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番外.ある愚かな男の末路⑨

ブックマーク、評価ありがとうございます。長めです。

娘たちの婚約が決まって数か月たった。

エリザベスの縁談に妻が難色を示したが、王命だからと言って押し通した。その数日後にロージア辺境伯家から、アイビーと長男の縁談を申し出があった。

エリザベスとの婚約で、ヘンリーが王太子になるのはほぼ間違いない。どこから耳に入れたのかルイス王子派が、ヘンリーがエリザベスに暴言や暴力をふるってる事を指摘して頑張っているが、アナスタシア妃や支持派が「自分達が手綱を引くから」と言って退けている…時間の問題だろう。


ルイス王子派の辺境伯家としては、没落する前にヘンリー派との強固な繋がりを持ちたいが、年頃の子供で婚約者もいないのはアイビーだけなので、悪評を承知の上で嫡男を差し出してきた。

もちろん喜んで即決した。エリザベスは王家に嫁ぐ事になるので、本来ならアイビーが次期当主になる…のだが、アイビーに跡を継がせれば、1か月と保たず公爵家が破滅するのは目に見えているので、アイビーとの結婚を条件に、ひそかにリカルドとの養子縁組を進めている。必要な手続きはすべて済んでおり、あとは書類を国に提出するだけなのだが、セオドアに「念のため、2人の結婚が成立してからの方が良い」と止められた。

その場は疑問に思ったが、すぐに思い知ることになった。


「お父様!何でお姉様の相手が王子様で、私が辺境伯風情なのよ!」

今日も今日とてアイビーが執務室に乗りこんで来ては、お決まりの文句でわめく。

頭痛を感じて頭を押さえながら、ため息とともに反論する。

「他にお前と婚約しようという、物好きがいないからだ!そもそもお前の希望通り、侯爵以上で顔も良いんだからいいだろう!」

「だからってお姉様より下なんて、納得できないわ!それにあいつ、私の言う事やる事いちいちケチつけてくるのよ、全然優しくないわ!あと物好きって何よ、失礼ね!」

「ケチをつけてるんじゃなくて、注意してるんだろう。それだけお前の素行が悪いという事だ!物好きもそのままの意味だ。リカルド君も家のためじゃなければ、お前となんか結婚したくもなかっただろう!少しは婚約してくれたリカルド君と、婚約をまとめた家族に感謝したらどうだ!」

「私は悪くなんかないわよ、細かい事言うあいつが悪いんじゃない!それに『私となんか』って何よ!社交界一の美少女で、次期公爵なのよ!?皆が私を欲しがって、注目してるっていうのに!」

興奮したアイビーが、バンバンと机をたたく。

こちらも興奮して、椅子から立ち上がる。

「『社交界一の恥知らず』の間違いだろう!欲しがってるんじゃなく、白い目で見られてるんだ!だいたいようやく決まった婚約なのに、破談にしてどうする!」

するとアイビーはそれまでの怒りが嘘のように、キョトンとした顔をした後、とんでもない事を言いだした。

「何言ってるのよ、破談になんてしないわよ?」

「は?」

こちらも毒気を抜かれて、思わず聞き返す。

「リカルド君は不満だけど、破談にはしないって…じゃあどうする気だ?」

「もちろん私が第2王子に嫁いで、リカルドを愛人にするのよ。前から思ってたけど、男は愛人や妾を作るのに、女はダメなんて不公平じゃない?あいつ口うるさいけど顔はいいし、人気あるし、連れて歩くと気分良いのよね~。貢ぐのは第2王子にさせればいいし、2人並べて両手に花だわ」

堂々と得意気に恥知らず極まりない発言をするアイビーに、文字通り開いた口がふさがらなかった。



(全くアイビーの奴め!)

