第2話 放課後、ちょっとピンチ
放課後になり、次々と生徒が教室を出て行く。
俺は、鞄を持って、まだ自分の席に座っている京介のところに向かった。
家に持ち帰るものを確認し、鞄の中に入れているところだった。
俺は、昼休みの時と同じように前の席に座り、京介に話しかけた。
「さあ、京介、話しの続きをしようじゃないか」
「続きって、もう話し終わって無かった?」
「ヒーローの魅力を伝えるには、あの内容だけじゃ足りないだろう?」
「暁からほぼ毎日聞いているから、もう十分だよ」
「本音は?」
「早く帰りたい」
「ええ~~~~」
「それにしても、今朝怪物が出たっていうニュースがあったのに普通に部活とかしているんだね」
「全くだ、危機感が足りない。いくらヒーローがいるからって、常に安心という訳では無いのに」
「・・・・・」
「どうした?」
「いや、そう思うのなら俺も早く家に帰らせて欲しい」
「まあ、怪物が現れたら何処にいても危険なことには変わりない。だったら、それまで好きに生きていようじゃないか」
「その考え方は危機感というのを感じられていないよね。まあ、今回も俺達が住んでいる場所からはかなり離れていたけれど」
「運が良いのか、悪いのか、困るよなぁ」
「運が良いと考えるべきじゃない?」
「だって、怪物が近くに現れたらヒーローも間近で見られる可能性が出て来る訳だろ? そう考えると今の状況は運が良いと断言出来ないと思って」
「その考え方をしている人は、地球上でも暁くらいだろうね」
「そんな褒めるなよ。照れるじゃないか」
「褒めたつもりは無いけどね」
褒められたと思って、鼻を指で軽くかく。
そんな俺を呆れた表情で見て来る京介。
「そこ、どいてくれる?」
「あっ、ごめん」
1人の女子生徒に言われ、慌てて席を立った。
綺麗な長い金色の髪をした少女は、勝手に席に座られて怒っているのか、睨まれたような気がした。
「えっと、勝手に座ってごめん! てっきり、もう帰っているのかと思って」
「・・・・・」
「(やばい、想像以上に怒ってらっしゃる?)」
「ごめん、波風さん。俺も暁もちゃんと確認しておくべきだった」
俺がビクビクと怯えている中、京介も謝ってくれていた。
波風 光さん、今年になって始めて同じクラスになったが、教室で誰かと話しているのを見たことが無い。俺も話したこと無い。
実はヤンキーで、学校では大人しいが外ではかなり暴れているという噂も流れたりしている。何度か、大きな怪我をして学校に来た事もあったんだとか。
「・・・別に気にしていない」
「(おお~~、やっぱりイケメンの話はどんな女子も聞いてくれるんだな~~。ありがとう~~~!! 京介~~~!!)」
「この後も使って大丈夫かな?」
「好きにすれば良い。私は、もう帰るから」
「ありがとう、ほら暁も」
「ありがとうございます!!」
指の先までビシッと伸ばした両腕を体にくっつけ、気をつけの姿勢から頭を勢いよく下げて感謝を述べた。
正直、まだ怖かったので下を向いたままギュッと目を瞑り波風さんが帰るのを待とうとしていたのだが
「・・・あんた達は、帰らないの?」
「(!?)」
まさかの会話の続行。
俺は、目を開き波風さんの足があることを確認。つまり、彼女はまだそこにいる。
下げた頭が上げられなくなり、必死に京介に「助けて~~!!」というテレパシーを送りつけるのであった。