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番外.欲張り令嬢の記録㉒

投稿するたびブックマークが減っていく…嫌になって来た。

長め+暴力シーンあり注意

ヘンリーと婚約してからしばらくたった。

ヘンリーは妃教育で城に来ている時は見向きもしない癖に、数日に1回公爵家から私を城に呼び出す。

「はぁ…冷えると思ったら雪ね」

窓の外では、灰色の空から雪が降り始めている。

憂鬱な気分に拍車をかけるが、行かないわけにはいかないので、仕方なく身支度を整える。

「お嬢様…おいたわしい。せめて今日だけでも『体調が悪い』とか言って休めませんか?」

マリーが痛ましげな顔で見る。

「ありがとう、でも休んでもその分次に酷い目にあわされるだけだわ…ショールを頂戴」

「お嬢様…」

とうとうマリーは泣き出してしまった。

それを落ち着かせてから、部屋を後にした。


「あらお姉様、お出かけ?」

馬車を待っている間、玄関先で声をかけられた。

振り向くとアイビーが、婚約者のロージア辺境伯子息に腕を絡ませて立っていた。

「えぇ…ヘンリー様に呼ばれているので、城まで行ってくるわ」

するとアイビーは芝居じみた動作で、天井を見上げて大げさに嘆いてみせた。

「あぁお可哀想なヘンリー様!陰気なお姉様に纏わりつかれて!」

(相変わらずどういう耳と頭をしてるのか)

私は「呼び出されて」と言ったのに、アイビーの中では私が無理やり押しかけてるらしい。

反論しても余計五月蠅くなるだけなので、最近では無言で受け流している。

が、生真面目なリカルドは黙っていられなかったようで、やんわりと訂正してきた。

「アイビー、エリザベス嬢は呼び出されて行くんだ。エリザベス嬢が押しかけてる訳じゃない」

するとアイビーは目を吊り上げると、リカルドの腕を払い、喚き散らした。

「うるっさいわね!私の言う事に口挟むんじゃないわよ、入り婿の癖に!大体何でお姉様が王子と婚約して、私が辺境伯風情なのよ、普通逆でしょう!?私の方がお姉様より全てにおいて優秀なのに!」

(また始まった)

私とヘンリーの婚約が決まってすぐ、ロージア辺境伯家からアイビーに縁談の申し込みが来た。

アイビーの素行を承知の上での申し込みだった。

私とヘンリーの婚約で王太子はヘンリーにほぼ内定したと社交界中に広まり、第2王子派だった辺境伯家は、立場が弱まった。シャルロットと私が友人同士だが、それでも不安だったのだろう。確かな繋がりを求めて、アイビーとの縁談を持ちかけてきた。

父は喜んで受け入れたが、逆にアイビーが嫌がった。

「何でお姉様の相手が王子様で、私が貴族の子息なのよ!」

散々ヒステリーを起こして暴れた挙句「お姉様が第1王子なら、私は第2王子に嫁ぐわ」とまで言い出した。

もちろんそんな事がまかり通るはずもなく、父に「文句言うなら追い出す」宣言をされて収まったが、何かにつけて私に絡んで来ては、自分とヘンリーを悲劇の主人公に見立てて私を罵る。

(まぁ罵倒で済むだけまだマシか)

今までが今までだけに不快ではあるが、ずいぶんとマシに感じる…そう思う自分にちょっと落ちこむ。

馬車が来たがアイビーはこちらに見向きもせず、リカルドに食ってかかっている。

(あぁそうか)

リカルドが反論したのはアイビーの注意を自分に引きつけて、こちらに被害が及ばないようにする意図もあったのかもしれない。

申し訳ないので口を挟む。

「そんなに不満なら、婚約者を交換しましょうか?」

その言葉にピタッとアイビーが黙りこむ。

王族ではないが、リカルドも社交界で憧れの的だ。アイビーもあれだけ不満を言っていた癖に、婚約披露の場では、婚約者を連れ歩いて自慢しまくっていた…それに将来ヘンリーが王太子になり、私がヘンリーに嫁ぐ(と思われてる)ので、アイビーとリカルドが結婚して、リカルドがグローリア家を継ぐ事になっている。

蛇足だがアイビーは自分が女公爵になって、リカルドを入り婿にすると思っているが、アイビーに権力を持たせることを危惧した父が、アイビーに内緒でリカルドと正式な養子縁組を進めている…もちろんアイビーと結婚するのが前提だが。

