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決意を新たにした桜だったが、夜、寝所に思いがけない二人の人物が現れた。
桜の父、上帝と近衛内前であった。
二人は神妙な面持ちで、桜をうかがっている。
「どうしました。二人ともこんな夜更けに」
「夜分遅く申し訳ありません。陛下」
内前は恭しく一礼し平伏する。
「よい。気をつかうな」
「しかし・・・」
「よいと言っておる」
内前は、もう一度深く頭を下げた。
「すまないな、陛下」
父も頭を下げる。
「やめてください。父上まで」
「・・・・・・」
「それでご用件は?」
「将軍と陛下の婚儀」
父は苦い顔をしながら言った。
「それで・・・」
桜は先を促した。
「これからの朝廷のこともある。ここは陛下が・・・」
「父上も私に将軍家へ嫁げと」
「すまない・・・」
「それは承服出来ません」
「もう、一刻の猶予もないのだ」
「・・・それは道香に言われたのですか」
「・・・陛下、どうかご再考を」
「照帝が人に戻り、臣下に嫁ぐなど前代未聞です」
「しかし、長き神御世を守らねば」
「・・・止む無し」
内前は重い口を開いた。
「黙れ!内前。父上もお前までも、そのような事を言うのか」
「陛下」
「・・・・・・」
感情が憤りでささくれ立つ。
「すみません。二人とも下がってください」
桜は二人に退出を命じた。
「何卒、ご再考を」
父は帰り際に静かに言った。
それから、桜は考えがまとまらず、一睡も出来なかった。