5.いびつな歯車
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王子の婚約者として王宮の暮らしが始まって少し経った頃アナスタシア様に呼び出される。
「失礼します、アイビー参りました」
入室して一礼する。
「ようこそアイビー急に呼び出してごめんなさい。前から打診していた貴方が養女に入る家が決まったの」
「まぁ!早いですね」
「こういう事は急いだ方がよいわ。決まったら輿入れするまで一緒に暮らすことになるし家族としてやっていけるか会ってみないと分からないしね、それじゃあ行きましょうか」
そう言ってアナスタシア様が部屋を出るとその後についていく。
「今日呼んだのはデューイ侯爵家よ貴方も知ってるでしょう?」
「は、はい」
どうしよう…全然知らない。
そういう面倒な話はお姉様に押し付けていた…かろうじて5大家の名前は覚えてたから違うというのはわかるけど…。
まぁでも王家や公爵家より下なのは確かね、なら私の方が身分が上だし何とでもなるわね。
気を取り直してそのまま進む。
やがて目的の部屋にたどり着いた。
そのまま部屋に入る。
部屋の中は私室のような感じで居心地よく整えられており部屋の真ん中に丸いテーブルがありお茶の用意がされている。
そして中には口ひげの生えた中年の男性が1人立っていた。
「ごきげんようデューイ侯爵、お待たせしてごめんなさい」
「いえいえアナスタシア様のお呼びとあればいつでも」
和やかに挨拶をしてくる。さえないけど優しそうな人だ。
(これならうまくやっていけそうだ)
観察してると侯爵の視線がこちらに向いた。
「初めましてアイビー嬢」
にっこり笑って挨拶をしてきたのでこちらも微笑んで挨拶をする。
「初めまして侯爵。今度貴方の家に養女に入ることになったわ、私のおかげで王族と縁ができるのだから感謝して私に尽くしなさいね」
何故か侯爵はポカンとした顔をした後真っ赤になって怒り帰ってしまった。
アナスタシア様もカンカンになり私は訳が分からないままひたすら謝るはめになった。
その後もアナスタシア様の選んだ候補と会ったけど全滅だった。
「何てこと言うの!」
そのたびにアナスタシア様はカンカンだけど私は何も悪いことをしてないのに怒られて理不尽な気分を味わった。
(どうして私より身分が下の奴に下手に出なきゃいけないのよ!)
最初に会ったデューイ侯爵はアナスタシア様の遠縁で5大家のバートン侯爵家ともつながりが深いと後から聞いたけどそんな細かいこと知るわけないじゃない!しかもそれ以外は普通の侯爵とか辺境伯じゃない!私は王太子の婚約者で公爵令嬢よ。しかも辺境伯なんて伯爵風情じゃない、王都から離れた田舎伯爵が何だっていうのよ!?
不満が顔に出てたのかアナスタシア様は私を睨みながら言った。
「貴方には再教育が必要なようね。明日から家庭教師をつけるから王子妃にふさわしい教育を身につけなさい、私の御眼鏡に適うまで養女の話は保留よ」
「なっ!?」
驚いて声を上げるとジロリと睨まれた。思わずビクッとするとそのままメイドに追い出された。
(再教育だなんてまるで私が無能みたいじゃない!)
1人廊下で怒りに震えていると声をかけられた。
「アイビー?そんなところで何をしてるんだ」
見るとヘンリー様だった。思わず気が抜けて涙が滲んでくる。
「どうしたんだ?母上と何かあったのか?」
「ヘンリー様…私」
「とりあえず部屋に戻ろう」
私はヘンリー様に気遣われながら部屋に戻った。
「ふーんそれは相手が悪いな」
事情を聞いたヘンリー様は私に同情してくれた。
「そうですよね」
(公爵令嬢の私が侯爵や伯爵家に頭を下げるなんて!)
改めて思い返すと憤慨する。
「全くこちらが下手に出てるからって身の程を分かってない奴が多くて困るよ。俺が王になったら法を改正して身分が上のものに決して逆らわないようにしないとな」
「そうしましょう!」
その時は無礼者たちに思い知らせてやるわ!
「けど今は現状を何とかしないとね。大丈夫君ならすぐ母上の目に適うよ」
「そう…ですね」
正直気は進まないが仕方ない。
「気にするな今だけの我慢だ、そうだ街に行ってみないか?たまには気晴らしも必要だ」
そう言ってヘンリー様が優しく気遣ってくれた。
その後街に行って派手に遊んで嫌な気持ちを吹き飛ばした。