番外.ある愚かな男の末路④
評価ありがとうございます。言うの遅れましたが、暴力シーンあり注意。
「お父様お話があります」
先ほど出て行ったはずのエリザベスが、何故か戻って来た。
「何だ、さっき来たばかりだろう。何故その時言わなかった」
自分でも渋面になるのがわかった。
今朝アイビーが小遣いをねだって散々暴れたせいで、仕事が遅れてるし、正直虫の居所も悪い。あまり会話をする気分ではないが、様子を見る限り急ぎの話のようだ。
(イラつく内容でないといいが…)
こちらの様子に気づかないのか、エリザベスが用件を切り出してきた。
「その後でできた用件だからです。単刀直入に言います。アイビーが先ほどお父様に呼ばれている間に、私の部屋に入ってアクセサリーや小物を持ち出しました。アイビーを罰して下さい」
言われた内容にカッとなった。
「何だと!?証拠はあるのか!」
(性懲りもなく、妹を泥棒呼ばわりするとは!)
思わず怒鳴りつけたが、エリザベスは怯まない。
「お父様に呼ばれてから、戻ってくるまで5分ほどです。盗んだ相手は行き帰りのどちらかで必ず私と会う筈です。そして私と会ったのはアイビーだけですし、アイビーが何かを抱えているのも見ました」
もっともらしく言うが推測だ。
抱えているのも『何か』で、はっきり見たわけじゃない。
証拠もなしに妹を犯人呼ばわりするエリザベスに、我慢ができなくなった。
「いい加減にしろ!いつまで実の妹を盗人呼ばわりする気だ!」
そのまま席を立ち、エリザベスの前まで行くと睨みつけるが、エリザベスも腹を立てているらしく、負けじと睨み返してくる。
「では誰が盗んだというんです!」
もはやお互い冷静さを欠いていたが、もう止まらなかった。
「お前の勘違いだろう!どこかに失くしたのを盗まれたと思いこんでるんだ。妹に濡れ衣を着せる前に、もう1度部屋をよく探してみろ!!」
「部屋を出る前は確かに置いてあったし、部屋を離れてて触りもしてないのに、どうやって失くすというんです!ご自分こそ娘可愛さで目を曇らせるのも、いい加減になさって下さい!!」
「何だと貴様!」
エリザベスの台詞に完全に頭に血が上り、怒りのままエリザベスを気絶するまで殴り続けた。
思えば図星をさされて、無意識に誤魔化そうとしたのだろう。しかしその時は気づかず、エリザベスの暴言に、腹が立ったのだろうと思った。
エリザベスが動かなくなるまで殴った後も怒りが収まらず、そのままエリザベスの髪を掴んで、引きずったまま部屋を出た。
「きゃああ旦那様!何をなさってるんですか!?」
正面からやってきたメイドが、悲鳴を上げた。手にはモップと水の入ったバケツを持っていた…どうやら掃除担当のメイドで、仕事を終えて戻るところらしい。
「ちょうどいい、貸せ!」
「あっ、何を!」
メイドからバケツを奪い取ると、気絶したエリザベスにかけた。
「旦那様、なんてことを!」
メイドの悲鳴を聞きつけて、妻や屋敷中の使用人がやって来た。
「エリザベスが不届きな暴言を吐いたから、罰を与えたんだ!当然の報いだ!」
そのままエリザベスを引き摺って、階段を下りて玄関に向かう。
「旦那様何をするつもりです、止めて下さい」
「うるさい!そもそもお前がエリザベスを甘やかすから、こいつが調子に乗るんだ!口を出すな!」
妻が半泣きで縋ってくるのを、振り払う。
妻はそのまま床に倒れる。
その姿を見てさすがにちょっと乱暴だったかと思ったが、妻が甘やかしてるのは事実なので、心を鬼にする。
そのまま玄関の扉を開けてエリザベスを放り出すと、ついてきた使用人たちに向けて言った。
「エリザベスは妹を泥棒呼ばわりした罰で、一晩外で反省させる!お前達は朝まで絶対に中に入れるな、入れたらエリザベスと同じ目に合わせるからな、いいな!」
そのまま部屋にに戻る途中、騒ぎが聞こえたらしいアイビーと出くわした。
「お父様、私の名誉を守ってくれてありがとう。これでお姉様も懲りて、私を泥棒呼ばわりしないと思うわ」
嬉しそうにニッコリ笑うのを見て、ようやく怒りが収まった。
(本当に盗んだのなら姉が無実で痛めつけられて、良心の呵責を感じる筈だ。やはりエリザベスの勘違いだったのだ…全く何て酷い娘だ)
「それは良かった。外で一晩頭を冷やせば、エリザベスも反省するだろう。お前も不満だろうが、エリザベスが謝ってきたら、許してやりなさい」
「はぁ~い」
上機嫌で返事をしながら、アイビーが部屋に戻った。
それを見届けて私も部屋に戻り、遅れた仕事に取り掛かる。ようやく仕事が一段落ついた時は、すっかり夜も更けていた。
その頃にはエリザベスの事などすっかり忘れており、そのまま眠った。
だから気づかなかった…夜半から雪が降りだしていたことなど…
散々殴られ、薄着に水をかけられて、放置されたエリザベスがどうなったかなど…
使用人達に「絶対に中に入れるな」と命じた為、誰も助けられなかった事など…