腹の中で怒りを抱えながら、書類をさばく。

あの後無理やり追いだしたが、最後には癇癪を起こして暴れた。おかげ部屋の中はメチャクチャになり、仕事ができる状態で無くなった。

メイド達を呼んで部屋を片付けさせて、ずいぶんと時間をくってしまった。おかげで仕事がかなり遅れている。

怒りのせいで、どうしても集中できない…そのせいで余計に遅れて、ますますいら立ちが募る。

コンコン。

「お父様、お話があります!」

そんな時にエリザベスがやって来た、しかも入室の許可も聞かずにだ。

怒鳴りつけようかと思ったが、何とか思いとどまった。

普段のエリザベスなら、きちんと許可を待ってから入室する筈なのに、それがなかった。

現在エリザベスは引き篭もりの母に代わり、執事のセオドアと共に屋敷を仕切っている…何か緊急の用かもしれない。

とはいえ顔を合わせると怒鳴りつけたくなるので、書類に没頭してるフリをして見ないようにした。

よく見ていれば、エリザベスの顔色が悪い事も、冬なのに息を切らし汗をかいている不自然さにも気づけたのに…。

「何の用だ?私は忙しいんだ、手短に…」

私の言葉を遮って、エリザベスが爆弾発言をする。

「ヘンリー様との婚約を破棄して下さい。」

「…何?」

(ふざけるな!)

何とか抑えていた怒りが、噴出した。

(どうせまたヘンリー王子に罵倒されたとか、叩かれたとかだろう!そんな事くらいで王族との婚約を解消しようなど!)

ヘンリー王子と婚約してから、エリザベスはたびたび罵倒されたり、叩かれたりしている。そのたびにエリザベスが、愚痴をこぼしてきた。

(確かに女性に暴力をふるうのはどうかと思うが、怪我自体は大したものではないし、悪口を言われたくらいで王族との婚約を破棄するなど許される事じゃない)


考えこんでいたせいで『酷い暴力を受けた』という、エリザベスの台詞を流してしまっていた。

背中を見せようとするエリザベスを、ウンザリした気持ちで一瞥する。

そうして決定的な言葉を言ってしまった。


「何かと思えばそんな事か…くだらない」

ため息をつきながら手に持っていた書類を机の上に放ると、エリザベスが信じられないものでも見るように、目を見開いた。

「くだら…ない…?」

「くだらないだろう。前にも言ったが、痕などドレスで隠せるんだ。大げさに騒ぐ事じゃない。騒ぎはアイビーだけでたくさんだ。お前は長女なのだから、アイビーのように我儘を言うんじゃない」

(どうせ今度は『背中をぶたれた、もしくは蹴られた』とか言うんだろうが…そんな事くらいで王族と婚約解消などできるか、バカバカしい。振り回されるのは、アイビー1人でたくさんだ)

そう思ったので、そのまま言った。

とりあえず嫌な思いをさせられて来たのは事実なので、「お前は良い子だから、親を困らせるんじゃない」と言って宥めた。

しかしエリザベスは絶望したような顔で「分かりました、もう結構です」とだけ言った。

「エリザベス?」

ここでようやく冷静な目で見て、エリザベスの顔色が悪いことに気づいた。

しかしエリザベスは振り向きもせず、そのまま部屋を出て行った。


その後仕事が一段落して部屋を出てから、エリザベスがヘンリー王子に大火傷を負わされたことを知った。さすがに抗議したが婚約破棄には至らず、慰謝料を貰うだけで終わった。

その金を領地の運営と、皆がエリザベスにかかりきりになって、拗ねているアイビーの機嫌取りに使った。

エリザベス宛の慰謝料を懐に入れたのはちょっと気が咎めたが「養ってやってるんだから、娘の金は親の物だ。次期当主として教育を受けたんだから、領地と妹の為身を切るのは当然理解してるだろう」と開き直った。

エリザベスも妻も使用人達も何も言わなかった。

ただ一言執事のセオドアだけが「最低ですね」と言っただけだった。

私はこの時エリザベスや妻や使用人達が許してくれたと思っていた。

セオドアもちょっと嫌味を言っただけだと、思っていた。


実際は完全に見限られたのだと、気づかなかった。

セオドアの台詞が「親としても当主としても最低だ」という意味だと気づかなかった。

その後、エリザベスの婚約破棄、アイビーとヘンリー王子の再婚約、2人の追放と死など、色々あってすっかり忘れてしまった。



そうしてその報いは、突然やって来た。

お待たせしました。次回よりざまぁ回です。

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