知らない間に、お金を盗まれる可能性がある……。要注意人物か……?」


 まさかの妖精の勘違いに、高尾はじめ一度は妖精を睨んだ。懐に入り込むのが上手いを、本当の懐と捉えているあたりがもう信用ならないというふうに。


「だ、だい、だいざい? 何で読むんだよこいつ!」


「国王、おおたからきんじろうでございます」


 近衛兵に指摘された国王は、先払いを一つして何事もなかったかのように進めた。


「えー。大財金次郎財務大臣。お金のことになるとガメツイ。こいつも最高齢。注意して介護するべし」


 大財もこの説明文には立腹した。当たり前であるが、内閣一同も大財が怒るのではないかと、ヒヤヒヤしまあまあと宥める声も上がった。


「堂前綾子モンブカガクダイジン。とにかく面倒見が良い」


 あまりの短さに、堂前は驚いたが、悪くは書かれていなかったので、安心したようだった。


「大場大輔コウセイロウドウダイジン。特になし」


「はあ!?」と、一言だけ大場が言う。


「林和典農林水産大臣。実はソウリの座が欲しそう」


 林のみ、なになにしそうという推定の書き方だった。


「森川平太経済産業大臣。経済と金融に詳しい。最も信用できそうな人物。しかし、すぐ癇癪を起こすのでキケン」


 森川は、喜んでいいのか怒った方がいいのか、イマイチよくわからなそうにしていた。


「車田デンシャ国土交通大臣。イビキうるさい。声デカイ。ついでに体もデカくて、態度もデカい」


 散々な言われように、車田は異議と抗議を申し立てたが、鎮められた。内閣はさすがに同情し、そんなことないよと、堂前から言われ、落ち着いたようだ。


「杉林樹木環境大臣。漢字全てに木が入っている」


「なんだそれ!」と、一言のみ言う杉林。


「国破山河防衛大臣。その体のゴツさから、防衛大臣に相応しい。しかし、車田と同様、イビキはうるさい」


 国破も、怒っていいのか喜んでいいのか、判断しかねていた。


「えー、こいつらに任せるのぉー?」


「はい。こいつらしか捕まえられませんでした。こいつらに頑張ってもらいましょうよ国王!」


 雨宮たちは、それぞれ怒りを燃やしながら、まずはこの謁見を耐えることにした。こんなところで、国王の怒りを買い、監禁されるなどとなったら言語道断。まずは、穏やかにこの場を過ごすことに専念した。


 それから、国王との話し合いは二時間に及び、解放されたのは夜中だった。


「あー、長かったー」


 雨宮たちは、再び豚箱の中に放り込まれた。国王からは、一両日中にお前たちの部屋を用意すると言われ、それまではここにいてくれと頼まれた。

 一同は、仕方なく妖精と一晩過ごすことになった。


 雨宮は、窓の外を覗き、再び日本のことを想う。


(そう言えば、内閣総理大臣臨時代理って誰になるんだろう……?)

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