アイビーは私が自分より身分が上の相手に嫁ぐのが気に入らないが、人気の婚約者も手放したくないので、こう言うとすぐに黙る。

黙りこんだアイビーを一瞥すると、リカルドに挨拶をして馬車に乗りこんだ。



「遅いぞ!王子の俺を待たせるなんて、罰が必要だな…」

部屋に通されるなり、ニヤニヤ笑いながらヘンリーがこちらを見てくる。

ため息をつくと、控えていたメイドにショールを渡し、いつも通り背中を向けて立つ……鞭で打たれるために。

ヘンリーは昔と変わらず乱暴者だった。

婚約者になって初めて2人きりになった時、本性を現し、私が気に入らないと鞭でぶった。

私は屋敷に帰ってすぐ父にそのことを伝えたが、案の定父は破棄を申し立てなかった。

「ドレスで隠れるんだからいいだろう、死ぬわけでもないのに大げさな…それくらい我慢しなさい」というだけだった。

母や使用人たちが抗議したが取り合ってもらえず、ひたすら我慢するしかなかった。

破れたドレスや傷跡を隠す為、ショールを愛用するようになった。

母や使用人達も心得たもので、私が城から戻ったらすぐ手当てできるよう、傷薬を用意して待機するようになった。

しかし私もただ痛めつけられるつもりはない。

ヘンリーと一緒に公の場に出ては、ヘンリーを目立たない程度にイラつかせて、暴言や暴力を振るわれるようにした。

ヘンリーは乱暴な癖に国王や側妃以外の人目を気にしないので、2人がいなければ止められる者もおらず、やりたい放題だった。

そんな振る舞いを見て、ヘンリー派の人間はヘンリーを見限り、中立もしくはルイス派に鞍替えするものが出てきた。

少しずつだが、それなりの数の貴族がルイスについた。

国王も未だに王太子を選んでいない。

アナスタシア妃はヘンリーが問題を起こすたびに「どうして問題起こすの!」と、こちらを責め立ててくる。

(このまま続けて支持がある程度減ったら、婚約破棄すればいい)

背中の傷が、良い破棄理由になってくれる。

父に言っても握りつぶされるだけなので、国王に直接言う方が良いだろう。

背を向けて考え事に没頭してた為、周囲のメイド達が目を背けるのも、ヘンリーが鞭とは別の物を持っていることにも気づかなかった。


ジュッという音の後に肉が焼ける匂いがして、感じたことのない熱さと痛みを感じた。

「きゃああああああああああああ!!!!」

堪らず悲鳴を上げた。

必死に逃げようとする。

暖炉の火かき棒で殴られたのだと、すぐにわかった。

「うるさいぞ!おい暴れるな、お前達エリザベスを取り押さえろ!!」

ヘンリーの命令に、すかさずメイド達が私を床に押さえつけ、そのまま口もふさがれる。

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

「こんなことしたくないけど、言う通りにしないと私達も同じ目にあわされるんです!」

「お許し下さい!」

数人がかりで押さえつけられては、どうしようもない。

そのまま終わるまで痛みと熱さに耐えるしかなかった。


「ううっ…」

気がついた時、ヘンリーはいなくなっていた。

「「「申し訳ありません!」」」

先ほどまで押さえつけていたメイド達が、涙ながらに謝ってくる。

「大丈夫…貴方達を責める気はないわ…」

背中に痛みを感じながら、ゆっくりと立ち上がる。

押さえつけられてる間、彼女達の袖や襟の隙間から傷や火傷の跡が見えた…きっと私以上に痛めつけられているのだろう。

(逆の立場なら、きっと私も同じことをしていた)

そう思えば責める気も起きない。許せないのはヘンリーだ。

「エリザベス様、まだ立ち上がらない方が…」

「今冷やす物を持ってきますから…」

「いえいいわ。今日はこのまま帰るから」

止めようとするメイド達を振り切って、屋敷に帰った。


「お父様、お話があります」

帰るなり父の執務室に飛びこみ、話を切り出す。

(もう限界だ)

もっとヘンリー派を減らしてから婚約破棄するつもりだったが、もう待てない。

これ以上暴力を受け続ければ、命を落としかねない。今回の所業を理由に婚約破棄してやる。

「何だ?私は忙しいんだ、手短に…」

「ヘンリー様との婚約を破棄して下さい。」

「…何?」

こちらを見もせず書類に目を落としていた父が、顔を上げる。

「ヘンリー様に酷い暴力を振るわれました、もう限界です。この背中を…」

見て下さい、と言いかけた私の言葉は、父の思いがけない言葉に遮られた。

「何かと思えばそんな事か…くだらない」

ため息をついて、持っていた書類を机の上に置く。

「くだら…ない…?」

何を言われたのか理解できず、ただ言われた言葉を繰り返すだけだった。

「くだらないだろう。前にも言ったが、痕などドレスで隠せるんだ。大げさに騒ぐ事じゃない。騒ぎはアイビーだけでたくさんだ。お前は長女なのだから、アイビーのように我儘を言うんじゃない」

「我儘…?」

「あぁそうだ。お前は良い子だから、親を困らせるんじゃない。いいな」

そう言って再び書類に没頭する。

この時私の目から、最後の鱗が落ちて行った。

これまで私はアイビーほどではなくても私も父に愛されている、アイビー絡みでなく私に危害を加えられれば、父はきっと私の味方になってくれる…そう信じてた。

けれど違った。

父は欠片も私を愛してなかった。

自分の好きなように扱える…それこそ壊してしまっても咎められない、便利で都合の良い道具だから重宝していただけだったのだ。

「…分かりました、もう結構です」

目のくらむような怒りを感じながら、両手を握りしめてどうにか堪える。

「エリザベス?」

ようやく父が様子がおかしい事に気づいたようだが、もう遅い。


そのまま背を向け、部屋を出る。

その足で急いで医師を呼び手当てをしてもらったが、処置が遅れたせいで、私の背中には大きなやけどの跡が残った。











現時点での公爵家跡継ぎに関する各キャラの考え

エリザベス→リカルドが継ぐと周りに思わせといて、自分が継ぐというどんでん返し狙い

アイビー→リカルドを入り婿(という名の奴隷)にして私が女公爵~♪

公爵及び公爵家の人達→リカルドを養子にして継がそう、でもアイビーに知られると面倒なので隠そう

世間一般の人達→アイビーか、遠縁が継ぐんじゃないかと意見が分かれている

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