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あの時の青春が始まる音がした

 『桜が舞い散るこの校庭で、またキミに会いたいな』


 なんて貴女は言ったっけ?懐かしいよね、この思い出ってもう6年も前の話なんだよ?小学校卒業の時だもんね。

 卒業を機に貴女は遠くへと旅立ってしまったよね。僕はとても、とてもとても寂しかったし悲しかった。貴女と会えなくなる日が来るなんて思ってもいなかったから。

 でも、中学に入って、新しい友達とか?人間関係とか、増えていく中で、貴女への想いは心の奥底に沈んでいった。


 いや、奥底に沈んだわけじゃない。僕の心の奥深くまで貴女への想いが広がるばかり。会えない日々が貴女への想いをより濃く、強くしていった。


 会いたかった。とにかく、貴女に会いたかった。大好きだった、今でも大好きな貴女に会いたかったんだ、僕は、ずっと。


 そして、今日は高校の入学式の日。生まれてからずっと過ごしてきたこの街を僕も離れるから、ちゃんと先生に連絡をした上で、最後の想い出に、あの日の、楽しかった日々の記憶を胸に、小学校の校庭に足を踏み入れた。



 『桜が舞い散るこの場所で、また貴女に会いたいな』


 僕は流れる微風(そよかぜ)に呟きを乗せてみたけど、貴女に出会えるわけなんてないのはわかってるから、記憶と想いを桜の木に置いて、その場を後に、入学式のために高校へと向かおうとした。


 急に風が強くなる。ふわふわと舞い散っていく桜の花びら。その花のシャワーの向こう側に、変わらない面影の貴女が……変わってしまった貴女が見えた。

 思わず僕は声をかける。


 「待って!!」


 でも、返ってきた返事は僕が望んでいたものとはかけ離れていて、むしろ一番聞きたくなかった言葉だった。


 「えーっと……誰、でしょうか」


 「…………え?」


 「ごめんなさい……私、1年前よりも前の想い出の記憶がないんです」


 「……そう、なんだ」


 それは、記憶がないというにわかには信じ難いことだった。だけど、6年前と変わらない面影と、変わらない声は、それが現実であることを嫌でも僕に突きつけてくる。


 「だけど、なんでだろう」


 「?」


 「ここに来ないといけない気がしたの。誰かと約束していた気がしたの」


 「それって……」


 「もしかして、貴方が?」


 記憶を無くしてもなお、ここでの約束を覚えてくれていたことがすごく嬉しかった。けれど、ここで僕だと明かすのは違う気がした。だから、僕は誤魔化してしまった。


 「どうだろうね?でも、僕もここで昔約束した相手がいたんだ」


 「そうなんですね……」


 「お互いに、約束の相手と会えるといいですね」


 「……はい!!」


 溢れる想いを押し込めて、僕は貴女と別れた……のに



 「えぇ」


 「同じ学校で同じクラスだったなんて、偶然ってすごいですね!!」


 貴女と同じクラスだなんて。

 でも、あの時に止まった僕の青春は、今また動き始めた。

読んでいただきありがとうございます!


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