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アリディア=サーディスクの幸せな結婚  作者: 神山 りお


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14/19

14 牽制、そして探り合い



 ◇*◇*◇



「ルーカス」

 屋敷に帰る前に、護衛のルーカスに声を掛けた。

 最近のルーカスは、以前より話す様になった。だからこそ、ルーカスの性格や気質が分かり、懸念が生まれた。

「帰る前に、少し話をしません?」

「話ですか?」

「殿下の事で少し」

「……分かりました」

 アリディアからそう言われ、ルーカスは少し気構えた様子だったが、ジュリアス王子の事と言われれば断れないない様だった。

 ルーカスの中心にはいつもジュリアス王子がいるのだから、必然的に彼の話となれば、断れないのだろう。




 護衛1人と、王太子の婚約者。

 その2人がただ話すだけでも、密会だの逢引だのいらぬ噂に繋がる。小さな噂が大きな火種にならないともいえない。

 帰路の馬車では、ルーカス以外もいる。

 だから、図書室の扉を挟んで話す事にしたのだ。



「話とは?」

 ルーカスは扉の外側に立っている。

 アリディアの護衛にしては不足だが、形としては問題ない。

 アリディアは図書室に誰もいない事を確認してから、カムフラージュとして本を1つ取りつつ口を開く。

「わたくしに、その剣を捧げた事に今も偽りはない?」

「勿論にございます」

 ジュリアス王子の話というのは建前。

 結婚する前にルーカスの本心を聞きたかったのだ。

 あの時の雰囲気に流されて、剣を捧げたのではないのかとアリディアは気にしていた。

 自分達の関係を唯一認めてくれた初めての人である。

 感極まった感情のまま捧げたのでは? と改めて問う。

 しかし、ルーカスは考える間もなく即答で返してきた。



「場の空気で剣を捧げたとでも?」

 逆に心外だと、ルーカスの口調にこもる。

 騎士としての矜持に触る事であると。

「他の事ではそうは思わない。だけど、捧げたきっかけにソレが大きい事は確かでしょう?」

「……」

「あなたの意思を疑う訳ではないわ。ただ、わたくしと言う人間をたいして知らずに、剣を捧げた事を後悔しないかと訊いておきたかったのよ」

 ルーカスが知っているアリディアは、あくまでもジュリアス王子からの話。ジュリアス王子の主観しかないのだ。



「知れば知るほど、捧げて良かったと思っております」

「……」

「今から言っても、すべてが後付けでしかありませんが、これから何が起きたとしてもあの時、あなたにこの剣を捧げた事に後悔はありません」

 ルーカスの言葉は迷いなどなく、扉越しでも真剣だと感じた。

「それならいいわ」

 と言いつつ、アリディア自身はルーカスさえ後悔していなければ、剣を捧げようが捧げまいがどうでも良かった。



「なら、その剣にわたくしとの忠誠として1つだけ、約束してくれる?」

「何をでしょう」

「この先、何があっても……ジュリアス殿下の傍から、黙って離れたりしない……と」

「……っ」

 その瞬間、ルーカスが息を飲んだのを扉越しから感じた。

 アリディアの危惧している事はそれだ。

 ジュリアス王子と結婚すれば、良くも悪くも自分の立ち位置、立場がイヤという程分かるだろう。

 尊敬と親愛は別だ。

 彼を本気で愛しているなら愛している程、アリディアと言う存在は辛い筈。言葉で言う程、気持ちが割り切れているのかが心配だった。

 割り切れないのなら、彼の性格からして傍から離れるに違いないとアリディアは思ったのだ。

 だからこそ、彼の覚悟を確認しておきたかったのである。



「お側を離れたり致しませんよ」

 ルーカスはそう言った後に、考える様に一呼吸空けた。

「私の立場より、アリディア様のお立場の方が苦しいのに、1人だけ逃げたり致しません」

「苦しい?」

「世継ぎをお生みにならないといけない上に、万が一には側室をお迎えしなければならない。私が想像する以上にお辛いかと」

「そうね。国母になれないとなれば、立場や体裁は悪いでしょうね」

 世継ぎが生まれなければジュリアス王子の母、現国母はアリディアを簡単に切り捨てるだろう。

 その後に迎えた側室が使えないのであれば、アリディアが表に出て公務をさせられるだろうが、側室が使えるのなら別。

 お役御免とばかりに、領地に帰れと宣告される可能性もある。

 公務だけのお飾り王妃になるか、切り捨てられるか。それは、側室次第となる。

 例え公務だけの存在となったとしても、仕事だと完全に割り切れなければ矜持はずたぼろになるだろう。

 後継ぎを生んだ者は圧倒的に優位なのだから、今ある後ろ盾さえも、まるっとそちらに流れるに違いない。

 その時に、ジュリアス王子の情がアリディアになければ、擁護もなくお払い箱である。

 護衛であるルーカスより、遥かに状況や条件は悪い。




「だけど、あなたはジュリアス殿下の恋人なのであって、わたくしの恋人ではないわ。気にする必要はないでしょう?」

 その時は可哀想な人だと、笑えばイイ。

 ルーカスには関係のない事だと、アリディアは自嘲気味に笑った。

「確かに "愛" ではない。ですが "情" はあります。笑って過ごせる程、薄情にはなれません」

「優しいのね?」

 アリディアはなんだか笑ってしまった。

 まさか、将来の夫であるジュリアス王子の愛人に心配されるとは思わなかったのだ。

「ただのエゴですよ」

 ルーカスが自嘲気味に言ったが、アリディアには彼の顔が見えない分、その声が優しく聞こえた。




「ジュリアス殿下が、あなたに惚れた訳が分かった様な気がするわ」

「は?」

 脈略のないアリディアの急な言葉に、ルーカスは思わず素が出てしまった。

 今の会話のどこに、そんな気配を感じたのだろうと。

「面白いって事」

 アリディアはクスッと笑った。

 人の顔色を伺い、嘘だらけの上っ面だけの世界きぞくには珍しいくらいにまっすぐな人だ。

 だからこそ、ジュリアス王子は惹かれたのかもしれない。

「……」

 扉越にも気配で分かった。ルーカスが不機嫌だ。

 面白いと言われて喜ぶ人はいないだろう。

 それを感じ取り、アリディアはさらにクスッと笑った。



「わたくしと、ジュリアス殿下との間にお子が出来たら、ルーカスと名付けようかしら?」

 なんだか、まっすぐで良い子供に育ちそうだ。

「おやめ下さい」

 アリディアが揶揄えば、ルーカスはさらに不機嫌そうな声色を出した。

 どんな嫌がらせですかと。

「結構、本気なのに」

「……」

 アリディアがそう言えば、今度は呆れている様な溜め息が聞こえた。

 怒るより、仕方ないと諦めた様だ。

 そんなルーカスが面白くて、アリディアはルーカスが咳払いをするまでクスクスと笑い続けたのであった。

















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