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6.醒める夢

ブックマークと初評価ありがとうございます。暴力シーンありますご注意。

「はいもう一度最初から」

ダンス担当の教師から本日何度目かのダメ出しを受ける。

「そんな!もう4時間もダンスの練習をしてるのよいい加減疲れたわ」

「それはこちらのセリフです。4時間も付き合っているのですよ?そもそも公爵令嬢でいらっしゃった筈なのにどうしてこんなにダンスが下手なのですか!?」

「知らないわよ!」

(ダンスなんて昔家庭教師に基本を教わった後はサボってたもの!)

パーティなんてめったに行かなかったし行っても申し込まれる事はなかったのでそれで充分だった…王子妃教育がこんなに大変なんて聞いてない!

「おまけに口答えばかり…エリザベス様も完璧とは言えませんでしたがもっと真面目で熱心でしたのに…何でこんなに違うのか」

ダンス教師の一言にカチンとくる。

「アンタの教え方が下手だからでしょう!?この役立たず!」

「何ですって!」

結局そのまま口論になりダンス教師は辞めていった。


「いい加減にしてちょうだい、貴方本当にヘンリーと婚約する気あるの?」

数日後また私はアナスタシア様に呼び出されて説教されていた。

「あります!私が悪いんじゃありません向こうが悪いんです」

家庭教師の教え方が悪いから上達しないのだ。

「つけてた家庭教師は王族の教育を務めてる優秀な方達よ、ヘンリーも彼らに教わってたのよ」

「それでも私は悪くありません!ちゃんとした教師をつけてもらえれば今度こそ…」

必死で言い募るが冷たい一言が返ってくる。

「もういないわ」

「え?」

何を言われてるかわからなかった。

「さっきも言ったけど貴方につけてた教師達は王族の教育を務めてた優秀な方達よ、これ以上の教師なんてもういないわ」

「そんな…」

「いたとしても貴方の素行の悪さは知れ渡っているから名乗りを上げるものなどいないわ」

「そんな酷いわ!」

私は何も悪いことしてないのに。

「酷いのは貴方の態度よ、成績はまぁまぁだけど周りへの気遣いが全くない。教師が全滅で再教育が不可能な以上養女の話もなしよ」

「!」

冷たい目で睨みながら衝撃の宣告をされた。

「あくまでヘンリーと一緒になりたいなら妾か愛人になるしかないわね」

見下す視線にカッとなる。

「そんな、妾なんて貴方と一緒じゃない!公爵令嬢の私が愛人だなんて…痛っ!」

叫んだ瞬間顔に扇を叩きつけられた。

「お黙り平民の小娘が!よくもこの私を妾扱いだなんて!」

今までの冷たい視線など比べ物にならないくらい憎しみの篭もった目で睨まれた。そのままこちらに来ると髪を引っ張られて顔を持ち上げられた。そのままもう片方の手で何度も顔を平手打ちされる。

「痛いやめて!」

そう叫んでも手は止まらない。使用人がこちらに歩いてくるのを見て助けを求めたけど無視されたまま落ちた扇を主に渡す。するとアナスタシア妃はそれを受け取って扇で殴り始めた。逃れようと暴れると体を押さえつけられた。ただひたすら耐えてやり過ごすしかなかった。

どれくらい時間が経ったのかようやく終わったと思ったら今度は髪は引っ張られたまま顔を上向かされる。

「常識のないお前にもわかるようにハッキリ教えてあげる。私は側妃で妾や愛人とは別なの。妾や愛人は夜伽だけの存在、娼婦同然で妃の私よりもずっと下なのよ。初対面の時も私を妾呼ばわりしていたわね?それがどんなに私の誇りを傷つけたかわかる?」

「あ…あ…」

(怖い)

アナスタシア妃が顔を覗きこんでくる。無表情で目だけが怒りでギラギラと光っている。体が震えて言葉が出てこなかった。

「ついでに言うならお前はもう公爵令嬢じゃない。姉の婚約破棄の条件に『公爵家と絶縁する』と誓約書を交わしたでしょう?その時点でお前は公爵家から籍を抜かれているのよ」

「………え?」

思いもかけない言葉に頭が真っ白になる。気がつけば恐怖も忘れて問いかけていた。

「それじゃあ…私は…?」

「公爵令嬢どころか爵位を持たないただの小娘。つまりは平民よ」

「………」

体から力が抜けた。アナスタシア妃も手を離す。私は床に座りこんだまま呆然とした。

「大人しく養子縁組してれば侯爵令嬢として正妃になれたのに…今のお前ではどうあがいても妾にしかなれないわ」


吐き捨てるようなアナスタシア妃の言葉も耳に入らなかった。







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