復活
「どんな調子かね?」
「順調です。心拍数も、血圧も、代謝状況も、脳波も。」
「前回はあまり影響力を持たなかったからね。」
「今回は成功するでしょう。前回の失敗を踏まえて、いくつか改善しましたから。」
「そうだったね。前回は遺体になってからDNAを採取したから、腐敗するまでの時間だけで全てをやらねばならなかったからね。」
「今回は、誕生時に3人の技術者を派遣して、あらかじめDNAの採取も行っていましたから。クローン肉体の成長も時間をかけることができましたし、バックアップした思考パターンや記憶の脳への定着も前回とは比較にならないほど安定しています。」
「前回は、処刑時の記憶がPTSDを誘発してしまって、復活後はワケの分からないことを言うだけの凡人になってしまったものねぇ。」
「今回は、処刑時の苦痛の記憶は弱めるように処置してあります。生き返った後の幸福感は逆に増幅されるようにも・・・。」
「うん。それでこそ、『神』の有り難みを伝えることができるね。」
「しかし、この心理状態は長くは続きませんので、数日したらこちらに戻してしまいます。前回は、戻すのが遅すぎました。」
「前回は、腐敗した死体の処理にも苦労したね。」
「今回は、最初に送った技術者の1人が、死亡した場合に速やかに分子レベルで分解する『スリープ酵素』を摂取させてきています。3日で、きれいさっぱり古い身体は消えるでしょう。」
「こちらに戻した彼の処遇は?」
「コピーとは言え、人権がありますので『A級市民』として生活させる予定です。もしこちらの生活に馴染めないようなら、権利を制限して『B級市民』に落とします。」
「前回は最初から『B級市民』だったね。」
「あれは仕方ありませんでしたよね。全く使いものにならなくなっちゃいましたからね。今回のプロジェクトは、その反省も踏まえて多数の改善を加えてありますから万全だと思います。」
「今回の彼は、同胞の善導の役割を果たせるだろうか?」
「彼自身が『B級市民』に落ちてしまったとしても、バックアップがとってありますので、彼らへのその後のケア——すなわち、波動放送は滞りなくできると思います。」
「彼らは優れた『文明』や『文化』を築けるだろうか?」
「結果が出るのは、2000年〜3000年後のことになると思います。全てはスタンバイできています、委員長。」
「そうか。では、目覚めの儀式を始めようか。」