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恐らく兄は自らが照帝となるべく道香と策を練るのであろう。
そう考えると、桜は暗澹とした気持ちなるが、折れる訳にはいかない。
後ろには橘野が従う。
「陛下・・・」
「案ずるな・・・いつものことだ」
足早に紫辰殿を後にし、御所へと向かった。
桜は御所に戻ると、仰向けに倒れて手足をバタつかせた。
「あー、もう、嫌っ」
「・・・姫・・・」
橘野が優しく言葉をかける。
「照帝なんて・・・大っ嫌い!」
桜の動きがぴたっと止まった。
(待てよ・・・何故、私は帝をやっているんだろう?兄上に帝位を譲ってしまえば、きっと楽になるのに)
桜は大きく首を振った。
(ううん。私は決めたの。英仁(後桃園照帝)が帝位につくまで、照帝をまっとうしようと、父には言われたが、これはすべて私が決断し決めた事)
桜の瞳に光が宿った。